にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

【映画】『黒幕』

2008年01月26日 | MOVIE
『黒幕』(1966年/松竹)
監督:小林悟。
出演:天知茂。野川由美子。殿山泰司。扇町京子。高宮敬二。

大阪の岩倉製薬と東京の赤玉製薬は、互いに製薬会社のトップを狙うライバル会社。同じように売り出していた強精剤は、岩倉製薬の"王精"がはるかに売上を延ばしていた。赤玉の社長西条は、プロパーと呼ばれる社長直属の販売特殊任務の利根に"王精"の秘密を探るように命令する。プロパーとしての腕は超一流、しかも女性にモテモテでプレイボーイの利根は同僚の美人プロパーである千石に興味を抱き強引に彼女を口説き落とすも、なんと彼女は二重スパイだった。あっさりと敵の術中にはまり捕えられる利根。そして岩倉製薬の罠に落ち倒産の危機に瀕する赤玉製薬は・・・。

新東宝がつぶれ、他映画会社に流れた天知さんの数少ない主演作。しかもピンク映画では知る人ぞ知るという小林悟監督作品で、一般作品とは言えその後のピンク映画での活躍を彷彿とさせるラブシーン。そしてそこに絡むのが天知さん!なんて聞いたらもう見たい度MAXな状態で、何があっても見たい!って作品だったんで、1本の映画のために夜行バスに乗車。我ながらよくやるよなぁ・・・とは思いますが、見ないとすご~く後悔するような気がしたんですよ。でも初恋の人には何年もたってから会わない方がいいというよくある話がチラリとよぎる。期待度高すぎたな(笑)。いや、しかしこのとんでもなさは語るネタとしては最高だ。"王精"の秘密を探るために"王精"開発の研究者の元を訪ねるとそこいたのはその研究者(これがなんと殿山泰司。こういうコテコテ似合いますねぇこの方いかにも精力があって好きものそうで・・・(笑))の娘ほど年の離れた嫁なんだけど、この嫁がいかにもおつむが弱そうで好きもので・・・。ユリの群生地に利根を引き入れモーションをかける。「え?」とたじろぎながらもやる!おまけにお父ちゃんはこうするんだとテクニックまで指図され、嫌な顔をするがやる!最後には弱いとまで言われてしまう利根。最初から最後まで困った顔で、このシーンにはマジで困ってたんじゃなかろうかという気がする。女の子のお尻触るシーンもすごく触りにくそうだったし(笑)。お笑いキャラは好きだったようだけど、エロキャラは苦手だったようですね天知さん。天知茂主演作品として観るには不思議な作品だけど、ピンク映画を代表する小林悟監督のその後に続く一般作品として観るには面白いのかも・・・。
しかし期待度レベルが下がった今もう一度見たいと思ってたりする。癖になる映画か?(笑)。

2008.1.21 ラピュタ阿佐ヶ谷 -

【観劇】『寿初春大歌舞伎』夜の部

2008年01月08日 | STAGE
『寿初春大歌舞伎』夜の部
御所桜堀川夜討 弁慶上使
源義経の正室卿の君が平時忠の娘だということから源頼朝は義経謀反の疑いありとし、その身の潔白を証明したいのなら卿の君の首を差し出すように命じる。その命を帯びてやってきた弁慶は卿の君に仕える侍従太郎夫妻と共に一計を案じ、卿の君と容姿の良く似た腰元しのぶを身替りに差し出すことにするが、しのぶの母おわさは、たった一度契っただけで名も知らぬしのぶの父としのぶを会わせるまで待って欲しいと嘆願する。その男が残した振袖の片袖だけが頼りと語るおわさ。しかしそれを奥で聞いていた弁慶はすかさずしのぶを手にかける。怒るおわさに弁慶は片袖を脱ぐ。するとそこにはおわさのものと同じ振袖があった。弁慶がその父であったのだ。わが娘と知って手にかけた弁慶は慟哭する。そして侍従太郎は偽首と悟られぬようにと自分の首を添えて差し出すようにと切腹するのだった。

これあらすじ読んだだけでウルウルきちゃう話なんですが、舞台で見るとこれまた素晴らしい。映画の場合はネタばれ・・・なんてことであらすじラストまで書かないようにしていたんですが、歌舞伎の場合は、その必要ないですね。こういう話をこういう風に演じているんだという見方が正しいのだと思います。弁慶役は中村橋之助さんで、南座の『勧進帳』で松本幸四郎さんの弁慶を観たばかりの私には、ちょっと重みにかけた印象がありましたが、でも役の巧さはさすがの役者さんですね。弁慶慟哭のシーンはすごかった。
ただしのぶ役の人が出てきた雰囲気からして、あまりうまそうじゃない(爆)。で、やはりあまりうまくない・・・で、プログラム・・・じゃない番附っていうんですか、それを読むと坂東新悟さんって方でなんとまだ高校生だそうで・・・こりゃ失礼しました。


義経千本桜 吉野山
源義経が頼朝と不仲になり西国目指して都を落ち吉野山にいると聞いた静御前は佐藤忠信を連れ吉野山へとやってくる。しかし吉野山で忠信とはぐれた静御前は、鼓を打つと必ず忠信が姿を現すことを思い出した静御前が鼓を打つとどこからともなく忠信が現れる。実はこの忠信は静御前の持つ鼓の皮に用いられた狐の子源九郎狐だった。

これは歌舞伎の舞踊の部類に入るものだそうなんですが、南座で観た『二人椀久』と違いまるまる舞踏じゃなかったんで、すごく楽しめました(笑)。しかも狐だし。そうそうサライという雑誌が歌舞伎特集だということを教えてもらい早速購入。雑誌についていた歌舞伎基本のキという冊子を読んでこの観劇に臨んだのですが、それに花道にあるスッポンというセリから出てくるのは妖術使い、幽霊、妖怪変化、など人間以外の役に使われるとあって、忠信の登場がここからだったのに感激(笑)。そうだぁ狐だもんなぁ。と一人納得。ちょっとでもわかってることがあると面白さは増えますね。花道を帰る忠信がついつい狐さんのポーズになっちゃって、いけないいけないとばかりに人間のポーズに変えるところが笑いを誘って、全般的にわかりやすい面白い演目でした。狐の三津五郎さんかわいかった(笑)。

恋飛脚大和往来 封印切 新井井筒屋の場
この作品は以前観た文楽『冥途の飛脚』の改作つまり先日観た文楽『傾城恋飛脚』を歌舞伎化したものだそうです。
あらすじの基本は以前観た文楽のこちらとほぼよく似たものなんですが、この『恋飛脚・・・』の方では八右衛門はすごく嫌な野郎として描かれてます(笑)。こちらでは忠兵衛が梅川を身請けする前に自分が身請けしようとするが断られ、その腹癒せに忠兵衛が奥にいるのも知らずに罵り、現れた忠兵衛を挑発し公金の封印を切らせてしまうという流れになってます。私としては友人思いの八右衛門の気持ちがなんでわからんねん忠兵衛!という『冥途の飛脚』の方が好きですね。
だけどこれ八右衛門を敵役に仕立てたせいか、妙にコミカルになっている。見やすいけど文楽の『冥途の飛脚』に感動した私としては微妙だな。(^^;
梅川が身請けされて喜ぶ店の女将が「千日言っても・・・」というセリフに「その千日が迷惑」と返すシーンにこの千日の意味が昔刑場だった千日前を指すってことを知ってたので思わずにやり。やはり少しでもわかってることが多い方が楽しいですね。

これで歌舞伎は2回目。文楽より歌舞伎の方がわかりやすく見やすいですね。やはりこれは生身の役者さんが演じるから、細かい所作やら表情やらがわかるからでしょうね。
それに今回は無茶苦茶いい席で観られたんで、全然眠くならなかった(笑)。なんたって役者さんの汗まで見えるって場所ですから。1階左列1番。所謂桟敷席と呼ばれるところに位置する席です。以前文楽の鑑賞でも使った「府民のための芸能・芸術半額鑑賞会」っていうのに当たっての座席だったんですが、まさかこんな席で鑑賞出来るとは・・・またこれで応募して当たったらここなのかな?大阪府民の方々、ホントこれ利用しない手はないですよ。府政だより要チェックです。

-2008.1.7 大阪松竹座 -

【観劇】文楽

2008年01月07日 | STAGE
第1部 本日の演目
七福神宝の入船
新年を迎え船の上で宴を催す七福神たち。そして一人づつ芸を披露することになる。

正月にはもってこいの作品ですね。ご陽気だし縁起いいし。最高に楽しかった。しかもいつもは三味線だけなのに琴まであって、琴と三味線の合奏がいい。しかも大黒天が取り出したのは胡弓。ほ~っと見ていると鼓弓の音が・・・「え?」と思い三味線の方に目をやると・・・なんと鼓弓を弾いてらっしゃるじゃないですか!すごいなぁ。弁財天が弾く琵琶は前回見た三味線の音を琵琶の音に変えるという方法でこちらは三味線だったんですけど、音的にもすごく堪能させられました。
そうそう・・・鯛を釣る恵比寿さんが取り出したのはビアジョッキ(笑)。なんともサービス精神旺盛な演目でした。

祇園祭礼信仰記
<金閣寺の段>
将軍足利義輝を策略で殺した松永大膳は、その母慶寿院を人質として金閣寺に幽閉していた。その慶寿院が天井に雲龍の絵を描くように大膳に要求したことで父の敵を探す雪舟の孫娘雪姫と恋人の直信もまた囚われの身となっていた。雪姫に絵を描くか自分のモノになるか迫る大膳に秘伝の書がなければ描けないと拒絶する雪姫。そこへ信長の元を去り浪人したという此下東吉がやってくる。才長ける東吉を気に行った大膳は彼を自らの知将にすることに決める。

<爪先鼠の段>
雪姫と二人になった大膳はまたしても絵を描くように迫る。そして雪舟の手本さえあればという雪姫に対し、持っていた剣を滝にかざすと滝水に龍の姿が現れる。この剣こそ父が殺された時に奪われた「倶利迦羅丸」で大膳こそ父の敵とわかる。父の敵と斬りかかる雪姫だったがあっさりと捕らえられ、五つの鐘を合図に直信を殺害すると大膳に宣言される。桜の木に括りつけられた雪姫は、祖父雪舟が幼き頃涙で描いた鼠が縄を食い切ったという話を思い出し足元の桜の花を集め爪先で鼠を描くと、その鼠が動きだし縄を食い切る。そして逃げようとしたところを見つかり危ういところを東吉に助けられる。彼は大膳を欺き慶寿院を助けに来ていたのだった。

やはり、こういう時代ものは苦手なようだ・・・眠かった(笑)。どうも淡々と物語が進むところってダメですねぇ。
それでもラストの金閣寺の最上階へ向かい慶寿院を助けるくだりは、面白かった。あれだけセット(っていうのか?)が動くのをはじめて見た。うまく出来てますねぇ。

傾城恋飛脚
<新口村の段>
昨年見たhttp://blog.goo.ne.jp/tome-pko/e/503bfe56ca9ccc7385baedab42266425
『冥土の飛脚』のその後の話で、故郷の新口村まで逃げ延びた二人が忠兵衛の父孫右衛門と出会うお話です。

同じ淡々と進む物語でもこういう世話物の方が眠くならないってどういうことなんでしょうかね?(笑)助けたいのに助けられない父。今生の別れとなることがわかっていても長くは共にいられない父子。ラストの少しでも遠くへ逃げてくれと見送る孫右衛門の哀切がいいです。
人形の使いがどうこうなんて未だに全然わからないのですが、何度が行くうちにひそかに桐竹勘十郎さんのファンになってしまった私(笑)。前の「祇園祭礼信仰記」で東吉を使ってらっしゃったのですが、パンフレットによるとこの「傾城恋飛脚」にはお名前なかったんですよね。ところが・・・この孫右衛門がなぜだか桐竹勘十郎さんでした。それだけでうれしかったりする(笑)。単純なんだ。

-2008.1.6 国立文楽劇場 -

【映画】『スマイル 聖夜の奇跡』

2008年01月06日 | MOVIE
『スマイル 聖夜の奇跡』(2007年/東宝)
監督:陣内孝則。
出演:森山未來。加藤ローサ。谷啓。モロ師岡。

膝を壊しタップダンサーの夢を諦めた修平は、恋人静華と結婚するために彼女のいる北海道へとやってきた。教師をするから大丈夫だと静華の父に結婚の許しをもらいにいった彼だったが、娘との結婚を渋る父親が出した条件は、なんとこれまで一度も勝ったことがない小学生のアイスホッケーチーム「スマイラーズ」を優勝させることだった。アイスホッケーのルールすら知らない修平に勝機はあるのか?

おバカなノリの笑い。作りすぎだろうっていうくらいにマンガチックにしてるんだけど、これって案外シリアス部分の照れ隠しのような気がしないでもない。大筋のシリアス部分はもうホントにベタなんだ。一体過去に何度このパターンが使われただろうっていうパターンなんだけど、許しちゃうんだなぁ。陣内監督うまいよ。娯楽作品とはいかなるものか?っていうのをよ~くわかってらっしゃるって気がする。で、この作品でのスパイスはアイスホッケーシーン。半端じゃない。しかもこの作品では演技の出来る小学生にアイスホッケーを覚えさすのか?アイスホッケーの出来る子に演技をさせるのか?の選択で後者を選んだそうなんですが、すごいわこの子ら。この映画を観終わったあとで彼らが素人だって知ったんですけど、全然そんな風には見えない!スポーツやってるから勘がいいのかな。一応メンバーの中では主役級の男の子昌也役の子は大人になってからの昌也役の坂口憲二さん似の男前。なのにこの時点は素人だっていうんだからねぇ・・・でもやっぱりこのあと本格的俳優デビューだそうです。
それとやはり陣内監督は音楽もやってるだけありますね。タップの音とスケートの音。BGMと融合させて見事なリズムを奏でてる。スケートリンク一体の大合唱。名シーンですね。やっぱりこういう清々しい映画は好きだな。

-2008.1.5 TOHOシネマズ泉北 -

【映画】『その名にちなんで』

2008年01月05日 | MOVIE
『その名にちなんで』The Namesake(2006年/米)
監督:ミーラー・ナーイル。
出演:カル・ペン。タブー。イルファン・カーン。ジャシンダ・バレット。

アメリカで暮らすアショケは故郷インドで美しいアシマと見合い結婚をして、夫婦二人ニューヨークで暮らすようになる。やがて誕生した息子にアショケは昔列車事故に遭い九死に一生を得た時手にしていた一冊の本の作家ゴーゴリの名を付ける。しかし成長したゴーゴリはその名が変人と言われた作家であると学校で教えられ級友たちにもからかわれ、次第にその名前を疎ましく思うようになる。そしてアメリカで生まれアメリカで育った彼はインド人としての生活さえも疎ましく思うようになる。離れていく息子を悲しく思うアショケとアシマ。

何とも淡々とした物語です。ちょっぴり眠くなったことは認めよう(笑)。
それにしても父親が死んで悲しんでいるのに旅行は予定通り行きましょうとか、私のこと考えてよみたいなこと言うアメリカ人の彼女ってどうよ?(笑)。しかも初対面の両親にアショケにアシムってフランクに呼ぶのって・・・ねぇ。アメリカ人ってこうなの?日本人の私には考えられないし、これって思いっきり引いちゃったよ。ま、ゴーゴリのインド人としての意識を考えさせるための描写でわかりやすくしてるだけで、アメリカ人に対する反感はないんだろうけどね。あ、でもちょっとはあるかな?(笑)。
この作品で私は自分の日本人としての血をすごく意識させられた。生活習慣は紛れもなく西洋化されて、絶対にそっちの方が便利で今さら昔の日本のような暮らしをしろって言われたら無理だって言いきれるんだけど、精神的なものは、やはりどうあがいても日本人なんだなと思う。「その名にちなんで」これは名前の意味ではなく、その名を与えてくれた人の思いと共に自らはある。っていう意味なんじゃないかな。民族に固執すると話がおかしくなるんだけど、その民族であるという誇りはそれぞれに持ってしかるべきなんじゃないかなって思う。インド人の映画を観て日本人としての自我が芽生えた私(笑)。

-2008.1.4 テアトル梅田-