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今日の筆洗

2022年11月12日 | Weblog
 プロ野球ロッテの往年のエース村田兆治さんは、現役二十三年で暴投が通算百四十八。同世代の阪急の主戦投手山田久志さんの二十年で十四と比べると、多さが分かる▼鋭く落ちるフォークはよく、捕手の手前の地をえぐった。三塁走者がいて暴投で失点するピンチでもこの決め球を投げた▼失敗を恐れず挑む人ゆえ、約四十年前の右ひじ手術も決断できたのだろう。今は珍しくないが、当時の日本で投手の利き腕へのメスはタブー。自伝によると、米国の執刀医ジョーブ博士に事前に「100%成功するとはいえない」と告げられた。術後に成功を聞かされ、帰りのタクシー内で思わず「ピンチにフォークが決まった」と口にしたという▼村田さんが自宅の火事で亡くなった。七十二歳。突然の旅立ちの報に言葉を失った▼先に空港の保安検査場で、女性検査員の肩を押したとして現行犯逮捕され釈放後、女性やファンに謝罪していた。その後を気にかけていたファンも多かっただろう。別れが切ない▼右ひじ手術とリハビリを経て、八百十八日ぶりとなった復活の一軍登板は一九八四年八月十二日、札幌円山球場の西武戦のリリーフ。私事で恐縮だが、当時中学生でスタンドにいた。「ピッチャー村田」のアナウンスにあがった「ウォー」という地鳴りのような歓声は、挑戦が人の心を揺さぶる証左だったのだろう。今も耳に残る。