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今日の筆洗

2023年08月09日 | Weblog
ミョウバンと酢を一定の割合で混ぜてインクを作り、ゆで卵の殻にメッセージを書く。インクは多孔質の殻に染み込み、固ゆでになった卵白の表面にメッセージを残せるそうだ▼卵を受け取った人物が殻をむけば、その内容が読める。十六世紀のイタリアの科学者ジョバンニ・ポルタが考えた秘密のメッセージを伝える方法だという。『暗号解読』(サイモン・シン、新潮文庫)に教わった▼ただ、これでは敵が秘密を入手するのはたやすかろう。受取人から卵を奪いさえすればよいのである。ワシントン・ポストの報道が事実ならうかつな人物が卵を盗まれそうになったということか。二〇二〇年、中国軍のハッカーが日本の防衛省のシステムに侵入したという▼「近年でもっとも深刻なハッキング」と伝えられる。浜田防衛相は防衛省から情報が漏れた事実は確認できないとする一方、侵入については否定も肯定もしていない。想像するしかないが、機密がかなりの危険にさらされた可能性がある▼日本と防衛情報を一部共有する米国は気が気でなかろう。日本が侵入を許せば、米国の「卵」まで奪われてしまう▼「秘密は刃物だから、子どもと愚か者には漏らしてはならない」。十七世紀の桂冠(けいかん)詩人、ジョン・ドライデンの喜劇に出てくる言葉だそうだ。対策を急がねばなるまい。米国は今、日本を子どもか愚か者と疑っている。