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今日の筆洗

2023年08月12日 | Weblog
敵艦に体当たりを図る特攻隊員は、本当に志願に基づき選ばれたのか▼近著に『「特攻」のメカニズム』がある社の同僚加藤拓記者の取材に、送り出した側の元上官のほとんどは「志願」と声を揃(そろ)えたが、操縦席に座った元隊員には「命令」と受け止める者もいたという。「命をお国にささげる時が来た。志願する者は署名して提出せよ」と訓示され、一人が「志願しよう」と言いだして全員が倣ったが、それは志願と呼べるのか-。傍(はた)からは怪しく見える「志願制」は組織上層部の責任回避が目的だったらしい▼今回、上層部の関与はなかったのか。コロナ関連のコールセンター事業を受託した近畿日本ツーリストが人件費を水増し請求。元支店長ら四人が逮捕された。社長は会見で組織ぐるみを否定した▼過大請求は静岡支店などが舞台。最大約五十自治体の計九億円に上る。弁護士らの調査委員会は、組織全体の利益追求偏重や法令順守軽視を指摘。支社幹部から管内各支店長へのメールには「利益を死守するように」とあったという▼一線を越えよとの命令はなくても、無慈悲な圧力で人に誤った選択をさせる-。特攻とも重なる、日本の組織にありがちな悪弊と思える▼先の著書は「終戦を境に、日本の社会構造は過去の負の遺産を断ち切ったわけではない」と語る。戦争を考えることは今の私たちを考えることなのだろう。