TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」85

2015年12月11日 | 物語「夢幻章伝」

「何?」

にっこりと、アヅチ姉は湯呑を置く。

どきーーーーーん!!

そっと置いたであろう湯呑が、割れている!!

「・・・何?」

もう一度、にっこりするアヅチ姉。

「お、・・・お、わ、」
「だから、何」

アヅチの狭い部屋には、人がたくさんいるけれども、
一気に冷房が効いていく!!(ような気がする)。

「あ、わ、わわ、、、・・・っっ、姉貴!」

心を決め、がばっとアヅチは起き上がる。

「アヅチ!」
「アヅチ!!」
「アヅチぃい!!」

「姉貴! 俺は旅に出て友の親睦を守ろうかと思う一存だ!!」

「・・・はあ?」

アヅチのセリフは、いまいちアヅチ姉に伝わらなかったけれど
アヅチ、頑張った!

「何それ」
「この!」

と、アヅチはへび呼ロイドを掴む。

「この、へび呼ロイドの友達を救いたいんだ!」

「ヘビ、コロイド・・・」

アヅチ姉は、じろりとへび呼ロイドを見る。

「はわわわわ(汗)」

へび呼ロイドの背筋が伸びる。

「ははははは、ははじめました。へび呼ロイドと申するます!」
「さっきから思っていたのだけど、」

アヅチは、へび呼ロイドの先のアヅチを見る。

「これは、何?」

「え、ああ。へび呼ロイド、だけど」
「つまり肥料ってこと?」
「なんで、そうなるのぉー!!!!」

どごーーーーん!!

へび呼ロイドは、きれいに吹っ飛んだ。

「年長者を敬え」

「・・・ぐふっ。スミマセンでした」

アヅチ姉とへび呼ロイド、どちらが年長かは不明。

「ま、まあまあ。姉貴」

ここで、お茶菓子をつまみながら、モモヤの登場。

「確かに収穫も忙しいけれど、アヅチの友達を想う気持ちをわかってやろうよ」

モモヤはお茶を飲む。

「今回の旅で得た友、へび呼ロイド(※肥料ではない)を救いたいんだろ」
アヅチ姉は黙ってその話を聞いている。
「中途半端に終わらせるなんて、男には出来ないよな、アヅチ!」
「お、おう」
「なら、あんた(モモヤ)はいつまで、彼女と中途半端なのよ」
「うぐっ・・・!」

アヅチ姉は容赦ない。

「収穫が終わってから行けばいいじゃない!」

ガツン、と立ち上がり

「せめて今日1日(日の入りまで残り3時間か)、収穫祭りよ!」

どっちかと云うと、地獄。

「・・・へび呼ロイド」

アヅチとマツバは、小声でへび呼ロイドを見る。

「すまん・・・」
「悪いわね・・・」
「いいよいいよっ。大丈夫っ。本当に気にしないでっ」

うんうん。

よく考えたら、今回は同僚が誘拐されたわけでもないしね!
うんうん!

「なら、さっそく取りかかるわよ! 片付けなさい!!」

「「「「はいっ!!」」」」

こうして
アヅチとマツバとモモヤと、ついでにへび呼ロイドも
収穫に取りかかることになったのである。


NEXT


「夢幻章伝」84

2015年12月08日 | 物語「夢幻章伝」


「あああ、
 アヅチのお姉さんだってぇえええ」

思わずへび呼ロイドが叫び
と、同時に
マツバがアヅチの方を振り返る。

「    」

完全に固まっているアヅチ。

「……っ!!」

再びアヅチの姉に向き直るマツバ。

「まっちゃん、お帰り~」

やほー、と
マツバに駆け寄るアヅチ姉。
眼や髪の色、顔立ちはアヅチに似ている。
というかアヅチが似ている。



「この度は、アヅチ君とご一緒に
 旅をした次第ですが」
「あはは、まっちゃんったら
 どうしたのかしこまっちゃって」

もう、やだな~、と
笑うアヅチ姉。

「えええ?
 そんな、怖い人じゃ、ない?」

二人とも大げさすぎだよ~、と
胸をなで下ろす
へび呼ロイド。

しかし、アヅチどころか
マツバまで妙に緊張して
敬語になっている異変にへび呼ロイドは気づかない。

「お忙しい時に
 アヅチ君を連れまわして」

まぁ、と
驚くアヅチ姉。

「むしろ、うちのアヅチが
 まっちゃんを連れまわしちゃて
 ごめんね~」

と、そこで一度言葉を止める
アヅチ姉。

「っていうか、
 おかしいよね。
 本当に謝らなきゃいけないの誰だっけ?」

あ、やばい、と
最初に気付いたのは
兄弟であるモモヤ。

「アヅチ、土下座!!!」

はっ、と
その言葉に弾かれるように
地に伏せるアヅチ。

「このたびは!!!」


 間


「あ、あれ、俺、一体!!」

アヅチは、見慣れた
だけど数日ぶりの自分のベッド飛び起きる。

「アヅチ、目が覚めた?」
「凄く綺麗な弧を描きながら吹っ飛んでいたよな」

わっはっは、と
笑うモモヤと
怯えるへび呼ロイド。

「あああ、あれが、
 アヅチのお姉さんの真剣打!!」

つ、強い。
まるで漫画の様に左頬が晴れているアヅチが
ぼそり、と言う。

「……うちの姉は
 次期村長候補だからな」

南一族の村長選抜条件とは一体。

「いつもに比べたら
 軽いパンチだったぞ。
 事前にフォローしておいた俺に感謝しろよ」

ぐっと親指を立てるモモヤ。

「ああああ、あれでぇええ??」

「目が覚めた様ね!!」

と、そこに現れるアヅチ姉とマツバ。
マツバは一応の帰宅報告を
家族に済ませてきた所でした。

みんな、なぜ俺の部屋に集う
と、アヅチは思わない事も無かった。

「そもそも、
 遅くなるなら遅くなるで
 あらかじめ連絡を入れて入れば
 こっちだって文句は言わないわよ」

その分は別に働いて貰うから、と
無言のプレッシャーを感じさせつつも
アヅチ姉は皆にお茶を出す。

南一族名物の
餅米をあんこで包んだお茶菓子付き。

アヅチの狭い部屋に
なぜか皆がぎゅうぎゅう状態で
午後?のコーヒーブレイク(でも緑茶)。

ふ、と
お茶の香りを楽しみながら
アヅチ姉が宣言する。

「まずはお茶でもして、
 それから早速豆の収穫よ。
 まだまだ豆はあるんだからね」

「あ」
「あ」
「う」

思わず顔を見合わせる
アヅチ、マツバ、へび呼ロイド。

だって、まだ
同僚達を探す旅が。

「あああ、アヅチ
 おいら達の事は気にしないでいいから」(小声)
「だけどさ」(小声)
「そうよ、とりあえず私が行っておくわ。
 案外すぐ終わるかもしれないし」(小声)
「そうそう、
 お土産沢山買ってくるから」(小声)
「旅行か!!!」(小声)

いや、と
アヅチは姉の方に振り返る。

「姉貴、……俺」

「なに?」

アヅチ、姉に立ち向かうというのか。

「俺、俺っ!!!」

が、頑張れ、アヅチ。

「俺はーーーーー!!!」


NEXT


「夢幻章伝」83

2015年12月04日 | 物語「夢幻章伝」

と、云うわけで

高級馬車九つ星にしっかりと乗車して
高級食材による料理も、しっかりと食し

アヅチとマツバに、へび呼ロイドは南一族の村へと到着!

約80話ぶりに、南一族の村に戻ってきたのだ!!

覚えているだろうか。

自然豊かな南一族の村。
特産品は豆。
収穫の時期。
それを、ほっぽり出してきたアヅチ!!(と、マツバ)

「うぇええええぇえ」

高級馬車の旅も大幅カットで終了し、
アヅチは、頭を抱えて、その場にしゃがみこむ。

「うぇええええぇえ」(2回目)

「・・・アヅチ」
「・・・アヅチ」

マツバとへび呼ロイドは顔を見合わせ、アヅチを見る。

「ええ、あなたのお姉さんのことはよく知っているわ」

本当にどうしよう、と、マツバとへび呼ロイドは声をかける。

「ここは正直に、さぼってたことを謝るしか」
「さぼってたって、おぉおおおいい!!」
「きっと、お姉さんもわかってくれるよぉ!」
「わかってくれないからだなぁ!!」
「大丈夫。一瞬殴られて(真剣打)終わるわ!」
「うぇええええぇえ」

アヅチは再度、頭を抱える。

「一緒に謝るよ、アヅチぃ!」

へび呼ロイドはキコキコする。

「いや、謝ってなんとかなるのか」

うぉおおおおおおおお

「はっ!」

アヅチは顔を上げる。

「おい、へび呼ロイド! お前、雇用証明書けよ!」
「・・・・・・?」
「雇用証明!」
「こよーしょーめー?」
「俺は収穫をサボっていたのではない。お前のもとで働いていたんだと!」
「ぴぴーーん! なるほどだね、アヅチ!」
「俺の命は、お前にかかっている!」
「おぉおお、オイラのせいで、アヅチが2度も危険にさらされ!」
へび呼ロイドは、キコキコ。
「オイラにお任せあれぇ! キコキコカキカキ」

「いや、もういいから!!」

マツバは容赦なく、アヅチとへび呼ロイドを殴る。

「めんどくさいから、とっとと行きましょう!」
「やめれ、お前!」

マツバは強力な力でアヅチを引っ張る。

「大丈夫。一瞬殴られて(以下繰り返し)」
「マツバぁ! やめてあげてぇ!」
「やめてくれー!」

「おい、お前たち!」

南一族の村の入り口(西一族側)で、ギャーギャーやってる3人に
声をかけたその人物は!

「兄貴!」
「「アヅチのお兄さん!」」

そう、モモヤです。

「お前ら~、やっと帰って来たな」

モモヤは、背中にも前にも、大量の豆(特大)を抱えている。

「俺は、夕方の鐘が鳴るまでに帰って来いと云っただろう!」
モモヤは、アヅチに向く。
「それなのに、ふたりでお泊りか!」

結局、兄にも怒られているアヅチ。

「マツバ! お前の家族の方に説明するのも大変だったんだぞ!」

うっ

マツバは一歩引く。

「別に・・・頼んでないし」

「まったくもう!」

モモヤは、大きくため息をつく。

「とにかく、無事で帰ってきてくれて、何より!」

「そうね」

・・・ん?

これは

アヅチでもなく、マツバでもなく、
へび呼ロイドでもなく、モモヤのセリフでもなく

「無事に、帰ってきてくれて、何より」

・・・・・・。

アヅチの姉貴だー!!!



NEXT


「夢幻章伝」82

2015年12月01日 | 物語「夢幻章伝」

「どうする!!」
「どっちの意見を取るっていうの?」

へび呼ロイドの真の姿なんて
どうでもいいアヅチとマツバは
行く先をへび呼ロイドに任せた。

「……え?
 あああ、あのね」

ふと、地面の方を見つめていたへび呼ロイドだが

「分かった分かった!!」

仕方ないな、君たち、
という感じで胸を張る。

「西でご飯を食べたいというアヅチに
 それぐらいなら北に戻るというマツバ。
 二人の意見を尊重して
 どちらにも納得のいくお昼にしようじゃないか」

「そんな手段があるか?」
「携帯食料とか嫌よ」

ノンノン。

へび呼ロイドが変に気取っている。

「じゃ~ん。
 これをご覧なさいな!!」

すちゃっと取り出されたのは
ある馬車のチケット。

「「こ、これは!!」」

おののく、アヅチとマツバ。

「高級馬車、9つ星、の乗車チケットじゃない!!」
「高額にも関わらず人気でチケットが中々取れないという
 あの伝説の馬車。
 しかも、最後尾のスィート指定席だと!!」

「西一族の湖畔沿いの道を経由するものの
 一度も止まらず南一族の村へ向かう特急だから
 西一族の村には止まらないし」

マツバの問題解決。

「全席高級食材を使った料理が
 ふんだんに振る舞われるからご飯の面も解決!!」

アヅチも空腹問題も。

何これ、へび呼ロイド
太っ腹なサービスすぎじゃない。

「二人には本当に感謝しているんだ。
 すごくお世話になったからね。
 ほら、もうすぐ馬車が通る時間だよ」

「「…………」」

むむっと、顔を見合わせる
アヅチとマツバ。

「おい、へび呼ロイド」
「え?
 あぁ、日当も払うっていう約束だったね。
 それは後日きちんと指定した口座に払うよ」
「ねぇ、へび呼ロイド」
「大丈夫だって、念書が必要なら
 おいら達きちんと書くよ。
 印鑑は無いけど、拇印なら押せるから」

「「へび呼ロイド!!!」」

アヅチとマツバの
強めの声が辺りに響く。

「今後ろに隠した
 その紙を見せろ」
「え?」
「私たちには気づかれないとでも思った」
「あ、うう」

はい、と
へび呼ロイドはおずおずと
その小さなメモ紙を差し出す。

それは、先程
みんなが見逃してしまった一枚の紙。

『旅に出ます、探さないでくださいby同僚』

「探さないで、だって?」
「どういう事?」

うっ、と急に声が小さくなる
へび呼ロイド。

「それは、おいら達にも分からない」

ぶわっと、急に目に光る物が。

「おおおお、おいら達の事
 嫌いに、ぐずっ、なっちゃったのかも。
 しばらくギャーズンの元に居て
 そっちが良かったのにってなったの、ぐずっ、かも、うう」

うわぁああああああん、と遂に泣き出す
へび呼ロイド。

「折角、助けたのにいいうわぁあああ」

「へび呼ロイドの事
 嫌いになったとは限らないじゃない」
「何か事情があるのかもしれないしな」

「そう信じたいよ。
 大丈夫、話し合えば、きっと分かり合えるよ。
 あははは、ごめん。おいら達としたことが
 取り乱しちゃって」

「おい、何で俺たちに頼らない」
「そうよ、それなのに
 無理やり村に返そうとして
 へび呼ロイドこそ
 私たちの事、嫌いになったの?」

「違うよ!!」

ふるふるとへび呼ロイドが首をキコキコ振る。

「おいら達、旅を甘く見すぎていたんだ。
 さっきの戦いもだけど
 アヅチは危うく窒息するところだったし、
 マツバにも危険な目に」

まさかの展開
ギャーズンによる
アヅチの丸呑み。

アヅチはちょっと思い出し寒気。

「もうこれ以上は迷惑をかけられないよ。
 おいら達の問題だ。おいら達で解決するよ」

その時、馬車の蹄の音が響き始める。
高級馬車9つ星が周回ルートを回って来たのだ。

うん、
うむ、と
頷き合うアヅチ&マツバ。

「俺、東一族の懐石料理って食べてないんだよな」
「そうね、
 温泉の無料入場券ももらっているし
 使わない手はないわね」

「……2人とも?」

「行こうぜ、へび呼ロイド」
「同僚達、何処へ行ったのかしら。
 早く追いかけた方が良いわよね」

「2人とも~!!!」

何故か、背景に咲き乱れる花。
降り注ぐ光。
照らし出される2人と一匹。

突然のスローモーション。

「と、それはともかく!!!」

空気を打ち砕くアヅチ。

「えぇえええええ?」
「何よ、色々台無しね」

「まずは、南一族の村に帰ろう。
 また旅に出る前に
 俺には解決しなくてはいけないことが」

馬車に向かい歩き始めるアヅチ。
それに続くマツバとへび呼ロイド。

「南一族は今、豆の収穫時期で」

うんうん。

「俺は、その作業をほっぽり出して
 旅に出ていた訳だ」

そう言えば、そんな会話もあったな。

「それを、俺の姉貴がマジで怒っているらしい」

ごくり、と
今までのどの瞬間よりも
真剣な顔を浮かべるアヅチ。

「超怖い、ウチの姉貴に
 まずは謝りに帰らなくては!!!!」


NEXT