梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

若き観客

2005年05月10日 | 芝居
本日の昼の部、ニ階席は全席、女学校の「団体」でした。おそらく歌舞伎とはほとんど無縁の普通の女の子たち。セーラー服の紺色にうめつくされた客席を見て、「なるほど、道理で幕間に黄色い声が聞こえてきたはずだ」と納得。
ほかの芝居はいざしらず、『芝居前』の一幕では、これは芝居というかイベントのようなものですから、女学生も気楽に見ることができたのか、上演中もザワザワがおさまりませんでした。まあこれはいたしかたないことで、なにしろ花道に並んだ男伊達の面々には、「プライド」の染五郎さん、「武蔵」の海老蔵さん、そして「今、会いにゆきます」、さらには今日マスコミでとりあげられたばかりの獅童さんがいらっしゃるのですからね。「歌舞伎を知らなくても知っている歌舞伎役者」の勢ぞろいに、席を立ち上がって顔を見ようとしたり、周りの友達とヒソヒソコソコソ盛り上がっているグループなど、実に様々な反応があって、とても面白かったです。最後の舞台客席一緒の「手締め」でも、楽しそうに参加してくれました。
今日に限らず、学生さんの歌舞伎に対する反応というものは、役者として大変興味深いものです。なまじの予備知識がないぶん、自分達の感性で、笑ったり、驚いたり、あるいはしらけたり。
国立劇場では毎年六、七月は「歌舞伎鑑賞教室」と銘打ち、「歌舞伎の見方」という解説と、短いお芝居を一本上演しておりまして、これには私たびたび出演しておりますが、フンドシ姿で出たら大笑いされたり、トンボを返ったら歓声があがったりと、そのストレートな反応に思わずタジタジになった経験があります。
口惜しいのは眠ってしまう学生さん。たしかに劇のテンポはドラマや映画に比べればゆっくりですからね…。しかしながら、折角の機会です。歌舞伎とはどんなものなのか、しかとその目で見てから、「楽しい」「つまらない」を判断して頂きたいと、私個人としては考えます。
そういえば、やはり「歌舞伎鑑賞教室」で、トンボを返ったらカツラが吹っ飛んでしまい、満場の爆笑を誘った思い出は、できれば忘れてしまいたい……。