にゃんこな日々

ネコ風ライフをつらつらと・・・

【本】『甘夏とオリオン』

2020年02月07日 | BOOK
『甘夏とオリオン』/増山 実

主人公は、入門3年目の女性落語家桂甘夏。「突き抜けたアホ」になれるという理由で桂夏之助に弟子入りし、懸命にネタを覚え、落語家として精進していく甘夏に降りかかる師匠夏之助の突然の失踪事件。そしてその師匠が帰ってきやすいようにと甘夏と兄弟子小夏、若夏の3人で始めた深夜寄席「師匠、死んじゃったかもしれない寄席」を通じて甘夏の成長だけでなく、兄弟子二人の成長、そして人のつながりの優しが描かれる。

落語好きにはうれしいネタの数々、落語の蘊蓄。へぇ~、そうなんだぁということも多く読んでいてとても楽しかった。そして、それぞれのセリフがいいんですよ。心が温かくなっていく。私が一番ぐっときたのは夏之助師匠の言う落語のエッセンス「ワット・ア・ワンダフル・ワールド」「この世界も捨てたもんやない」この場面のセリフぜひ読んで欲しい。ここのセリフにああそうだよなとすごく合点がいった。人が毎日生きていて、ムカつく、腹立つ、いろんなことがあっても、ある時ストンとこう思うときが必ずある。あるからこそ生きていけるんだろうなと。
しかもこの物語の舞台は大阪の玉出。私高校に入るまで住之江に住んでいて、私が子供の頃、いくつの時とは言わないが、地下鉄は玉出までしか通ってなかった。若いころ2年ほど玉出にある会社で働いていた。さすがのこの本に出てくる内容ほど街のことは覚えていないけど、なんとなく「ああ、あそこか・・・」というのもあって、懐かしくも感じた。兄弟子の小夏が言う「落語の国」もいいんですよねぇ。今でいうとアニメの聖地巡りってところかな?小夏と甘夏が北浜を歩くところコピーして持ち出して北浜歩いてみたくなりました。ちなみにこの甘夏のモデルは桂二葉さんだそうです。

そしてここでネタばれがあるので改行







で、師匠どうなったんだよ!せっかくいい物語だったのに、ラストあれはないわぁ。涙涙の大団円で終わらせて欲しかった。ちゃぶ台ひっくり返しそうになったよ。うちちゃぶ台ないけど(笑)。

【本】『前巷説百物語』

2007年07月15日 | BOOK
『前巷説百物語』/京極夏彦
小股潜りの又市が、御行となる前の物語。
損料屋。主に寝具や衣装を貸す、貸蒲団屋や貸衣裳屋のような商売で、貸して品物が傷んだ分の損した料金を頂くということで損料屋と呼ぶ。そしてその損料屋のゑんま屋では、裏稼業として人が被った損を買い取っていた。ひょんなことから、その損料屋と知り合った又市は、彼らの裏稼業の損料仕事を引き受けることになるが・・・。

損料屋。なんかいいですねぇこの名前。昔のこういう呼び名って粋ですよね。そして人死にが出るような図面は引きたくないと言い切る若くて青い又市がいいな。「かみなり」の章での「泣き乍ら帳尻合わせるばかりが人の道じゃねえ。騙して賺して謀って、夢ェみさせてやることだって出来るじゃねぇか。神や仏ってな、その夢なんだろが。神も仏もねぇ世なら、化け物でもなんでも構いやしねぇ。所詮この世は嘘っ八だ。嘘と承知で収められねぇものかよぅ」このセリフがいい!
又市が御行となる経緯は、あまりにも悲しい物語だけど、出来ればそこまで行きつかないで、損料屋の裏稼業もっと痛快に読みたかった。この巷説のシリーズで小股潜りの又市さんに惚れちゃってるんですが、この又市さんよりも私をときめかせた人が御一人(笑)。浪人の山崎寅之助。浪人と言えば武士なんだけども、刀を差していない。そして飄々としながらも、腕は立つ。しかも素手で相手に向かいあっさりと相手の得物を奪い、それでとどめを刺す。あぁ・・・山崎さんのスピンオフが読みたい。
でもこの巷説シリーズのキャラはみんないいなぁ。事触れの治平さんも好きなんですよねぇ。久瀬棠庵もいいなぁ・・・この先生が百介につながるんですね。
なんだかもう一回『巷説百物語』から読みたくなってきた。

【本】『巷説 天保水滸伝』

2007年06月11日 | BOOK
『巷説 天保水滸伝』山口瞳

以前からこの「天保水滸伝」というのが気になっていた。『座頭市物語』や『半身のお紺』などのように平手造酒が出てくると必ず土台はこの飯岡の助五郎と笹川の繁蔵が絡む天保水滸伝ですしね。一体どんな物語なんだろう?と思ってたところへ先日観た『関の弥太っぺ』でも助五郎と繁蔵の大喧嘩が出てくる。ますます気になる!って思ってネットで調べると、なんでも大元は浪曲だとか・・・。しかも結構長いようなんですよね。面白そうだなぁ、聞きたいよなぁ~と思いつつも、さすがにコレは買えない。(^^; という時にこの本の存在を知る。で、早速購入して読んだんですが・・・。最初は飯岡の港がどこにあってとか、「もく星号」の墜落がどうこうとかってことが書かれてるんで、もしかしてこれ買ったのは失敗だったか?って気になる。本来悪役としてしか描かれていない飯岡の助五郎は本当に悪役か?っていうスタンスで描きたいってことを書きたかったようですね。案外、その序章部分すっとばしてもよかったかも・・・(笑)。
物語は飯岡の助五郎と笹川の繁蔵の若いころから、いっぱしの親分になるまでと、二人の出会い。そして仲違いまでが描かれている。つまり私が知りたかった大筋の物語がないんですよねぇ。いや、これはこれで面白かったんですよ。でも、読みたい、聞きたい、知りたいって思った『天保水滸伝』の触りだけを知ったって感じですね。(^^; まぁ、これだけ長い物語一冊では無理なんでしょうねぇ。
『天保水滸伝』は結構映画にもなってるようですが、レンタルには置いてないしなぁ。その映画を見れたって、どの部分を描いているかによってこの長い物語のすべてがわかるわけじゃないしなぁ・・・。
誰かこの浪曲持ってるから貸してあげるよ。なんて人いないかな?(笑)。

【本】『品川隆二と近衛十四郎 近衛十四郎と品川隆二』

2007年04月28日 | BOOK
『品川隆二と近衛十四郎 近衛十四郎と品川隆二』ワイズ出版
品川隆二さんのインタビュー本です。
先月から東映チャンネルで放映されている『素浪人 月影兵庫』の第一シリーズにすっかりはまってるところにタイミングよく?(笑)発売されたのがこの本です。おかげでつい購入してしまいました。
近衛さんの話は出てきますが、ほとんどが品川自身のお話なので、タイトルになんで近衛さんの名前が?って気はします。冒頭には近衛さんのスチール写真が載ってますけど。まぁ、品川さんと近衛さんってやはり『素浪人月影兵庫』に『素浪人花山大吉』と切っても切れない縁だからでしょうかね。
しかしこの本面白いですわ。品川さんって1931年生まれだから、今年で76歳。平成10年に肋骨に出来たガンの手術をしてから大きな声が出せないし、体力も持たないということであまり俳優活動はなさってなくて、今では演歌の作詞をなさってるそうなんですが、この本を読ませていただいた限りで判断するとお元気で、頑固で全然老けてなくって・・・。「焼津の半次」っていうキャラで人気が出て一番長く演じてらっしゃったんですが、ご本人は嫌いな役だったそうなんです。でも曲がったことが嫌いって感じで、喧嘩っ早い感じがあって「焼津の半次」のイメージだなって感じました。
それにしてもこんなこと言っていいの?っていう内容が多々あり、本当に面白かった。それとここ何年か昔の邦画にはまってあれこれ観るようになってるんですが、そのおかげで知った監督の名前が出てきて、その人の撮影方法なんて話があって、小津安次郎監督のローアングルと加藤泰監督のローアングルは違うとか、衣笠貞之助監督はきっちりと撮る本流の監督さんだとか、なんて話しはすごく面白かった。あとツーカメラの場合はカットの部分のことを考えた演技をしなきゃいけないとか、映画というものの演技法、撮影法、舞台での動きなんか、自分が知らなかった話なんで、映画好きとしてこれはひとつ賢くなったな。と思えましたよ。
この本の中に登場する作品では最近偶然にも『日本橋』(市川崑監督)を観たんですが、これよかったんですけどねぇ。品川さんは嫌いだそうです(笑)。同じく嫌いだとおっしゃってる増村保造監督の『暖流』をぜひとも観てみたいなって思ってます。


【本】『ハナシがちがう!』

2006年11月10日 | BOOK
『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』/田中啓文
金髪で鶏冠頭で、何度も警察のやっかいになるという不良少年、星祭竜二を見るにみかねた高校の元担任教師が彼をひっぱっていったのは、なんと上方落語の大看板で大酒呑みの笑酔亭梅寿の家。竜二に残された道は噺家になるしかない。そんな無茶な発想で無理やり弟子入りさせられた竜二が、どつかれ貶され過ごす内弟子修行の日々の中で次々遭遇する怪事件。
すべての事件に上方落語の古典作品のタイトルがついていて、うまくその噺とリンクしている。上方落語好き、あるいは私のようにそんなに落語に詳しくはないけれど、興味があるっていう人間には最高に面白い作品です。この作品読んですごく落語が聞きたくなりました。出来れば生で聞きたい。生まれてこの方寄席っていうとこには行ったことないんですよねぇ。行ってみたいなぁ。落語会ってこの演目やりますよっいうの最初からわかるんでしょうか?わかるならこの作品に登場した演目が聞きたい。『たちきり線香』これ特に聞きたいんですよ。『らくだ』これはいろんな映画や舞台で使われてますよね。『時うどん』これ、この作品読んで初めて知ったんですが、『時そば』「今何時だい?」ってやつ、上方落語ではうどんなんですねぇ。『平林』これは昔何度がテレビで聞いたことあって、好きな噺なんですよね「たいらばやしかひらりんか?いちはちじゅうのも~くもく」(笑)。『住吉駕籠』『子は鎹』「かすがい」ってこんな字なんですねぇ。『千両みかん』。
どれでもいいから生で聞きたい!
この作品の続編も出てまして、『ハナシにならん!』こちらは本日図書館で予約しました。
とにかく関西人で、落語好き、あるいは興味がある人はぜひぜひ!お薦めの作品ですよ。

『のだめカンタービレ』

2006年10月20日 | BOOK
以前から、ちょくちょくこのタイトルを聞き、気にはなりつつも手を出していなかったんですが、とりあえずドラマがはじまったので、とりあえず見てみた。上野樹里さん好きだし・・・。
なんかマンガチックな描写は好きじゃないんだけど、どぎつくならない程度に抑えていたし物語も面白かったし・・・と好感触。『フラガール』には出ていなくてよかったよかったと思っていた竹中さんの登場に「ココにくるか~!!」と思わずのけぞってしまいましたが・・・(^^;)。ま、ああいうの竹中さんにしか出来ないかもしれませんねぇ。
で、ドラマを見てからすごく原作が読みたくなって、本日とうとう購入してしまいまいした。
ちょっと躊躇した大人買いでとりあえず10巻まで。明日にはあと6巻買っちゃうんですけどね。(^^;) ダメなんですよねぇ。マンガは。読みやすいもんだから止められない。大人買いの一気読み・・・バカです。言われる前に言っておきます。
でも、面白い!いいですわコレ。クラシックはあまり詳しくないので、出てくる曲名だけではどんな曲だかわからないのが残念です。その曲知ってたら読みながら頭の中でその曲流れるんでしょうねぇ。
作品中に出てくる曲のCDと抱き合わせでコミック売っても売れるかも。
そうそう、今日この本買ったときレジで店員さんが「あ・・・コレいりますか?」と指さしたのは『のだめカンタービレ』の販促用のディスプレイ。「え?・・・いや、いいです」「お聞きした方がいいかなと思いまして」「あ・・・はぁ・・・(^^;)」
一気買いしたもんだから、大ファンだと思ったのでしょうか?あ・・・もしかして娘が大ファンで買ってきてと言われたから、娘さんのために欲しいって言うかも・・・って思われたのかな。まぁ、そう思われたとしても仕方ないかなぁ・・・。


『鉄道唱歌』

2006年09月02日 | BOOK
確か、京極堂シリーズだったと思うんだけど、その中で以前は『鉄道唱歌』を全部覚えていたのに云々・・・の話が出てきて、これを覚えるっていうのはすごいんだぁ~ということが私の頭の中にインプットされていた。で、最近何気なくテレビを見ているとこの曲が流れてきて、そういえば・・・と思い出しネットで検索していてこんな本がヒットした。『鉄道唱歌』ここの紹介文によると、この本全部しっかり歌うと10時間だとか・・・(笑)。さすがに歌う人はいないでしょうし、私も歌う気はないんですけど、旅のお供に一冊というのも面白いかな?と思い早速購入しました。
一番最初に作られた東海道編の時点で66番まであるんですねぇ。おまけに終点が神戸だったとは今回検索して初めて知りました。
それとこれ読んでて面白いのが、地名と名所だけではなく、歴史も書かれていて、たかが歌詞とは言えない面白さがありますよ。さすがに本まではいらないだろう・・・という方々にこんなトコみつけましたので、のぞいて見てください。この鉄道唱歌の歌詞とその当時の写真がセットになってます。これだけでも楽しいですよ。


『模倣犯』

2006年06月13日 | BOOK
つ・・・疲れた。
今まで読んだ宮部作品は、どちらかというと面白くサクサクっと読めたのだが、なんというか、これはつらかった。下巻の中盤にさしかかったあたりからは、それこそ怒涛の勢いで一日で読んじゃったんだけど、そこにいくまでの道のりが長かった。
面白い、面白くないの話じゃないんですよね。なんかこう読んでて心がワサワサするっていうか、ジクジクするっていうか、所謂愉快犯っていうものが描かれているから、その犯人に対するムカツキってのはあるんですけど、そんな単純な感情だけで終わらせてはくれないんですよね。この作品は。
めくられるカードが多い。犯人、被害者、刑事、犯人の家族、被害者の家族、マスコミ、そして一般視聴者。その事件に関わったすべての人たちのカードが並べられ、並べるだけではなく、裏返され、そっちだけじゃなくこっちもみてごらんよ。と視点を移動させられる。そして気付かされるのは、事件を起こした犯人の理不尽さだけではなく、人はみな理不尽なんだということ。その理不尽さは見たいものしか見ない。聞きたいものしか聞かないってことなんですよね。誰しも自分が一番かわいくて、自分をとにかく守りたい。そして自分の正義を振りかざすとき人は理不尽になるんですよね。あぁ・・・なんか胸がチクチクする。(^^;)
「本当のことは、どんなに遠くへ捨てられても、いつかは必ず帰り道を見つけて帰ってくるものだから。」
深いセリフだ・・・。すべてのことは単純明快ではない。今、結論を出そうとするから人は傷つき、傷つけてしまうのかもしれませんね。

『殺しの掟』

2006年05月07日 | BOOK
なぜかいきなり池波正太郎作品です。実は『鬼平犯科帳』『剣客商売』の2作品は読んでいるんですが、『梅安シリーズ』は未読なんですよね。そこでまずは『梅安シリーズ』の原型となった短編のこの作品を選んでみました。
さすが闇の稼業ということで、どの作品もクールです。『梅雨の湯豆腐』これはテレビドラマ『鬼平犯科帳』で使われてたのを思い出しました。そのときこの主人公が楊枝つくりだということはなんとなく覚えてはいたのですが、名前が彦次郎だとは思ってもみませんでしたよ。実はドラマ版の『仕掛け人藤枝梅安』も最近まで観たことなくって、梅安さんの相棒が彦次郎さんだと知ったのは最近なんで、ドラマで観たときよりもこの作品読んだ今回の方がせつなかった。(^^;) だって・・・彦さ~ん(涙)。って言っても、ま、ある意味別ものなんでしょうけどね。
で、やはり表題となっている『殺しの掟』。これいいですわ。音羽の半右衛門渋いかっこいい。外見は小人のように小さく大女の女房に甘えるように抱きかかえられる。なんとも想像すると情けない図で日々を送る半右衛門なんですが、ラストの描写はやはり只者ではないというのがぞくっとくるほど伝わってくる。本当に怖い男は恫喝しないんですよねぇ「二度と、こんなまねはしねえことだ。もし、またやったら、今度はお前、御陀仏だぜ」渋すぎる・・・。
なんか手元に一気に本が増えてしまったんで、しばらく『藤枝梅安シリーズ』にはかかれそうにないですが、このシリーズも全部いってしまわないと池波ファンとは言えませんね。

『スナーク狩り』

2006年04月28日 | BOOK
一見、何かの楽器のように見えるケースに散弾銃を入れ、結婚式披露宴会場を目指す一人の女性関沼慶子。物語は彼女が披露宴会場を目指す日曜日の夜から始まる。その彼女が出入りする釣具専門店の店員織口邦男と佐倉修治。慶子の元恋人国分慎介。その妹国分範子。様々な人を巻き込んで、それぞれの心の裏側が軸となる長い長い一日。
びっくりしたなぁ。まさか結婚式場へ自分を騙し、捨てた男への復讐のために出かける女性の物語から、いろんな人が絡み合い、一つの流れの中で組み合わさっていくなんて思いもよらなかった。いやぁ堪能しました。そしてまたこの作品でも大きく唸らせることばかり。「スナーク」=「正体のはっきりしない怪物」。人って誰だってどこでどうなるかわからない。いつだって怪物になってしまえるものなんですよね。いい人も悪い人もとにかくこの人の作品の登場人物はなんともリアルに等身大なものだから、なんだか余計に身につまされる。さすがに散弾銃を振り回してどうこうなんてことは現実的にはないでしょうが、国分範子をやった偽りの手紙で自分の代わりに相手をどうにかしてもらおうとか、告げなくていいことを告げて、相手が怪物にかわるのを待つなんて所業は、したことがない。考えたことがない。とは言えない。(^^;) この本の裏表紙にある紹介文に「人間の真実を抉る傑作サスペンス!」とある。確かに見事に抉ってますな。見事に抉られてるもんだから、読み終わったあと妙に心が痛い作品でもあります。