空が白い。
雪雲とは何かが違う重い白だ。
それが一面を覆っているので、白い中にいるのに暗い。
暗さの中に白で覆われた不気味な無人の建物だけが建っているように見える。
天気予報では午後から雨の表示だったが、未だその気配は無いが代わりに白い闇が少しずつ濃くなっているように感じる。
7~8月の千島海流が生み出す低い海水温が空気を触れあって発生する、じっとりと重い海霧のことを、この地特有の言葉で「じり」と云う。
霧のもう一段階濃い霧といったところだろうか。
全ての音や夏の日差しさえも吸い取り、人の気配さえも消す。
窓から息を潜め、何かに見つからないように白い闇に覆われていく街を眺める。
「じり」はアスファルトの路面を僅かに黒く染め始めた。
雨でもないくせに、少しずつ 少しずつ