にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

【映画】『父親たちの星条旗』

2006年11月21日 | MOVIE
『父親たちの星条旗』-Flags of Our Fathers-(2006/米)
監督:クリント・イーストウッド。
出演:ライアン・フィリップ。ジェシー・ブラッドフォード。アダム・ビーチ。バリー・ペッパー。

1945年2月16日。米軍は硫黄島へと上陸した。この島を米軍の手中に納め、日本本土攻撃の足場とするためであった。連合軍は当初、兵力の差からこの硫黄島奪取の作戦は5日間で終了する予定にしていた。ところが日本軍の猛攻は凄まじく、この小さな島で36日間に渡る戦いが繰り広げられた。
その戦いの最中、米軍兵士たちは勝利のシンボルとして摺鉢山に星条旗を掲げる。そしてその時の写真が長引く戦況に疲れたアメリカ国民の士気を高めるために大きく新聞で採り上げられ旗を掲げる兵士たちは忽ち英雄として祭り上げられる。旗を掲げた兵士6人のうち生き残ったジョン・ブラッドリー、レイニー・ギャグノン、アイラ・ヘイズの3人は、戦地から帰還させられ、硫黄島の英雄として国債販売のためのキャンペーンに借り出される。

私はこの作品に関しては全くの予備知識なしで劇場へ行ったので、戦地とアメリカ。そして現在のアメリカというシーンの転換に最初戸惑ってしまった。戦争映画=戦地。というインプットがされているものでね・・・(^^;)。でもこの手法のおかげで余計に胸がキリキリと痛んだ。そしてとてもわかり易かった。決して派手な映画ではないんですよね。まず出演者が地味だ。私なんてライアン・フィリップとバリー・ペッパーしか知らないですもん。でもこの二人とて派手な役者ではないんですよね。そうヒーロー然としていない。印象的な写真のせいで英雄に祭り上げられてしまった彼らは、英雄でなんかはなかった。というより戦場に英雄はいないんですよね。何のために戦うのか?アメリカ兵の場合は愛するものを守るためというのではなかったと思う。多分英雄になるためだったんじゃないのかな?大学出の彼らは戦争には行っていないんだっていうセリフがありましたからね。英雄にならなければならない彼らは自ら戦場に赴き、自らの死を賭けて英雄になる道を切り開く・・・だけど、実際に戦場に立った彼らには目の前に敵がいるからただ戦うだけなんですよね。英雄になろうなんて気持ちを持っている余裕なんかない。それでもなんとか戦いに勝利し、帰還しても彼らの望むものは何も手に入らなかったんじゃないだろうか?この作品で描かれる硫黄島の英雄として祭り上げられた3人の運命がそれを端的に語っているように思う。衛生兵という立場から人よりも多くの死を目の当たりにしてきたジョン・ブラッドリーが唯一、英雄の儚さと嘘に気付いていたんでしょうね。その彼が帰還後戦争での話しは一切語らずただ黙々と葬祭業を営んでいたというのは、もしかしたら助けられず、また葬ることも出来なかった戦友への思いも含んでいたのではないでしょうか?そして祭り上げられた英雄を喜びその立場を一番受け入れていたレイニー・ギャグノンは、英雄になろうとして戦争に行ったという典型かもしれません。だから無鉄砲だからと伝令を任じられたんでしょうね。戦場で英雄になる機会の得られなかった彼が一枚の写真のおかげで英雄になり、その英雄の今後は・・・とさぞかし期待していたのでしょう。でも作られた英雄は賞味期限が切れるとそれまで。そして英雄にはなれてもアメリカ人にはなれなかったアイラ・ヘイズの人生が一番哀しすぎます。戦争に善悪はない。戦争で亡くなった人たち。戦争で心潰された人たち。その加害者は敵国ではなく自分たちが信じて戦った国旗をかざす国なんですよね。

-2006.11.13 TOHOシネマズ泉北-