浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

アルバート・コーツ チャイコフスキーのロメオとジュリエットは圧巻!

2006年08月28日 | 指揮者
アルバート・コーツを取り上げるのは2度目になる。当時は下手糞で有名だった倫敦交響爆弾を交響楽團に仕立て上げた大指揮者であるが、そんなことはとうに忘れ去られている。しかし、この「ロメオとジュリエット」の圧倒的な演奏を聴けばコーツといふ指揮者は忘れられない存在となるであろう。ただし、1928年の段階ではオケは未だ下手糞だ。

この録音が行はれた1928年と言へば、チャイコフスキーがこの曲の最終稿を世に出して47年後である。コーツは野生的なアッチェレランドや衝撃的なスビートピアノを多用し、突然のテンポの変化もストコフスキー並である。しかし、さすがにストコフスキーのやうな芸人の戯れには終わってはいない。むしろ、楽譜に対する徹底的な書き込みによりオケを統率していったメンゲルベルクのやり方に近いものを感じる。BiddulphのRob Cowanの解説は、このことについて、さらに次のやうに記している。

『スコアへの強情なほどのこだわりは、特に、フィナーレで登場する「愛のテーマ」前後での二元的な速度変動など、メンゲルベルクよりも極端である。』

初演から数十年、メディアが発達しておらず、純粋に楽譜でしか楽曲を知り得なかった時代、このやうに様々な解釈が、様々な大指揮者によって繰り返しステージで披露されては消えていった。1920年代と言へば、オケの作品の殆どの録音が、その曲の初録音であった時代でもある。

現代の指揮者が、技術的にはずっと優れた現代のオケを振ってこのやうな演奏を披露したとしたら・・・と、想像するだけで楽しくなる。馬鹿げた猿芝居と酷評する評論屋を尻目に、感動の渦が巻き起こるのではないか、と独り想像してにやにやしている。

盤は、英國BiddulphのSP復刻CD WHL014。


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