にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

『イリュージョニスト』

2011年04月24日 | MOVIE
『イリュージョニスト』L'ILLUSIONNISTE(2010年/英・仏)
監督:シルヴァン・ショメ。
オリジナル脚本:ジャック・タチ。
声の出演:ジャン=クロード・ドンダ。エルダ・ランキン。

1959年。相棒?のウサギと共に劇場を渡り歩く老手品師。そんな彼はある日、スコットランドの島に招かれ、そこで一人の少女と出会う。田舎町の何も知らない無垢な少女は彼を魔術師と思い、生き別れた娘の面影を少女に求める老手品師は、つい彼女の喜ぶものを種に仕込んで彼女の目の前へ出してやる。島を離れる彼についてくる少女。奇妙な二人の生活が始まる。老手品師を魔術師だと信じて疑わない少女は、屈託なく欲しいものをねだる。言葉が通じず、彼女を傷つけることを恐れる老手品師は本当のことが告げられず、魔術師であり続けるが・・・。

なんてぇ女だこいつ?バカにもほどがある・・・。と、幼い頃からサンタクロースなんていないとあっさり夢をそぎ取られ、世俗にまみれて生きてきた私には、この少女の行動がムカついていた。(^-^; そこんとこ流さないとこの作品は無理なんですけどね。とにかくそこんとこをスルーして・・・。
するとこの作品にはほとんど台詞がない分、いろんな方向から読み取ること感じることがあることがわかる。基本は慈しみかわいがり育てた娘が成長し、やがては別の男に委ねるしかない父親の話だろう。でも私にはそこよりも、消えゆくものの哀しみと夢を見られなくなった現代の哀しみがじーんと心に滲みた。道化師、腹話術士、魔術師・・・。夢と笑いを売り物のにしていた彼らを必要としなくなった世界は、あまりにも殺伐としている。少女の喜ぶ顔がみたくて魔術師でいようとした老手品師だが、彼女へのプレゼントを勝手に開けて持って行ってしまう彼女の行動に疲れを見せる。もう少女は喜ばない。夢ではなくなる現実。少女の元を去る老魔術師の姿よりもウサギと分かれる彼の姿の方が私には切なかった。ラストの電車の中、鉛筆を落とした少女に自分の持っている長い鉛筆を種に仕掛け、手品を見せるか・・・と思わせながら彼はそのまま少女が落とした短い方の鉛筆を渡す。もう彼は夢を与えるのをやめたんですよね。

-2011.4.23 シネリーブル梅田-

『ザ・ファイター』

2011年04月13日 | MOVIE
『ザ・ファイター』 The Fighter(2010年/米)
監督:デヴィッド・O・ラッセル。
出演:マーク・ウォールバーグ。クリスチャン・ベール。エイミー・アダムス。

マサチューセッツ州の労働者の街ローウェル。プロボクサーとして母がマネージメントし、かつては実力派ボクサーとして活躍した兄ディッキーがトレーナーにつくミッキー・ウォードは、実力はあるものの母と兄の言いなりでボクサーとしての結果が全く出せないでいた。そんなある日、日頃から麻薬に溺れる兄ディッキーが事件を起こし監獄へ。ミッキーを不憫に思っていた父親の計らいで家族と決別し、新たなボクサー人生を歩み出す。好調に勝利を重ねていくミッキー。やがて世界戦に挑むことになったとき兄のディッキーが出所してくる。
実在する伝説のプロボクサー、ミッキー・ウォードとその異父兄、ディッキー・エクランドの物語です。

実はもっと「うぉお~」と感動する映画だと思ってたんですよ。いや、確かに感動する映画なんだけど、どうも私にはイマイチ。結構評判のいい作品だけに、なんで私だけこんなあっさり見終わっちゃったのかなぁ・・・という感じなんですよね。
これはたぶんねぇ、女たちがうるさすぎるからなんだと思う。で、どうも私にはこの母ちゃんに小姑たちが「家族よ!」なんて言葉を吐きながらミッキーを利用して自分たちが食ってるという図式にしか見えなかったんですよね。あの思いっきり個性のどぎつい母ちゃんはまあいいんだ。でもホントに何の役にもたってない姉ちゃんたちの姿が映る度に私はげんなりしていっちゃった。ミッキーの世界戦のときチャンピオンに打たれ続けフラフラになっているミッキーがコーナーに戻ったときになぜ座らせないの?と怒る彼女にその理由を教える母親が映ったときに、この母親はちゃんとわかってて本当に家族としてミッキーを支えているんだとやっと納得出来たんですが、ここまできちゃうと遅すぎなんですよね。(^-^; ミッキーの前進。ディッキーの再起(ボクサーとしてじゃなく人間としてね)の物語としては面白い。うるさくうざい女たちを無視すれば、いい作品だったと言えるんですが・・・。

-2011.4.4 MOVIX八尾-

『トゥルー・グリット』

2011年04月05日 | MOVIE
『トゥルー・グリット』True Grit(2010年/米)
監督:ジョエル・コーエン。イーサン・コーエン。
出演:ジェフ・ブリッジス。マット・デイモン。ヘイリー・スタインフェルド。

街へ出かけた父親が雇い人のトム・チェイニーに殺されたとの連絡を受け父親の遺体を引き取りに街へやってきた14歳の少女マティ。彼女は遺体を引き取るだけではなく、自らが父の敵を討つことを誓い、酒飲みだがベテランの隻眼の保安官コグバーンにチェイニー追跡を依頼する。やがて同じくチェイニーを追跡するテキサスレンジャーのラビーフも加わり14歳の少女にとっては過酷な旅が始まる。

まっすぐで純粋な瞳をそらすことなく大人たちを見つめるマティがいい。狡猾に大人たちを言いくるめる姿には生意気なイメージもあるけれど、とにかく必死にまっすぐだ。そのまっすぐさが気持ちいい。そしてその純粋無垢なまっすぐさに比例するかのようにグダグダでいい加減な酔っ払いコグバーン。マティと同じ純粋なまっすぐさを持っていたであろうが大人になり加わる狡さと弱さを持つラビーフ。積み重ねた人生が二人の男の外観をかたどってはいるけれど、根底はマティと同じなんだなと感じさせるいい男たちだ。14歳にしてこんな本物のいい男たちと短い期間であっても目的を同じくして、旅をしてしまった少女には、普通の暮らしは無理なんじゃないかな・・・なんて思っていたら・・・。そうですよねぇ。こんないい男をみちゃったらそうそう男に惚れるなんてことはないですよねぇ(笑)。その後の25年のマティの人生。決して緩やかで幸せなものではなかったはずです。25年後のマティの瞳に残った純粋なまっすぐさに感じたのは、うれしさではなく、ほろ苦さだったのは、人は良くも悪くもある程度の薄汚れたものを纏ってこそ大人なのだということなのかもしれません。

-2011.4.1 TOHOシネマズ泉北-