義父様から譲られたとのことです。状態としては、大切に使われたと思われる個体で、塗装の劣化や気になるへこみなどは見当たりません。しかし、アイピースのカケとアクセサリーシューを長期に付けたままにした形跡は残っています。リターンミラーが脱落していますが、すでに過去にも貼り替えられているようです。どうして、このように荒い傷を着けるのでしょう?
前板を分離してみると・・。あら~、リターンミラーに残った接着剤を取り去ろうとして、シャッター幕にも傷を着けてしまっています。ドライバーのようなもので突いたようです。
ここで困った。リターンミラーは瞬間接着剤とゴム系接着剤で貼られていましたが、←部分のダストカバーも多量のゴム系接着剤で貼った形跡があります。よって、スクリーンが、瞬間接着剤から発生するガスとゴム系接着剤から発生する有機溶剤ガスで侵されてしまっています。外周のマスクに沿って、スリガラス状が透明にシミとなっています。これは、接眼からの見えに影響があります。
この個体は、過去に有名修理屋さんでオーバーホール済みで、その時に、リターンミラーの貼り替えと、巻上げギヤを作り直しているとのことですが、画像は、本体と巻上げレバー関係は、洗浄後、組み立ててあります。シャッターユニットは、まだ見処置ですが、どちらにも、ギヤを作り直した(分解した)形跡は見当たりませんでした。何かの勘違いでは?
シャッターユニットを分解洗浄してみると・・・ギャなどはオリジナルのままですが、何故か、真鍮の留めビスの頭が変な形状をしています。ピンセットのビスがオリジナルです。
拡大して観察すると、スリ割りの中にキリ粉が入ったままですので、これは、時計旋盤などで掘り込みの追加工をされたものと思われます。道理でドライバーが滑りました。しかし、この追加工の意図はなんでしょう? このカメラに対する私の知識では推測が出来ません。すみません。
O/Hをしたシャッターユニットを本体に組み込んであります。30万代特有の、ちょっと硬いゴリ感のあるユニットです。前板関係も完成。リターンミラーは新品を接着してあります。
で、簡単に完成とは行きませんでした。作動をテストしていると、リターンミラーを正規の位置に保持するためのバネが外れてしまう。画像のアイピース枠前のバネですが、どういうわけか、自然にループの部分が大きくなって、短い先端の方がストッパーから外れてしまうのです。これ、稀に経験する不具合です。皆さんのFTのリターンミラーの端を軽く後ろに突いてみてください。バネが働いて、手前に戻ってくるものは正常ですが、カタカタと規正されていないものはバネが利いていません。良品のバネと交換してあります。アイピース枠もカケがありますので交換です。これで良いかとセルフタイマーをセットすると、今度はレバーがロックされない。ヤレヤレ、最後までいろいろあるね。これは、クラッチの3個のコロがスムーズに動かないため。分解して、洗浄、組み直しです。何かミステリーな個体でしたが、義父様から運良く受け継がれた幸運な個体です。大切にしてもらえるでしょう。