梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之京都日記三巻目・いやはやなんとも

2009年11月29日 | 芝居
午前11時から『佐々木高綱』『一條大蔵譚』『封印切』『土蜘』『助六曲輪初花桜』の〈初日通り舞台稽古〉。師匠→自分→自分→師匠→自分と出番が続く、まさに怒濤の一日でした。

『佐々木高綱』。ウグイス笛は、次の『一條大蔵譚』の支度もありますので、前半と後半で担当者を分けました。私は、より師匠の演技に関わる前半を受け持ちますが、前後で鳴き方や雰囲気が変わらないように気をつけねば!
…師匠3回目の高綱は、扮装を一部前回と変えました。是非お確かめ頂きたく存じます。

『一條大蔵譚』は、昨日も予測した通り、南座の間口に合わせて段取りが結構変わりました。さすがに歌舞伎座の通りとはまいりません。腰元や仕丁はギッチリ混み混み! なので、いくつかある用事をすることになっていた方が、いざ舞台に並んでみますとどうにも動線が悪い。そんなわけで、これまで座っているだけだった私も、明日からご用事をさせて頂くことになりました。いきなり本番というのが誠に誠に怖いのですが、とにかく落ち着いてやるっきゃない…!

慌だしく化粧をし変えて『封印切』。だんだんと落ち着いてきています。衣裳を着て鬘をつけて(ほとんど先月と変わりませんが)、装置の中に身を置いてみて、やっと少し雰囲気がわかってきた感じ。しかし忠兵衛と八右衛門のやり取りを、お客様より近いところで拝見できるんですから、これくらい嬉しいことはありませんよね。自分の課題を早く克服して、この濃厚な世界にどっぷり浸りたいな。そうすれば、よりこの芝居の仲居らしくなれるて思います。

『土蜘』では、師匠のことはもちろんのこと、梅丸の太刀持もついつい気になってしまいました。

『助六曲輪初花桜』、こちらも『大蔵譚』以上の混み様! 今回は揚巻の道中はなく、揚巻、意休、白玉も本舞台に居並んだ景での幕開きですから、まさに〈女の園〉。ズラリ揃った光景が、浅葱幕の振落しで一瞬に現われるのですから、今からお客様の反応が楽しみです。
揚巻付き新造としての仕事の段取りも、反省はありましたがまずは無事にゆきホッとしていますが、これからも整理、修正があるやもしれませんから、油断なく怠りなく! 

お昼を食べる余裕もない一日でした。明日はすこしは時間のゆとりがあるかな?
あっという間に初日が来ます。大所帯の楽屋、師匠の仕事と自分の出番、時間との戦い、とにかく試練の京都。

まだ遊びに出かける気持ちは起きませんなァ…。