梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之京都日記三巻目・初体験『封印切』

2009年12月03日 | 芝居
初めて『封印切』という狂言を拝見しましたのは、小学校5年生のときで、当時の成駒屋(鴈治郎)さんの忠兵衛に天王寺屋(富十郎)さんの八右衛門、松嶋屋(秀太郎)さんの梅川。おえんは桜彩さんでしたねぇ…。
以来いろいろな方のお舞台は拝見しましたし、近松座の巡業では師匠が治右衛門をお勤めになったりしましたが、私が実際に出演するのは11年目にして初めてでございまして、勤めさせていただいて、改めて知ることばかり、大変勉強になっております。

なるほどなァと思いましたのは、居並んだ仲居たちの体の向きが、八右衛門を避けるようになってるんですね。下手の木戸を開けた八右衛門の姿が見えたら上手向きに、続いて上手に座り込んだら下手向き。忠兵衛が2階から降りて来たらいったんはそちらの方に向き直りますが、その後の小判のくだりで八右衛門が悪口厭味を並べたてるとまた下手向きになる…というかんじです。
忠兵衛と八右衛門の芝居に反応しているのですね。単に体の向きだけでなく、八右衛門のセリフに対しましては、顔を背けたり俯きがちにしたり、いろいろと思い入れをするようになっておりまして、こういう点は、例えば『大蔵譚』の「桧垣」の腰元のように個々の芝居を控えてじっとしているものとはかなり雰囲気が変わりますよね。

なにしろ初体験なので、周りの皆さんに合わせていくのがやっと。自然に新町井筒屋の仲居になれるようには、まだまだ経験が足りません。今月はこの場の空気を掴むことが第一目標です!