にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

『英国王のスピーチ』

2011年03月18日 | MOVIE
『英国王のスピーチ』King's speech(2010/英・濠)
監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース。ヘレナ・ボナム=カーター。ジェフリー・ラッシュ。

幼い頃から吃音症で、人前に出ることを嫌っていたジョージ6世だが、厳格な父親である英国王ジョージ5世は式典でのスピーチを容赦なく命じる。夫の吃音をなんとか治そうと夫と共に何人もの言語聴覚士を訪ね治療を試みる妻エリザベスはある日、スピーチ矯正の専門家ライオネル・ローグを訪ねる。そしてエリザベスに連れられローグの元を訪れたジョージ6世は今までにない奇抜な治療法に最初は反発するも、やがてローグを理解し、彼のおかげで戴冠式でのスピーチを成功させる。安心したのもつかの間、彼には国王としての最大の試練、ナチスドイツとの開戦に向けてのスピーチに臨むことになる。

この作品は私の中では全くノーマークだった。でもアカデミー賞受賞ということで早速出かけました。ノーマークであった理由通りに地味な作品だった(笑)。いや、貶してる意味ではなくね。ただ吃音に悩むジョージ5世というだけではなく、吃音になってしまった子供の頃からの出来事、父や兄、そして王室という立場にいるものの苦悩。それが嫌みなくしっかりと描かれ、彼が吃音を克服する手助けをするローグもすばらしい手腕を持つ言語聴覚士ではなく、自らの経験と学習により得たスピーチ矯正法を用い、何とか彼を助けたいという意思のみで地道に彼の吃音を矯正するという流れもいい。ラストのドイツとの開戦を国民に知らせるスピーチのシーン。そのスピーチ終了後のローグの立ち位置もすごくいい。エンドロールでその後の国王とローグとの関係がテロップで出るのですが、それにまた心がジーンと温まる。堅実ないい作品だと思います。

-2011.3.16 TOHOシネマズ鳳-

『ヒアアフター』

2011年03月07日 | MOVIE
『ヒアアフター』HEREAFTER(2010年/米)
監督:クリント・イーストウッド
出演:マット・デイモン。セシル・ド・フランス。フランキー・マクラレン。ジョージ・マクラレン。

恋人と一緒にバカンスを楽しんでいた東南アジアで津波の大災害に巻き込まれ臨死体験をしたことで、人生観が変わってしまったフランス人アンカーウーマンのマリー。シャイでおとなしいマーカスはいつも双子の兄と一緒に行動し、兄を頼りに生活していた。そんな彼が突然の事故で兄を亡くし、どうしても兄と話したいと霊能者を訪ね歩く。かつて霊能者として活躍していたジョージはその能力に疲れ、過去を隠しひっそりと生活していた。それぞれにそれぞれの形で死に向き合った彼らがやがてめぐり会う。

実はもっと魂の揺さぶられる感動作を期待していた。そういう部分では少し肩すかしをくらったような気になる作品ではある。だけど、決して退屈しないし、つまらないわけでもない。ラストのきれいな救いにはフッと優しい気持ちになる。しかし考えればこの作品って死後の世界がどうこうとか、死ってどんなんだろう?ってなお話では全然ないんですよね。寧ろ「死」や「死後」が絡んでいるけど、あまりそんなことは関係のない、ちょっといろいろあって人生に疲れちゃったのよな人たちの再生の物語なような気がする。だから基本的に普通の地味なお話なんじゃないかと・・・。霊能者のジョージって確かにあの能力は普通ではないけど、特殊であるが故にごく普通に自然に自分だけを見てもらえないという苦悩を持つ人・・・つまりあの能力じゃなくってもあり得る人物なんですよね。ま、だからって金儲けにしようと考える兄貴や、料理教室のどう考えてもバカだろ?な女しか寄ってこないんじゃかわいそうすぎますが・・・(^-^;
この二人は本当に最悪ですよねぇ。特に私はあの料理教室の女が登場した時点でもうダメ。遅れてきてけたたましく登場。そしてネッチャーとジョージにひっついて、挙げ句に霊能力があると知ると興味津々で・・・。本人が嫌がってたら普通は一歩引くだろう?アメリカ人なのかねぇ、ああいうとこ。挙げ句に・・・バッカじゃないの?そうなること普通は考えにいれるだろうに・・・。あ・・・なんか違うとこでムキなってますね私(笑)。悪い作品ではないと思います。でももう一回見たいとは私は思わないです。(^-^;

-2011.3.4 MOVIX堺-

『ヤコブへの手紙』

2011年03月01日 | MOVIE
『ヤコブへの手紙』Postia Pappi Jaakobille(2009年/芬蘭)
監督:クラウス・ハロ。
出演:カーリナ・ハザード。ヘイッキ・ノウシアイネン。ユッカ・ケイノネン。

終身刑であったが恩赦となり12年間暮らした刑務所から出てきた中年女性のレイラは、片田舎で一人暮らす老いた盲目の牧師ヤコブの元で働くことになる。彼女の仕事はヤコブの元へ届けられる手紙を読み、その返事を代筆することであった。毎日の手紙を楽しみにしているヤコブと嫌々その相手をするレイラ。毎日手紙を届ける郵便配達人はレイラが終身刑であったことも知っているため、レイラに不信感を抱いていた。そしてある日を境にヤコブの元へ手紙が届かなくなる。手紙の来ない毎日はヤコブを消沈させていく・・・。そんなヤコブの姿を見かねたレイラは郵便配達人に手紙を届けるように頼むが・・・。

あー・・・なんて悲しくて暖かい物語なんだろう。主立った登場人物は三人。場面もほとんどがヤコブの古びた家の中と庭だけ。まるで舞台劇を観ているような感じだった。大袈裟なセリフも動きもなく、あえて何も語らない見事なまでにシンプルな作りの作品だ。でもそのシンプルさが心に滲みる。なぜ終身刑になったのか?レイラとは元々何者だったのか?何一つ語られずに物語は進む。ふてぶてしいレイラの態度とあの巨漢に、とんでもなく悪いことをした奴なのか?最初はそんな先入観を抱いてしまった。しかし手紙に同封されたお金をきっちり直す場面に悪人ではないんだ・・・と思い、その後彼女の瞳の悲しみに気づく。彼女はヤコブにより恩赦を与えられた。しかし彼女にはそんな恩赦は必要なかった。彼女は人生を放棄していた。そしてヤコブの元へ手紙が届かなくなると、今まで人に救いを与えていたはずの彼が届けられる手紙により救われていたことがわかり、今度はヤコブが自分の存在意義のなさを嘆き、人生を放棄しようとする。人は誰しも誰かに必要とされることが生きていくことなのかもしれませんね。ヤコブはレイラに手紙を読むという仕事を与えることでまず自分がレイラを必要としているのだと思って欲しかったのでしょう。ヤコブは届けられる手紙の主が自分を必要としているという思いで毎日を送っていたし、郵便配達人はヤコブに手紙を届けることが自分がしないといけないこと・・・ヤコブにとって郵便配達人が必要なのだという思いで手紙を届けていたのでしょう。
本当にこの作品は心にしみこむ良品です。私はこういう作品大好きです。

-2011.3.1 テアトル梅田-