にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

【観劇】『東海道四谷怪談』

2008年05月30日 | STAGE
通し狂言『東海道四谷怪談』四幕十場

あらすじは・・・と言うまでもないくらい有名な作品なんですが、この歌舞伎版はとにかく民谷伊右衛門は悪い奴です。で、しっかり『忠臣蔵』設定も入ってます。伊右衛門は塩冶浪人。伊右衛門に一目ぼれしてしまうお梅の祖父は高家用人の伊藤喜兵衛。つまり伊右衛門は赤穂浪士で、お梅に気に入られたのをいいことに吉良家に寝返るという武士としてはとんでもない悪党です。とは言えお岩を疎ましく思いながらもさすがに捨てることは出来ずにいる伊右衛門に実はさっき届けた薬は毒薬なんです。なんて平気で言う伊藤家の人もどうかと思うのですが・・・(^^;。
いい役しかみたことのない吉衛門さん演じる悪党伊右衛門。なかなかいいですねぇ。砂村陰亡堀の場で、一人生き残った伊藤喜兵衛の娘お弓を堀の中へ蹴り落とす場面はゾクッときます。かっこいい・・・悪党なのに(笑)。そしてこの場面で伊右衛門の「首が飛んでも動いて見せるわ」のセリフが出る。え?これって伊右衛門のセリフだったのかぁ。と『阿修羅城の瞳』を思いだす私。あ・・・そっか鶴屋南北も『東海道四谷怪談』も出てきてたな。これで納得。いやぁ実は『阿修羅城の瞳』でなぜ突然あのセリフが出てくるのかわかんなかったんですよねぇ。問題が一つ解決してよかったよかった(笑)。
しかし、この『東海道四谷怪談』という話は、何度も映画化されたりドラマ化されたりしていますが、切り口によりいろんな形に変わる面白い話ですね。裏切られ殺されるお岩さんの「恨」をメインにすれば、とにかく怖い幽霊モノになるだろうし、悪の道をひた走る伊右衛門をメインに描けばピカレスクロマンに。中川監督版のようにラブストーリーになったりもするんですから深い物語です。今回鶴屋南北の基本的な歌舞伎版を通しで観ることが出来て、その深さがわかりました。
そうそう、ラスト、舞台に出ている出演者がお辞儀をして幕。あれ?こんなのはじめてだ?なんで?と思ってたんですが、なんでも座頭が主役で最後は殺されて終わりっていう芝居の場合は殺される手前で終わるそうなんです。ほぉ~、これでまた一つかしこくなった(笑)。歌舞伎ってホント面白いですね。

-2008.5.25 新橋演舞場-

【映画】『光州5・18』

2008年05月23日 | MOVIE
『光州5・18』(2007年/韓国)
監督:キム・ジフン。
出演:キム・サンギョン。アン・ソンギ。イ・ヨウォン。イ・ジュンギ。

タクシー運転手のミヌは、早くに両親を亡くし高校生の弟ジヌと暮らしていた。そのジヌが通う教会に同じく通っている看護師のシネにミヌは片思いをしていた。どうやったら思いを告げられるか?同僚に相談するミヌ。5月の穏やかな気候の中、ごくごく普通に優しく過ごしていた彼らの生活がある日突然一変する。5月18日、大学生のデモを鎮圧するために投入されていた空挺特別部隊が、容赦なく学生たちに襲いかかったのだ。軍のむごい仕打ちに激昂する人々。デモは膨れ上がっていく。そしてついに武器を持たない市民たちに軍の銃が火を吹く。

この映画の流れに実際に何事もなく日々を送っていた人々とこの作品を今見ている私がリンクするような気がした。私自身この光州事件のことは全く知らなかったものだから、緑の木々に囲まれた陽光うららかなのどかな風景から、平凡に暮らす人々の日常に、なんともおちゃらけたコメディシーンに、笑わされなごまされながらスクリーンをみつめていた。ところが映画館のシーンから、とんでもないところに自分自身も放り出され「なんでそんなことになるんだ!?」思わず私は拳を握りしめていた。そして涙があふれて仕方なかった。救いようのないラスト。この事件のことを何一つ知らなかった私は、救いようのないラストが胸に痛すぎて、家に帰って早速のこの事件のことを調べてみた。本当はパンフレットが欲しかったんですが、なんと売り切れだったんですよね。この当時劇中にも出てきますが、マスコミ統制され、軍事政権により「暴徒による暴動」とされ事件は民主化される1988年まで封印されていたようなもので、1990年にやっと被害者への補償法が成立し「暴徒による暴動」ではなく、全国的な民主化運動の流れの一環と規定されたそうです。ラストのみんなが集まる空想の結婚式の模様で、ただひとり笑顔もなく苦しげな表情のシネは、この事件で生き残った人々の心を物語っているのかもしれない。愛する人を逝かせてしまった悔恨。そして暴徒の汚名をそそぐことも出来なかった苦汁の日々。生き残った人々の心の傷は並大抵のものではなかっただろう。「私たちのことを忘れないで下さい」自分たちの正義を信じて逝った人々とその後のこの事件と共に生きてきた人々。忘れてはいけないでしょうね。
韓国映画を観るのは2007年の1月に『王の男』を観て以来なんですよね。久々に観た韓国映画はすごかった。韓流だとチヤホヤされてなんだかなぁっていう作品も入ってきてますが、こういう作品があるから韓国映画って侮れないんですよね。それに私にとってアン・ソンギ出演映画はハズレなしです(笑)。やっぱりアン様は素晴らしい。って結局ここに落ち着く私の感想ってやっぱりゆるいな(笑)。

あ・・・でもちょっと締めよう。この事件のことを調べててラストにかかる曲についてわかったので、書いておきます。
『イムの行進曲』というタイトルで、なんでもこの事件後に作られ歌われだしたものだそうで、この歌詞がまた心にズンときます。
曲はコチラ

愛も 名誉も 名前も 残さず
一生涯 がんばろうという 熱い 誓い
同志は (死んで)いなくなり 旗だけが 翻る
新しい日が 来る時まで 動揺するな
歳月は 流れても 山河は 知っている
目覚めて 叫ぶ 熱い 叫び
(私は)先に 行くから 生きている者は 後からついてこい
(私は)先に 行くから 生きている者は 後からついてこい

-2008.5.19 シネマート心斎橋 -

【映画】『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』

2008年05月15日 | MOVIE
『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008年/東宝)
監督:樋口真嗣
出演:松本潤。長澤まさみ。宮川大輔 。阿部寛。

戦国時代、隣国山名に攻め込まれ陥落した秋月城下では、山名軍が消えた埋蔵金と姫の行方を追って躍起になっていた。そんな山名軍の使役にこき使われていた金堀り師の武蔵ときこりの新八は山から発生したガスによる事故の騒ぎに乗じ逃走し、偶然滝のほとりで薪に埋め込まれた金塊を発見する。喜ぶ二人だが、突然現れた真壁六郎太と名乗る野武士に捕らえられ、秋月の同盟国である早川までその金塊を運ぶ手伝いをさせれれることになる。六郎太と口が利けなくなったという六郎太の弟と供に山名を抜けて早川を目指す武蔵と新八。

私は最初、この作品がリメイクされると聞いたとき「勘弁してよ」と思ったクチである。ところがこの作品の脚色が中島かずきさんで新感線メンバーが出てると聞いてあっさり劇場に足を運ぶ。結構単純な人間です。
で、感想ですが、やはり元作品に思い入れのある人にはきつい作品となってるんじゃないですかねぇ。実は私、元作品はあまり面白いと感じなかったんですよ。なんか地味な感じがして・・・。だから結構派手に今風に作られている本作はそれなりに楽しめました。でも大人の作品ではないな。って思います。姫と武蔵のラブストーリーが単純で甘いし、武蔵と新八のコンビに魅力がない。あっさりすぎるんでしょうね。「あぁ、面白かった。チャンチャン」って作品かも。(^^;
あ・・・あとすご~く気になったのが「裏切り御免!」。これ元作品の姫と六郎太を助ける敵方の六郎太の友人が言うセリフで、結構かっこいいセリフだから、これでラストを閉めたかったんでしょうが無理してねじ込んだ感があって、どうも私にはいただけなかった。金堀り師の武蔵がいきなり武士言葉のセリフを吐くのはおかしいってことで、まず姫だとばれたときに雪姫に武蔵に向って言わせてるんだろうけどここに無理がある。裏切りじゃないし・・・(^^; 武蔵は武士じゃないけど、こんな辻褄合わせしないであっさり武蔵にだけ言わせてもよかったんじゃないかな?って気がします。

さてどこに出てるのかな?と期待して探していた橋本じゅんさんは結局みつけられなかった。粟根まことさんは出番は長く気付かないわけがないっていう出演で、しかも小役人っぷりが最高でした。似合うなぁ・・・ってかうまいなぁ。『ローレライ』でもよかったし、私はこの人映像での演技の方が好きかも。『ローレライ』と言えばピエール瀧さんも出てらっしゃったんですが、『ローレライ』ではあんなにいい役だったのに、こちらではえらいあっさりした出演だったのでかえってびっくりしましたよ(笑)。古田新太さんに生瀬勝久さんもサクっと出たよって感じで(笑)。賑わしのような出演メンバーで楽しむという方法もある作品でしたね。

-2008.5.12 アポロシネマ -

【観劇】ファントマ『イエス斬り捨て』

2008年05月13日 | STAGE
『イエス斬り捨て』ファントマ
作・演出:伊藤えん魔。
出演:保村大和。久保田浩。猫ひろし。牧野エミ。他。

動乱の幕末。
大老井伊直助の暗殺から幕を開き、岡田以蔵を中心に幕末に生き、死んでいった者たちの物語。そして主人公である以蔵は親友竜馬は一冊の聖書と十字架を送られていた。竜馬の誘いと聖書の言葉に一度は刀を封印する以蔵だが・・・。

「中之島演劇祭2008」のチラシにこの作品をみつけ、「ファントマ」の名前はなんとなく聞いたことがあったし、幕末モノだし、ちょうど2月に劇団☆新感線の『IZO』を観たとこだし、なんか面白そうだ。と行ってきました。
いきなり桜田門外の変が、大老の首をボールにみたててのアメリカンフットボール風になってたのには驚いた。「え?そういう劇団だったのか!?」
おもしろ、おかしくって楽しかったですよ。いやぁ、実はこのチケット買ってから、どんなのかなと情報を入れたくって2ちゃんねるとか読んでたんですが、なんか主要メンバーがゴソッと抜けちゃたとか、客演やたら呼んでやってるけどまとまりよくないとか、悪いコメントばかり・・・(^^; 気持ちはかなりへこんでたんですよね。
でも、以前は知らないから質が落ちたのか、どうかわかんないし、それなりに面白かったですよ。歌はみんなすごくうまいしかっこいいし。ただ脚本ががさつだと言えば言えなくないかも・・・。メインの物語の筋が通りきっていないですけどね。聖書と十字架が生きてない(爆)。それと猫ひろしさんのシーンくどい!しつこい!猫ひろしだから猫ひろしじゃなきゃいけないのかもしれないけど・・・う~ん。ベタすぎですな。

冷静に演劇通な方々がこれを観てどうかってのはあるかもしれないです。私自身も2月に明治座の公演みたいだと言われたガッチガチの劇団☆新感線の『IZO』を観てるから、以蔵や武市の描き方のゆるさは気にならないではないです。でも・・・「おもしろきゃいいやん」です。
しかし、まさか新撰組の芹沢鴨が逃げ切って海を渡ってジョン万次郎として帰ってくるとは・・・義経が大陸に渡って成吉思汗ってのよりすごい(笑)。
四の五の言っちゃあキリがない!とにかく!楽しんだ!面白かった!それでいいやん!です。

-2008.5.12 新・ABCホール -