治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

環境調整って何それ食べれるの?

2011-07-31 06:18:00 | 日記
320席の会場で320人のお客様。
というわけで私は舞台の袖で岩永先生の第一部を聴く事になった。

私は21世紀の先進国に暮らすヒトとしてはかなり野生動物に近い。
親知らず四本あるし、怪我も病気もあっというまに治るし、内臓丈夫。
野性的な勘が鋭いし、人生のモットーは「専守防衛」だけど、攻められたときの戦闘意欲も(以下略)。
もう一つ野生動物的な特徴として「暗くなると眠くなる」っていうのがある。
だから節電中のメトロの駅におりたとたん眠くなったりする。
まあだから睡眠障害とか起こさないんだろうけどね。

そういう私なので、緞帳の陰で眠らないように適当に身体を動かしながら聞いていたが
岩永先生ってこんなに講演お上手だったっけ? っていうほどまとまりのいい講演だった。

私は行きがかり上、感覚統合とか自閉っ子の身体機能については耳年増になっているが
それでも目新しい情報があったし
二時間という時間の制限の中で不足なくわかりやすく濃い内容でした。

世の中に感覚統合の本も増えたが、牛乳パック系の本は読んでも手ごたえがない。
牛乳パック系の本っていうのは、身体づくりがなぜ必要かのWHYに触れず
「使用済み牛乳パックを切ってつなげてこういうもの作って子どもたちにこう遊ばせましょう」みたいな
HOWの情報ばかり書いてある本だ。私はそれを「牛乳パック系感覚統合本」と呼んでいる。
「これは感覚統合っていうより図画工作の本だな」と思いながらまあ何冊か読んでいる。
必要とする人もいるんだろうし。私は作んないけど、そういう本。

たぶん現場で、その場をやりすごすには便利な本なんだろうけど
あれでは「なぜ身体作りが必要か」は伝わらない。
年に三冊くらいしか本出さないからこそ
それなりに「仕組み」を伝えるものしか作りたくないのよ、私は。

昨日のエントリ(↓)になりさんがしてくださった米なんかは、そういう状況を表しているんじゃないのかな。

まあともかく。

昨日は新潟や福島で豪雨。
横浜は晴れましたが、何しろ飛行機で遠方からいらっしゃる方もいるので、主催者の方は心配していました。
でもまあやはりほとんどは地元での保護者・支援者つながりでいらした方が多いです。

先進地域と呼ばれている横浜。
医療資源にも「比較的」恵まれていて
診断がついて、一生治らない障害だけど環境調整が大事だと習って
環境調整に励む人は多い。そしてそれはとっても大事なこと、必要なことだ。

でもその子をアセスメントすることなしに本に書いてあるとおりの典型的な環境調整をしてもあんまり事態は改善しない。
そしてアセスメントの軸として、感覚・運動の問題はとても大事。
先進地域って案外これを見逃しちゃうんだよね。

そして環境調整して比較的状態が安定しても
環境調整だけでは「発達援助」にはなかなか結びつかない。
もともとの神経が発達したわけじゃないので、安定していても環境変わると崩れるよね。
その限界を知る人が多かったからこそ
三時間の長丁場にもかかわらず中座する方の極端に少ない会だったのでないでしょうか。

感覚・運動の問題っていうのは広い意味での「学習」の基本。
「コミュニケーション」の基本。
岩永先生のそのメッセージが、一人でも多くの方にストレートに伝わったことを祈ります。

岩永先生は飛行機の時間が迫っていたので終了後早々に会場を発たれましたが
私は残って本を買ってくださった方にオリジナルスタンプを押したり、おしゃべりしたりしましたよ。

主催者の方もおっしゃってましたが
晴れ晴れとしたお顔で会場をあとにする方が多かったですね。

質問もものすごくたくさんありました。
やはり問題行動の抑制にご興味がある方が多いですね。
もちろん切実な問題でしょう。

けれども今、岩永先生たちが実践している現代の感覚統合は
神経に働きかける活動なのだと
神経の発達を促す活動なのだと
それが伝わっていればよいな、と思います。

東日本大震災で被災したグループホームへの募金集めも行いました。

これは募金してくれた人へのお礼のうちわ。


作業所に発注して揃えたそうです。
これも牛乳パック。利用者さんたちが紙すきしたものです。
色とりどりできれいでした。私はこの色をチョイスしました。

お越しいただいた皆様
本を買ってくださった皆様
あれだけの大きな会を見事に仕切ったNPO法人ゆうの風の皆様
岩永先生、瀧澤先生
ありがとうございました!