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今日の筆洗

2022年11月25日 | Weblog

ドイツ人の故クラマーさんは「日本サッカーの父」。日本代表コーチとして、一九六四年東京五輪に向け基礎技術から教えた▼来日前の六〇年八月、西ドイツ合宿に来た日本代表と初対面し、0−5で敗れた地元チームとの試合を見守った。雑なパスの続出に試合後、引率の日本側役員が「スピードを落とし、正確さを心掛けた方が」と言うと「速さを落とさず技術を上げるのだ」と反論した▼惨敗でも選手の機敏な動きに極東のサッカー後進国の可能性をみて「欧州の選手たちがついていけないほどのもの」と評した。スポーツライター加部究さんの著書『大和魂のモダンサッカー』から引いた▼ワールドカップカタール大会一次リーグ初戦で「サムライブルー」こと日本代表が格上ドイツに勝った。浅野拓磨選手が俊足を生かし、屈強な敵を振り切り決勝点。長くボールを支配したドイツがついていけない瞬間は確かにあった。天上の「父」は見てくれただろうか▼その人はゴール前で誰かがシュートを打っても気を緩めず、こぼれ球が来ると予測して動けと教える際「日本語のザンシンだ」と説いた。残心。武道や茶の湯で一つの動作が終わっても緊張を解かない心構えをいうが、そこまで日本語を勉強したのかと驚く▼まだ一つ勝っただけの今、応援する側も胸に刻みたい言葉。きっと青きサムライには先刻承知の心得である。