梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

井上ひさしさん、お疲れさまでした…。

2010年04月12日 | 芝居
9日、井上ひさしさんが75歳でお亡くなりになったという報を聞き、大変ショックを受けております。

井上ひさしさんは、「物語」の、「ことば(日本語)」の面白さを私に最初に教えてくれた作家です。
小学校6年でしたか中学1年でしたか、初めて氏の『ブンとフン』を読んで、なんといったらいいのでしょうか、それまで小説に対してもっていた固定観念をぶち壊されたような(それも痛快に!)感覚にすっかり虜になってしまいました。
それから、まさに貪るように『吉里吉里人』『腹鼓記』『手鎖心中』(読書感想文にこれを選んだ)『国語事件殺人辞典』『偽原始人』…。伊能忠敬を描いた『四千万歩の男』での、<愚直>に生きる主人公の姿には、今も励まされているのです。

そして数々の戯曲。
『国語元年』『シャンハイムーン』『イーハトーボの劇列車』『頭痛肩こり樋口一葉』『藪原検校』『天保十二年のシェイクスピア』『父と暮らせば』『もとの黙阿弥』『たいこどんどん』…
読んで面白く、観て楽しい“お芝居”。小説でも戯曲でも、パロディとか洒落とか、氏独自の遊びがふんだんに盛り込まれて、なおかつ、けっしてそれだけに終わらずに、今、日本人にとって大切なものはなにか、なにを失ったために今この日本になってしまたのか。そんなことがグッと胸に迫ってくる。

ずっと創作の最前線にいらしていただけに、闘病中との報道は存じていましたが、あまりに突然の訃報で最初は信じられなかった。
心より、お悔やみ申し上げます。
たくさんのものを頂きました。本当に有り難うございました。

合掌