Kantele-Suomiho-Fuga

フィンランドと音楽(カンテレ、音楽療法)をキーワードに!

現代能をみる

2008-05-30 23:21:11 | お勧めの・・・
<ふたりのノーラ~『人形の家』による現代能>にでかけた。

『人形の家』はノルウェーの作家・イプセンによる戯曲。「主人公ノラは、夫に猫かわいがりされるほど大切にされている妻。ある事件を通して、次第に自立した女性として成長していく。夫が対等な人間として、絶望や悩みを共有し喜びを分かち合える存在ではなく、また一人の人間として自分を見ていないことに絶望し、夫の制止を振り切り、家を出る」というあらすじ。

現代演劇の俳優と能楽師による舞台。リアリズム劇の典型といわれる『人形の家』に、抽象的な能を取り入れることで、より味わい深いものになっている。ふたりのノラは、能楽師のノラと女優のノラ。古典と現代の融合が、ノラの心の変化、新しい女への成長を見事に表していた。

能はウン十年前に初めてみてから今回が2回目。私たちの日常からみれば、まるで《静》の世界。動きがなさそうで、実は凛とした和の真っ直ぐなものを感じる。ご一緒した理学療法士は、静の中にある動=身体や筋肉の動きに感心していた。私はやはり音楽。鼓の打ち方による音や声の高低、長短、強弱、笛の息づかいで舞台の様子や能面の表情がかわるすごさ。つまりそれはみている私の受け取り方でもある。そして地謡が心の内面をうまく表現していた。

主役の 水野ゆふさん が輝いていた。静に対して動、時にハッとするほど激しい動き。和の押し殺した感情に対して洋の明るさ。二人の演者がそれぞれの役割を見事に演じ、終わってみればノラはイプセンのノラとして完結していた。公演は、過去にノルウェー・イプセン没後100年記念フェスティバル、スエーデン、イギリス等でも行われ、今年もまたノルウェーで上演される。