夜中に小用に起きたりすると
そのまま寝そびれて目が冴えてしまうことがある。
そんなとき何気なくテレビをつけて
再び睡魔が訪れるのをボンヤリと待つのだが
ついつい見入ってしまって寝不足になる番組がある。
ＮＨＫ・ＢＳの『街角ピアノ』である。
放送の時間帯がバラバラなのでよくは知らないが
駅や空港など街角にピアノを設置して
通りがかりの人に自由に弾いて貰うストリートピアノだ。
相手がピアノだけに腕に覚えがある人が多いが
それぞれ演奏に個性やこだわりががあるし
ピアノを始めたきっかけにも様々な人生模様があって
興味深くてついピアノの音色に耳を傾けてしまう。
先日の放送は渋谷のマークシティだった。
この黒ずくめ紳士はどこかの会社の偉いさんで
何と５０歳でピアノを始めたと言う。
それにしてはなかなか見事な堂々とした演奏ぶりで
讃美歌の美しいメロディーを気持ちよさそうに弾いておられた。
ピアノ教師だけでは生計が成り立たず
渋谷でアルバイトをしながら合間に弾きに来る女性もいた。
ピアノを弾くのが楽しくて仕方がないこの子は
お母さんと見ていた動画の演奏が大のお気に入りで
驚くほど達者な指使いでの演奏だった。
ピアノを始めるには早ければ早いほど上達も早いと言うが
どんな世界的なピアニストになるのか楽しみだ。
方や自分の才能に限界を感じて二十歳でピアノの道を諦めたが
奥さんがコツコツ働いてピアノを買ってくれたことに
感謝しつつ再チャレンジを決意した男性もいた。
カップルで連弾に挑む男女もいた。
彼氏は韓国人、彼女は渋谷のクラブで働くホステス。
ピアノが弾ける彼氏が大の自慢で国際結婚も考えているとか。
うーん、人それぞれ、ピアノもそれぞれ。
正直、これほどピアノを弾く人が多いとは思わなかった。
ピアノは楽器であると同時に味わい深い「人生模様」であった。