今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

片足棺桶のPEN-FVの巻

2024年10月07日 13時00分00秒 | ブログ

露出を落とさないと写らないので・・カメラ店様から来る個体は現役機以外に、片足が棺桶に入っているような長期放置機もあります。個体数の限られたカメラですから、不動機の掘り起しによって個体数を増やし市場に出回るので、それも意味のあることだと思います。PEN-FVの発売は1967年2月のようですが、この個体#1188XX (1968年1月製)は改良前のユニットが使われている前期型ということでしょうか。長期放置でトップカバーも腐食が始まっています。もちろん全く動きません。

カバーを開けると分解歴は無いようですね。それほど使われずに古くなって放置されたという感じです。

 

リターンミラーユニットのMバネカケの停止位置が変です。

 

 

一度、ユニットを分離して不具合を確認しました。不動の原因はほぼ分かりましたが、頭を黒塗装したM1.4X1.5のネジが出て来ました。私はFTに使われているネジを見ればどこのネジかは分かりますがFTには使われていないネジです。

頭をつや消し塗装されていることから「あっ、あそこだ」付属の38mmのアトカバーのネジだ。やっぱり。撮影中にミラーボックス内に落ちたのでしょう。

 

にかく汚れ放題なのでダイカストから完全に洗浄して組み立てて行きます。この頃はスプールユニットを留めるネジが真鍮製で頭の大きなスリ割ネジのため、分解はネジロックが利いているので無理に緩めると簡単に折れてしまいます。

PEN-FとPEN-FTの初期までの№2プリズムは保管状態が悪いと腐食します。

 

 

メンテナンスをしたリターンミラーユニットを組み込んだ前板関係を本体に組み込みます。

 

全反射ミラーも腐食しています。新品と交換したいところですがプリズムにも腐食がありますので清掃で再使用をします。

 

セルフユニットも変更前のタイプが付いています。巻き上げた時の感触は良くありませんが、変更後のユニットのようにレバーのロックが掛からないという不具合はありません。この個体もレバーが水平ではないので調整をしておきます。

組立は完成。ファインダーのピント調整やストロボ発光テストをします。

 

 

同じ保管状態で付いていた38mmをオーバーホールします。各レンズの曇りと絞り羽根に油が回っています。未分解かと思いましたが、ネジ部に傷があり分解されていますね。この個体#2729XXは変更前の設計です。

無理やり起こして現役復帰させたようなものかな。これで現存数が増えました。

 

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沈胴ボタンがぁ、ローライ35の巻

2024年10月05日 19時00分00秒 | ブログ

カメラ店様からこんなのが来ました。ローライ35ブラックですが、かなり乱暴に使われています。沈胴ボタンの座がトップカバーとのカシメが外れて脱落しています。

 

どうも自然に外れたとは思えませんね。座もヤスリのようなもので削られています。何をしたの?? 材質がアルミですし、すでにカシメしろもありませんから再カシメでは耐ちません。接着で補強をするようですね。

 

ここまででなくとも、沈胴ボタンが外れた修理も来ますが、まずボタン復帰用のバネとワッシャーが付いて来ませんね。恐らくバネが入っていたことも気が付かれていないのでしょう。

ファインダーも汚れていますので清掃をしておきました。ケースの一部が取り去られている景色は過去にも見た記憶がありますが・・

 

このバネがまずついてこない部品です。沈胴ボタンは工場での組立時に強く締められているので普通は緩みませんが、中には緩んで脱落するケースもあります。少しづつ緩んで抜けて来ますので脱落する前に気が付くようにして欲しいのです。

こちらもサービスで露出計の調整をしているとメーターのオレンジ針が絞りダイヤルに連動しません。う~ん、限定修理なんだけどね。画像は正規の位置に戻してありますが、赤点の位置にレバーが外れる場合があります。

このように連動して動きます。

 

 

どうしてこのようになったのかは不明ですが、メーカーサービスであれば、新しい座を再カシメかトップカバーASSYの交換しか受けないでしょうね。

 

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液漏れPEN-FTの巻

2024年10月02日 20時00分00秒 | ブログ

PEN-FT #3682XXと本来は良い頃の個体ですが、いつも問題になるのは電池の液漏れです。事前の点検で露出計が作動しません。

 

電池室には電池が入りっぱなし。取り出しのリード線も腐食をしていて導通がありません。ここだけで済めばラッキーでしたが・・各ユニットも気化ガスによって表面が劣化しています。

 

露出計を点検すると、メーターは辛うじて生きていますがCdsが不良です。の赤リードの芯線も腐食していてCds基板との取り付け部分が激しく腐食をして導通がありません。基板のパターンには半田付けは出来ないので、ここは直せないのです。オーナーさんが交換用の個体を提供頂きましたのでそちらに交換することにします。

まずはすべて分解洗浄をして、新しくリード線を半田付けした電池室を組み立てて行きます。

 

意外にもこの個体は過去に二度プロの手が入っていました。何をしたのでしょう? シャッターユニットは気化ガスの影響で腐食もありますが、性能に影響はないのでオーバーホールをして再使用します。

完成したシャッターユニットを組み込んだところ。作動は巻上げもスムーズで良好です。

 

 

すみません、作業はしておりましたが、ここのところの気温の上下により体調不良となって更新をさぼっておりました。Cdsが不良のため、支給を頂いた殆ど同時期のメーターASSYに交換します。ハーフミラーは新品に交換します。

アイピース枠はシューアダプターが取り付けられていたため部分が割れていますので部品取り機のものと交換します。シューアダプターの他にマグニファイヤーなどアイピース枠にストレスを掛けるものは取り付けないようにお願いします。

で、前板を取り付けて巻上げると、作動は問題ないが巻上げの初期の抵抗感とゴリツキが大きい。観察すると、リターンミラーユニットのチャージカム面が荒れていて、それがフィーリングを悪くしているようです。これも電池の液漏れを放置したことによる金属腐食なのかもしれません。このカム部分はカシメ組立になっていて分解交換することが出来ませんので部品取り機より交換することにしました。以前に設計者の米谷さんとお話しした折、「FTの各ユニットは分解修理が出来ないので、長く使いたい人は交換用のユニットを用意しておくこと」とご指導頂きました。故障は分解修理ではなくユニット交換で対応する設計思想ということです。

電池の液漏れがどれだけ精密機械(特に光学系)にダメージを与えるかと言うことです。購入時は電池の液漏れ履歴が無いか電池室などを注意して点検することが必要ですが、オークションでは中々難しいですね。

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きれいなローライ35Sの巻

2024年09月30日 21時00分00秒 | ブログ

言われてみれば、ローライ35Sはブラックモデルが多く、きれいなクロームモデルが少ないようですね。カメラ店様から届いた個体はへこみや使用感も少なく良い素材に見えます。また、書くことが無いかも知れません。

とは言っても放置は長かったようでファインダーのカビ曇りは進んでいます。ドイツ製のガラス製であればこのようなことは無いわけですが・・

 

巻き戻しクランクの回転が非常に重いです。黒い樹脂も白化していますので分解清掃をして組みます。

 

ローライ35系のメッキはライカなどとは違いそれほど良くありません。国産のメッキと同等でしょう。長く保管された個体は、メッキがこのようにポツポツと腐食します。メッキ面は多孔になっていて、人間の汗の塩分が付着したままで湿度の多い場所に長期間置かれると孔から塩分と湿気が入り込み腐食が発生するのです。出来るだけ腐食を取り除き洗浄します。

ファインダーのレンズを分解して清掃します。

 

 

前から2枚目の対物レンズのカビがすごいですね。

 

 

スプール軸の清掃グリス塗布をして清掃の終わったファインダーを組み込みます。

 

底部のチャージ関係も清掃とグリス塗布をしておきます。

 

 

残念ですが電池蓋の本体側のネジ山が摩耗しています。電池蓋のコインをセットするスリ割はメッキが摩滅して真鍮が露出しています。気の短いオーナーが、ネジ山を合わせずに強引に締め込んでいたのでしょう。雌ネジはダイカスト本体に切られているため交換することが出来ません。みなさんも注意してください。

トップカバーを洗浄しレリーズピンにグリスを塗布して取り付け。一度外して置いたメーター窓を接着します。

 

シャッターユニットを分離したついでに、沈胴のスライドが気になるのでチューブを分離してフェルトの調整をします。

 

清掃後組立て。ローライ35と設計違いのリングを取り付けておきます。

 

 

シャッターとレンズの清掃。ヘリコイドグリスが流化してシャッター羽根、絞り羽根にも油が付着しています。これを洗浄して組みます。

 

ブレードリングとブレードシムの接触によりシムに傷がありますね。リングの加工仕上げが良くないのかも知れません。

 

基本的にはローライ35と同系のシャッターですが、左端にヘリコイドネジ部があります。グリスを交換してあります。

 

メッキのボツボツもきれいになって非常に良好な個体となりました。真鍮地に梨地クロームのカバーは重量感があってブラックモデルとは違う魅力がありますね。

 

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305万台のローライ35ドイツの巻

2024年09月27日 19時59分59秒 | ブログ

その前にローライコードⅤです。「巻上げノブのロックが解除されない」というもの。これは稀にある症状で、毎回ロックするわけではないので原因特定が厄介です。まずは、巻上げノブのワンウェイクラッチ部を洗浄注油をしてみます。

症状が続きます。観察していくと、フィルムカウンターに付いているバネが巻き上げギヤと接触することが分かりました。

 

2枚のギヤが揃っているこの状態では巻上げが出来ません。

 

 

バネの力によって2枚のギヤがズレた状態でロックが解除になります。バネの張力劣化と変形により、巻き上げギヤと接触して2枚のギヤがズレないのが原因です。バネの形状を修正して改善しました。このように微妙な部品の組み合わせにより不具合が発生する機構です。

で、ローライ35#3055XXXとドイツ製としては初期型ではない中期付近の個体でしょうか? 外観はへこみもなく非常にきれいです。では、メンテナンスをして行きます。

 

過去に分解を受けていますがきれいな分解です。レンズなどのチリが出始めていますのでシャッターの分解清掃をしておきます。

 

最初に気になっていたのはドイツ製にしては露出計の針が元気に振れ過ぎるです。点検するとCdsが汎用に交換されていました。ドイツ製ではCdsの寿命を迎えている個体が多いので交換は仕方ありませんが、低輝度側の半固定抵抗の調整が利きません。よくよく観察すると、配線が間違っていました。トリマーに関係なく素通しになるターミナルに配線されています。一度抵抗を分離してから配線をやり直しでトリマーの動きに同調するようになりました。

ドイツ製としては使用頻度が少なくCdsの劣化による交換を受けている個体ということで、他は特に手を入れるところが無いですね。無造作にテーブルに置かれるのでキズが多くなる底部も非常にきれいです。開閉レバーは旧型の樽型で巻き戻しクランクは変更された樹脂製になっている仕様。

ガラス製のファインダーも光枠もくっきりでクリアーに見えます。

 

 

たまにはメンテナンス作業だけで良いコンデションになる個体もあります。ブログの種がないので私は困るのですが・・。

 

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