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寡黙堂ひとりごと

詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です花も酒も好きな無口な男です。

唐宋八家文 柳宗元 封建論 七ノ五

2014-06-19 09:03:52 | 唐宋八家文
封建論 七ノ五
 或者曰、封建者必私其士、子其人、適其俗、修其理。施化易也。守宰者苟其心思遷其秩而已。何能理乎。余又非之。周之事跡斷可見矣。列侯驕盈、黷貨事戎。大凡亂國多、理國寡。侯伯不得變其政、天子不得變其君。私士子人者、百不有一。失在於制、不在於政。周事然也。
 秦之事跡亦斷可見矣。有理人之制、而不委郡邑是矣。有理人之臣、而不使守宰是矣。郡邑不得正其制、守宰不得行其理。酷刑苦役、而萬人側目。失在於政、不在於制。秦事然也。

或る者曰く「封建は必ずその土(ど)を私(わたくし)し、その人を子とし、その俗に適(かな)いその理を修む。化を施すこと易(やす)きなり。守宰は苟(いやし)くもその心にその秩(ちつ)を遷(うつ)さんと思うのみ。何ぞ能く理(おさ)めんや」と。
余またこれを非とす。周の事跡断じて見るべし。列侯驕盈(きょうえい)、貨を黷(けが)し、戎(じゅう)を事とす。大凡(おおよそ)乱国多くして、理国寡(すくな)し。侯伯その政(まつりごと)を変うるを得ず、天子その君を変うるを得ず。土を私し、人を子とする者、百に一有らず。失は制に在りて、政に在らず。周の事然るなり。
 秦の事跡も亦た断じて見るべし。人を理むるの制有りて、郡邑に委ねざること是なり。人を理むるの臣有りて、守宰を使わざること是なり。郡邑その制を正すを得ず、守宰その理を行うを得ず。酷刑苦役して、万人目を側(そば)だつ。失は政に在りて、制に在らず。秦の事然るなり。


土 領土。 化 教化。 秩 官位。 驕盈 増長する。 貨を黷し 財貨を浪費すること。 戎 戦争。 

 ある人が言った「封建によって立てられた諸侯は必ずその領土を私有物として守り、その領民は我が子の如く慈しみ、習俗にかなった政治につとめる。だから教化しやすいのである。だが郡県における太守や知事は分不相応にもその官位の上がることばかりを考えている。どうしてよく治めることができようか」と。
 私はこれを否定する。周の事跡によって明らかである。列国の諸侯は増長して財貨を浪費し戦争を仕事にしていた。およそ乱れた国が多くて、きちっと治まっている国は少ないありさまだ。侯爵・伯爵の大諸侯は政治を改めることができず、天子は諸侯を代えることができなかった。領土を守り、領民を慈しむ者は百に一つもなかった。その失敗の原因は封建制にあって、政治にあったのではないのだ。周の事跡はこの通りである。
 秦の事跡もまたはっきりと見てとれる。人民を治める制度はあったのに、郡県に委ねなかったのがそれである。人民を治める臣はいたのに郡の太守と県の知事を働かせなかったのがそれである。郡県はその制度を正しく運用することができず、郡の太守や県の知事はその政治を行うことができなかった。苛酷な刑罰と苦しい労役に人民は皆目を剥いて怨んだ。この失敗は政治にあって、制度にあったのではない。秦の事跡はこの通りである。

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