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今日の筆洗

2022年11月01日 | Weblog

ブラジルのピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの試練と不屈の物語はよく知られる。サッカーの練習中の大けがで右腕が動かなくなる。名声を目の前にしての事故だった▼必死のリハビリでカムバックするが、別の悲劇が起こる。強盗に襲われ、また大けが。やがて、両腕が不自由になる。それでもあきらめない。指揮者に転身する一方、開発された特殊な手袋をはめることでピアノに挑み続けている▼手袋をしたマルティンスの味のあるバッハにブラジルのもう一人の「不屈」を重ねたくなる。ブラジル大統領選に当選したルラ元大統領。現職のボルソナロ大統領を大接戦の末に破った。大統領に返り咲く▼貧しい家庭に生まれ、十分な教育を受けられなかった。最初についた仕事は靴磨き。その後、自動車工場に職を得たが、作業中の事故で大けがを負う。恋を実らせ、結婚した妻は出産中に亡くなる▼困難は続く。労働組合の指導者時代には軍政によって投獄された。四度目の挑戦で大統領に当選し、高い支持を得たが、退任後は収賄罪に問われた。昨年、連邦最高裁が有罪判決を取り消し、今回の出馬となった▼「前に進みなさい。それができない時は待ちなさい。あきらめてはだめ」。母親にそう教わった。貧困と分断。直面する課題をどう解決するか。数々の試練を乗り越えた七十七歳の不屈が再び試される。