にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

【観劇】文楽

2007年11月23日 | STAGE
本日の演目
第2部
1.源平布引滝
・音羽山の段
平清盛により、京都鳥羽の離宮に押し込められた後白河法皇を奪回し挙兵しようと目論む清和源氏の嫡流である多田蔵人行綱は、音羽山で盗賊に襲われた松波検校という琵琶法師を助ける。この松波検校も元は源氏の侍。法皇を奪回し平家を討つために装束を借りたいという行綱の言葉に、盗賊により深手を負った松波検校は、最後に自らが役に立つことを喜び息を引き取る。

・松波琵琶の段
松波検校に変装し離宮に入りこんだ行綱はそこで、かねてより行綱を手引きするために離宮に入り込んでいた娘小桜と出会う。しかし二人が話しているところを目にした仕丁の平次により小桜が拷問されることになる。拷問される娘の姿を目の前にして、平次から代わりも拷問するか、琵琶を弾くかと迫られた行綱は乱れる心を抑え琵琶を弾くが、最後には耐えきれず駆け寄って娘を抱きしめてしまう。

・紅葉山の段
離宮から逃げ出した行綱は、以前布引滝で、見逃してもらった平重盛と再会する。そしてここでもまた重盛は、「雌雄を決するのは後に戦場で」とまたしても行綱を見逃すのだった。

メインは「松波琵琶の段」
ここで、琵琶を弾くように言われた行綱が琵琶を弾くシーンがすごい。なんと左手の指が動くんだ!もちろんそれようの左手に交換しているんですけど、これは感動ですよ。文楽人形ってあそこまで細かい工夫がされてるんだ。そしてこの段は、三味線の見せどころの多い段らしいんですが、その解説通りに素晴らしかった。琵琶を弾くシーンでは三味線の音が琵琶の音に聞こえるように特殊な駒を付けて弾いているそうです。見ているとどうやらギターでいうブリッジの位置に何かかませていたようでした。

そして休憩をはさみ、私が絶対に一度は観たかった『曽根崎心中』
2.曽根崎心中
・生玉社前の段
恋仲である天満屋の遊女お初と平野屋の手代徳兵衛は生玉社で偶然に出会い、やつれきった徳兵衛が心中をお初に語る。叔父でもある平野屋の主人が妻の姪を2貫目の金を持参金に徳兵衛と結婚させるためにその金を徳兵衛の継母に渡してしまったことで、主人に不平を言うと4月7日までに金を返し、大阪の町を出て行けと言う。なんとか郷里に帰り継母から金を取り返したが、友人である油屋九平次が窮状を訴えられその金を貸したが返してもらえずにいるという。そこへ伊勢参りから帰ってきた九平次が通りかかり、徳兵衛は金の返済を迫るが、証文のすべてを徳兵衛に書かせ印だけをついた九平次は、印はその証文に書かれた日付以前に失くしたもので、その印がつかれているということは、徳兵衛が証文を偽造したのだと衆人の前で徳兵衛を痛めつける。

・天満屋の段
天満屋へお初を訪ねた徳兵衛は、死ぬ覚悟を伝える。お初は徳兵衛を人目を忍び部屋に引きいれ縁の下に忍ばせる。そこへ九平次がやってきて本人が聞いているとも知らずに徳兵衛の悪口を言いだす。縁の下で悔しさに耐える徳兵衛を足で制したお初は、徳兵衛の身の潔白を訴え、徳兵衛は死して身を立て、自分も一緒に死ぬと言う。そして店の者たちが寝静まったあと二人は手を取り合い店を後にする。

・天神森の段
二人手を取り天神森へとやってきたお初と徳兵衛は、帯で体をくくり合わせ最期の時を迎える。

「九平次!てめぇって奴はなんてぇ奴なんだぁ!」って・・・ハイ。私この物語全然知りませんでした(笑)。これだけ有名なこの物語あらすじすら知らないってのは珍しいなと我ながら思います。だからこそ観たかったんですけどね。
解説によりますと、なんでも歌舞伎だと極悪非道の九平次が何のお咎めもなしってのは、やはり許せないだろうということで、近松の原作にはない、九平次の家から失くしたと言っていた印がみつかり九平次の悪事がばれるというのがつけ足されているそうです。「死ななくてもいいんだよ!」という言葉はすでに遅く・・・というこちらの方が憐れみは増しますよね。
物語としては、やはり『源平布引滝』の時代物よりも『曽根崎心中』のような世話物の方が面白いですね。

今回は半額鑑賞券ではなく、普通に2等席を購入。
そしてオペラグラス持参で出かけたのですが、案外それで十分かも(笑)。
半額鑑賞券当たらなければ、今後2等席でオペラグラス使用で観るようにして、少しでも多く足を運びたいな・・・なんて思います。

-2007.11.19 国立文楽劇場-

【観劇】ラックシステム其の十参『お見合』

2007年11月18日 | STAGE
ラックシステム其の十参『お見合』
作・演出:わかぎゑふ。
出演:生田朗子。朝深大介。野田晋市。千田訓子。他。

料亭「前田」は創業百年を向える老舗で、創業以来お見合い専用の部屋として使われている「蕾の間」は毎日のようにお見合いカップルを迎えていた。ところがやっと女将業が板に付いてきた長女の花菜が妊娠。そこで遠縁の朝子が女将代行としてやってくる。それで丸く納まるはずが、主人である啓太郎には、何かそれ以外に考えがあるようだった。何組かのお見合いカップルに料亭「前田」の主家族に、従業員。「前田」創業百周年のイベントを目の前に、繰り広げられる人間模様。

パンフレットを読むとこの作品の前作があるようだ。だけど前作を観てなくっても十分に納得の出来る面白い作品でした。ラックシステムのわかぎゑふ作・演出作品っていうのは、これが初体験だったんですが、いやぁ、やはり土曜日のお昼、学校から帰ってきて松竹新喜劇を見ながらお昼ごはんを食べていた私には、見事にツボでした(笑)。おまけに年代的にもぴったんこなノリですわ。
そしてラスト近くに織り込まれた泣きの部分で、私は「おぉ!これは松竹新喜劇じゃないか!?」と確信いたしました。本もいいし、役者もいい。おまけに完全な大阪弁芝居。大阪弁じゃない芝居もあるのかな?あったとしてももちろんOK。今後チマチマとお出かけさせていただきます。しかもパンフレットを買うと終演後日替わりで選ばれるサイン担当の役者さんのサインがもらえるというなんともうれしい企画。劇場も劇団もなんともアットホームは雰囲気で、「また来るよ!」と言わずにはいられない劇団です。
この劇場もいいんですよ。世界館
来年3月の公演は『罪と、罪なき罪』。なんと劇団☆新感線の粟根まことさんが出るそうで、これは絶対に行きますよ。劇団☆新感線の中では粟根さん好きなんだ。

-2007.11.16 世界館-

【映画】『ヒート アイランド』

2007年11月09日 | MOVIE
『ヒート アイランド』(2007年/ )
監督:片山修。
出演:城田優。木村了。北川景子。伊原剛志。細川茂樹。

渋谷を仕切る不良グループ「ギルティ」は、やばいことには手を出さないをモットーに毎週ファイト・パーティーを開催し、潤沢な資金を手にしていた。ところがある日、メンバーの一人が女の子に絡んでいるところを一人のおやじに注意されたことの腹いせに、そのおやじを襲い持っていたボストンバッグを奪ってしまう。ところがそのボストンバッグには訳ありそうな3千万の現金が入っていた。リーダーのアキはなんとかその金を元の持ち主に返し、事を収めようとするが、時すでに遅く、その金を廻り、関西やくざに強盗団。そして関西やくざと対立する地元やくざ。南米マフィアまでが加わる争奪戦に巻き込まれることになる。

普通じゃ、まずこの作品は観に行ってないはず。だけど、関西やくざの役で近藤芳正さんが出演と聞いちゃあ、観に行かない訳がない。近藤さんって案外厭味ったらしい役だとか、悪い役似合うんですよねぇ。この作品での関西やくざも似合っておられましたよ。ただちょっと悪ノリ気味のような気がしなくはない・・・っていうか地元やくざ役の豊原功輔さんが、ノリノリだからそうなってしまうのかも(笑)。なんかこの作品、主役メンバーの若手のこれからがんばりましょうチームとベテランの強盗団役の伊原、細川、松尾の渋くかっこよくおちゃらけに走らないようにと絞めときましょうチーム。そしておふざけお笑い担当チームっぽい演技に走っている豊原、近藤のお二方の三すくみという不思議な構成の作品です(笑)。
原作がこういう作りなのかは知らないんですが、これ金の入ったボストンバッグが絡んであっち行ってこっち行って、あっちからこう来て・・・とまずまずに面白い流れの作品なのに、まず用意ドンがいけない。お姉ちゃんに絡んでやっつけられた腹いせで奪ったボストンバッグってのがねぇ。巻き込まれ型の物語展開に無理があるような気がする。しかも南米マフィアっていらないんじゃないのかなぁ。で、大きな傷が人死にが多すぎる。こういう話は人死なさないでもっていくのが基本なんじゃないのかなぁ・・・なんて気がする。ま、近藤さんのおちゃめな関西人役堪能したし、伊原さんがただただかっこいいとこ全部持ってちゃいましたねぇってな終わりで、それはそれで面白かったんじゃないかと・・・(笑)。

-2007.10.31 MOVIX堺 -

【映画】『ミリキタニの猫』

2007年11月05日 | MOVIE
『ミリキタニの猫』the Cats of Mirikitani(2006年/米)
監督:リンダ・ハッテンドーフ。

2001年。この映画の監督であるリンダは、ニューヨークの路上でひたすら絵を描いている一人の日系の老人と出会う。彼の名はジミー・ミリキタニ。自らを絵画の巨匠だという彼に興味を持ったリンダはカメラを回す。そして2001年9月11日。世界貿易センターが瓦解し、ニューヨーク中が騒然とし、みんなが恐怖に怯える中、いつものように平然と絵筆を動かすジミーにリンダは声をかける「うちに来ない?」リンダとジミーの奇妙な共同生活の中で明らかになっていくジミーの人生。日系人強制収容所に送られ、アメリカの市民権を捨て、それでもアメリカでアメリカを憎みながら生きてきた彼の戦後60年史。

人との出会いって本当に不思議だ。
ジミー・ミリキタニの絵は彼が自らを巨匠だと言うほどに上手いものなのかは、私にはわからない。もし路上で彼の描いた絵を見たら、買ったかな?どうだろ?不思議な絵ですよね。
今彼が画家として生きているのかどうかはわからないけど、路上画家ジミー・ミリキタニとして彼の名は、アメリカでそして日本で知られるようになった。でももし、彼がリンダと出会わなければ、確かにあのニューヨークの路上で路上画家としての彼の人生はそのままにあったかもしれない。だけど、彼の怒りも思いもまたそのまま彼の中だけで、彼はただの浮浪者としてニューヨークの路上に息絶えていたんだろう。
私は運命論者だ。だからきっと彼の人生を知らしめるために、日系人だというだけで収容所に入れられて、大人になることもなく逝ってしまった猫好きの少年のことを、ピースサインが決して古びたダサいサインではなく、今でも堂々と掲げなければならないサインであることを見せつけるために、ジミーとリンダの出会いがあったのだろう。
しかしアメリカという国は不思議な国だ。『シッコ SiCKO』で描かれているように、金持ち崇拝のとんでもない医療制度がまかり通っているかと思えば、この映画では、社会保障番号をなくしたジミーの社会保障番号を探し出し、あっさりと見つけられる彼の新居。おまけに老人施設では、日本では絶対に通らない偏屈な老人の「わしは絵画の巨匠だ」という言葉に「じゃ、絵画教室の先生をやってもらいましょう」って・・・何よこの寛容さは。「アメリカなんてクソッタレだ」そんなジミーを支える彼ら。アメリカと比較して日本を褒めるジミーの言葉に恥じないような日本人でいなければ・・・。肝に銘じさせられました。何があっても「ピース!」

-2007.10.29 シネ・ヌーヴォー -