梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

<音>に御注目

2005年08月28日 | 芝居
本日は『歌舞伎フォーラム公演』の<総ざらい>。「櫓のお七」「景清」を振付・指導下さった藤間勘十郎師も、わざわざ京橋の稽古場にお越し下さり、有り難いことでございました。
今日初めて、第一部の「歌舞伎の美/効果音」のお稽古がありました。「松王下屋敷」では松王丸を演じられる中村又之助さんが司会を担当し、歌舞伎で使われる<音>の様々をわかりやすくお伝えいたします。この「歌舞伎の美」の中で、私が「景清」を踊らせて頂く趣向になっておりまして、踊りの冒頭と、幕切れに使われる効果音<雨音>や<雷車>を、客席から選ばれたお客様数名に、実演して頂くことになっております。御興味のおありの方は、是非是非、立候補して下さいませ!
<音>といえば、本公演は役者はもとより、演奏家、スタッフ共々、最低限の人数しかおりません。ですので下座囃子や、舞踊の地方は、全て録音したものを使っております。今回で言えば「景清」の常磐津節、「櫓のお七」の義太夫節と下座、「松王下屋敷」の幕開きの下座が生演奏ではない、ということです(「松王下屋敷」での義太夫節と、一部の鳴り物は生演奏です)。
録音された音源は、音響さんの操作で舞台に流れることになりますが、歌舞伎での音楽は、非常に<キッカケ>を大切にするものでして、セリフや動きと密接にかかわっております。ですので、ひとつ間が外れると、お芝居の雰囲気や、演じる人のイキを台なしにしかねないので大変です。今回は、歌舞伎の舞台にはじめて接する音響さんなので、しっかりと段取りを打ち合わせしております。とくに「櫓のお七」では、決められたセリフの間に、いわゆる<フェイドアウト>で下座を消すところが頻繁にあり、またお七の振り、見得をしっかり見ないとタイミングが計れないところも沢山。さらには同時に複数の音源を重ねて流すところもありますので、なかなか御苦労なさっている様子でした。
明日、最後のお稽古がございますので、しっかり固めておきたいと思います。

「景清」では、線の太い男を描けるように。「櫓のお七」では、中村京妙さんのお七の邪魔にならずに、お七の可憐さ、美しさを引き立てることができるように。「松王下屋敷」では、菅原道真公の正室として、中村又之助さん、中村京妙さんの松王丸夫婦が、心から忠義を尽くそうと思っていただけるような品格を出せるように。
大変なことは重々承知で、初秋の舞台を精進してまいります。