梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

果ての月稽古場便り・1

2008年11月27日 | 芝居
今日から歌舞伎座12月興行のお稽古です。

私は、この度『高時』の<侍女>と『籠釣瓶』の<九重付き振袖新造>の2役を勉強させて頂くことになりました。本日はそのうちの『高時』の<附立>と、師匠がお出になる『石切梶原』の<附立>がございました。

『高時』は、平成10年9月歌舞伎座におきましての、橘屋(17世羽左衛門)さんのお舞台しか拝見したことがなく、まして師匠が暴君北条高時をお勤めになろうとも思っておりませんでしたので、言葉は悪いかもしれませんが、全くノーマークの演目でした。まったくお恥ずかしい次第で反省しております。…10年前といえば私は初舞台から間もない頃で、立役を勉強し始めたばかりの私は、もっぱら後半の天狗のくだりばかり見ておりました。
そんな状態ですので、この度のお稽古に先立ちましては、過去の上演ビデオを拝見しておき、その上で、この度ご一緒させて頂く先輩に段取りなど細かい部分をお教え頂いてから臨みました。セリフもひと言ですが頂きましたので嬉しゅうございます。
舞台滞在時間がわりと長いのですが、最近体重の増加にともない正座が“少々”つらくなっているので、あとで立ち上がるときが心配…。

この<附立>に先立ちまして、天狗のくだりの<抜き稽古>もございまして、立ち会わせて頂きましたが、8人(匹?)の烏天狗がみせる様々なシヌキや集団演技は、三味線に合わせての舞踊的な箇所もあり(といって所作ダテではないのですが)、皆々で合わせてゆく作業にしっかり時間をかけていらっしゃいました。弟弟子の梅秋も出ておりまして、ひと幕の見せ場が盛り上がるよう、頑張って欲しいものですが、なんといってもこの場面では、シンである高時自身に、激しい動きやアクロバティックな演技が続くので、師匠のお体が何卒ひと月無事に…! そればかりを祈ります。

続いての『石切梶原』は、天王寺屋(富十郎)さん久々の梶原平三景時。ご紋の<鷹の羽矢車>にちなみ、今回付けられた『名鷹誉石切』の外題には、「名も高し」の意をこめて…。
8年前に、天王寺屋さんのご指導で梶原を初めてお勤めになった師匠が、今回は初役で大庭役。私は黒衣の後見で、当然ながらこれも初めて。
とはいえこの演目には馴染みがありますので(『高時』との上演頻度の差といったら!)、段取りなどでまごつくことはございませんでしたが、やはりやってみないとわからない<感覚>というものはあるもので…。

それにしましても、今日は歌舞伎座ビル地下のお稽古場だったんですが、『石切梶原』の出演者&後見と、義太夫さんお囃子さん長唄さんなど、ゆうに70人はいたであろうその熱気! とても暮れの公演のお稽古とは思えませんでしたよ。