『地水火風空』

【TamuraTech Japan】のブログ

型にはめたらつまらない

2019-02-03 | 2019年


たとえば、初めてこちらに来室いただく方でも、

「来室の目的や動機は?」

…とお聞きすると、躊躇されることがあります。

私が開業した20数年前くらいの頃は、「整体」「マッサージ」「気功」など、割と抽象度の高いカテゴリー分けで済んでいました。
まあ、そもそも「整体」という言葉すらあまり知られておらず、カイロプラクティックのアジャストメントが「バキバキ!」というイメージでなんとなく怖れられていた(?)ような時代です。

しかし最近では、「痛み・しびれ専門」「腰痛なら〇〇に」「四十肩・五十肩に特化」のようなスタイルのウェブサイトを拝見することがよくあります。
これは、ターゲットを絞ることで曖昧さを無くして、心理的な訴求率を上げる効果がありますね。
「いま困っているコレは〇〇だ」→SNSで知人に聞いたり、検索したり→「あ、ここは〇〇専門となってる!しかもたくさんのリピーターがいるらしい」→問い合わせる…というような流れが、想像できます。

何かを伝える際に、できるだけ相手の方に考えさせない、その方のライフスタイルにピタッとハマるメッセージを使うことは、コミュニケーションの基本です。
特に本当に困っている時は、なるべく余計なことは考えたくないものですよね。
また、多くの方は、とりあえず目先の症状が無くなることを願って来ます。
そういう意味で、ウェブサイトなどをパッと見て必要な情報がすべてわかる媒体にすることは、基本的なセオリーだといえるでしょうか?

ボクも、一時期はこうやると見ていただく方にとって親切だし、そうすべきかな…と、模索したことがあります。
けれど、自分自身の中に生じる違和感が、それでは消えることがありませんでした。


『Tamuratic.』では、初回来室の際に、施術申込書に最低限の情報を記入していただいています。
そこに「来室の具体的な目的や動機」を記入する欄を設けています。

具体的といっても、たとえば「健康の保持」のようなザックリとした記述でも、こちらはかまいません。
どのような内容を書かれるかは、その方の自由なのですから。
ところが、ここで躊躇される方、とても迷われる方がいます。
たくさんのことを抱え込んでいたり背負い込んでいたり…自分なりに考えてきたけれど結論が出てないから書けない…たくさん症状が出ていて、でもどれも本当の動機や目的でないような気がする…などさまざまな理由が、そこにはあります。
こういう方が、『Tamuratic.』に来られる方は多い。

こうした方向性、施術所としての在り方ですので、多数の方が押し寄せるような場所にはなり得ません。
それはそうですよね、なぜなら「本人でもわからない」ような繊細なフィールドを対象にしているのだから。
こうしたアプローチでは自分の必要性と繋がらないし、多くの方にとっては、それこそ「ワケのわからない」場所に他ならない(笑)。

ボクは導入、入り口こそ大切と考えています。
ただ痛みをとってもらうため、上がらない腕を上げるため…というのなら、そういう処はちょっと調べればいまは無数に見つかります。
ですので、もはやそういうことをワザワザ声に出して言う必要もないだろうと。
もちろん、苦痛を和らげたい、疾患を改善したいという方も歓迎ではありますが…どちらかといえば、その背景、その背後にある何か、に意識が向くような方をこそ対象としたいかな、と思っています。


さて…

現代における催眠の、中興の祖ともいえるミルトン、エリクソン(故人)は、その生涯で自分の行っている心理療法を理論化・体系化することはありませんでした。
多くの文献、記録は残っていますが、それはクライアントとの対話記録やそれにまつわる逸話がほとんど。
いまにおいてエリクソン催眠のアプローチと呼ばれるものは、彼の教え子らによって体系化されたものです。

エリクソンのクライアントとの接し方は、理論や型に嵌めることのない、柔軟性に満ちたものだったといいます。
こういう場合は傾聴して、こういう時にはダブルバインドという技法を使って…というものではなかったのです。

東洋的にいえば〝融通無碍〟といえるようなスタイルを体現していた、のでしょう。
こうなると、「ターゲットを絞る」ようなスタンスではあり得ません。


スクールに来ていただく方は、この旨、重々ご承知のうえご参加ください
よろしくお願いいたします