鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

シンガポール静岡県事務所・日本文化を伝える民間の取り組み視察

2016年02月05日 | 議会活動

平成28年2月5日(金)

 

 静岡県の東南アジアを担当する駐在員事務所を訪問し、管内の状況について担当者からお話を伺いました。

 静岡県シンガポール事務所は、プラザ合意(1985年)以降の急激な円高に伴い、県内企業の海外進出を支援することを目的として、1988年に設置されました。

(静岡県シンガポール事務所長から管内の状況を聞く)


 ここでは、経済分野の活動の他に、観光、文化、教育分野の交流促進を通じ、本県の活性化に寄与することに取り組んでいます。

 現在県から所長と副所長が派遣され、現地職員を2名採用しながら運営されています。所長は女性で経済畑の経験が長く、今回初めてお話を伺いましたが、大変見識の広い素敵な職員でした。

 最初に事務所の取り組み状況から、各分野における現状と課題について報告を受けました。具体的には、管内の経済動向や所管の範囲について。経済関係では、県内企業の進出支援、県産品の販路開拓支援。観光関係では、観光展出展やFIT向けセミナーの開催について。その他では、重点国でのメディア広報、教育、文化交流支援についてなど、データや事例を参考に報告をしていただきました。

 私は、ほぼ毎年この地に出向き事務所の取り組みや課題について調査してきましたが、アジア全体のめまぐるしく変化する状況に大変驚いており、支援すべき行政が変化について行けるのか考えさせられることも多々ありました。

 例えば、今までは経済産業省の海外との経済関係を調査し道しるべとなるJETROと密接な関係を保つために、同じ事務所内に県事務所を設置していたものを、その関係は保持しつつ、外部に出て県の独自性も模索し始めたこと。その取り組みを観光面に例にとると、地元のフリーペーパー編集者の協力を求め、情報発信に静岡県の独自性が表れ、シンガポール国民から静岡県に対する関心度が増したなど、ややもすると護送船団方式が常とされてきたものが、他の都道府県より一歩前に出て、他県が本県に事例を参考にしていることなどが挙げられます。

(タイの雑誌に載った静岡県の紹介)


(シンガポールのフリーペーパーに載った静岡県の紹介)


 その他、県内から進出した企業の雇用支援や農林水産物の販路拡大も単なる展示会の開催だけでなく、どうしたら市場に食い込めるかなど一歩踏み込んだ支援策を講じています。

 新しい取り組みでは、高校生の国際化に対応するため、教育旅行(修学旅行を兼ねた)を実施し、県内から東南アジアに進出した現地の企業で職場体験をするなど、外から日本企業を見る目を養うことを通じて、国際化や職業観の育成にも取り組んでいました。

 かつては「中国プラスワン」といわれた時期がありましたが、「タイ プラスワン」など中国から軸足が他のアジア諸国に移り、更にその周辺諸国と関わることでリスク分散や経済効果の向上を狙った取り組みなど、めまぐるしく情勢が変化していました。

 その結果、県が取り組む海外戦略も柔軟に対応することが求められてくることも予想されます。このことは、県庁内で報告を聞いているだけでは理解できなかったかもしれません。

 

 次に、シンガポールの一般国民に日本の文化、特に食文化を伝える民間の取り組みについて、関係者からお話を伺いました。

(シンガポールの一般庶民を相手に和食を売る取り組みの民間企業から説明を聞いた)


(大阪のまちが、シンガポールの商業施設モール街に出現)


(和食を現地の一般国民が買いやすい環境を提供する)

 

 アジアから日本を訪れたり日本製品を購入する人たちは、例えばこのところ中国人の「爆買い」が有名ですが、まだまだ「富裕層」と呼ばれる人たちがその主役です。これを一般の人たちまでに拡大するためには、「良いものをより求めやすい価格で提供する」ことが重要です。

 先進国のシンガポールでも一般国民は日本に行ったり日本製品を簡単に購入できるわけではあります。

 今「日本食ブーム」といわれていますが、我々日本人が本家として日本食と称するものは、外国に行って同じ名前でも日本食として認めがたいものがあります。

 例えば、寿司は日本人の間ではイメージに大きな差はありませんが、海外で提供される寿司は「独自の寿司」として進化し、たまたまそれを海外で食べる日本人にとっては、「本物」と「偽物」(もどき)の差を感じることがあります。

 海外の富裕層が日本に来て「本物」を体験し、感激することがあると聞きます。しかし多くの外国人は日本に来ない限り、本物を体験することはありません。

 現在、TPP問題もあって、「強い農業」を目指し輸出などに関心が高まっています。日本の農産品は「安全と安心」、それと味や味覚などの評価が高いことは言うまでもありません。確かに富裕層はこの付加価値の高いものは購入するでしょうが、一般の庶民には手が届かないものも少なくありません。

 「もの」は「売れてなんぼ」ですから、「ニーズ」に応えるものが売れていくことになります。何が売れるのか。これを調査することが「マーケッティング」と呼ばれる市場調査です。その結果を踏まえて農産物も、あるいは工業製品も作らなければなりません。これは商いの基本なのですが、この基本がわからない状況で日本から海外に出て行く製品が売れ残り、一方で「なぜこんな良いものが売れないのか」と嘆く日本の姿こそ是正されなければなりません。

 民間企業だからこそ「中途半端なきれい事」は言わず、現実を突きつけられました。

 改めて相手の国民が「良いものをより求めやすい価格で提供する」ことについて、考えさせられた視察でした。

 まだ私自身が受け入れがたいことなのですが、日本人にとって「本物」ではなくてもそれに近い「本物」をどこまで実現できるか、一般庶民が受け入れられる「売れる」ものづくりをどう目指すべきが、皆さんと考えていきたいと思います。

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