常識について思うこと

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組織の膿とがんとの見極め

2011年02月15日 | 社会

相撲協会の八百長問題で、全容解明が叫ばれています。こういう問題について、妥協なく調査を進め、けじめをつけるというのは、もちろん大切なことだと思います。ただこの問題、個人的には全容解明などというのは、ほとんど無理なのではないかというのが実感です。

この問題の解決方法は二つで、一つは全容解明を求めずに適当な線で許すか、もう一つは徹底的な全容解明をさせて、それによって協会を潰すということではないかという気がしてなりません(私個人の立場は、相撲にさほど強い思い入れもないため、前者に近いものです)。

全容解明というのは、要は情報公開です。しかし、情報公開をしないことで生き永らえてきた組織というのは、情報公開をしてしまったら、一旦は死ぬしかないのではと思うのです。

「膿を出す」という表現があります。情報公開をして膿を出し、次の体制で組織を回していくということが可能なケースもあるでしょう。しかしその場合、その膿が「膿レベル」でなければなりません。そうした問題を先送りにして、「情報公開をしないことで生き永らえる」という選択をした組織は、その膿と組織が一体化してしまい、それがもはや「膿レベル」ではなく、大きな「がん細胞レベル」にまで発展してしまいます。情報公開をしないで生き永らえるというのは、それを社会が許さない限り、結果として、その膿をがん細胞に育ててしまい、体全体がそれに蝕まれるようなかたちになるのではないかというのが、「そういう組織は一旦死ぬしかない」という言葉の真意です。

現在、相撲協会を揺るがしている問題は、随分昔から疑問視されてきたものであり、もはや「膿レベル」ではなく、とても大きな「がん細胞レベル」にまで発展してしまっているのではないかという気がします。そういう意味で、この問題は、どこか適当な線で社会が許す(妥協する)か、あるいは協会を潰すかの二者択一になっていくのではないかというのが、私が感じるところなのです。

ところで、こうしたことは、相撲協会に限らず、あらゆる組織について言えることでもあるでしょう。

先日、上海に行ってきました。中国では、当局による情報統制が厳しく、ある特定のインターネットサイトにはアクセスできないようになっていました。そのせいで、私自身、ネット生活には大変苦労をしました。おそらく、チベット問題や尖閣諸島での漁船衝突事件など、インターネット上の情報を統制しないと、国内の世論をコントロールできなくなってきたということでしょう。

つまり、中国政府は、情報公開をしないことで生き永らえているわけです。これが許される時代というのはあります。今までは、そういう時代であったと言えるかもしれません。しかし、情報化が進み、同時に国家が抱える問題が深刻化すればするほど、情報公開が求められるフェーズに移行していくことになるでしょう。つまり、中国政府の情報公開をしないという行為は、次第に社会や世界から許されなくなり、同時に当局が膿を出すという選択をしない以上、それをがん細胞に育てるという選択をしているということになるわけです。そういう意味で、中国という国家を過大に評価することなく、冷静にその実力や限界を見極めるというのは、とても重要なことであると思います。

さらに、同じ国家という意味では、日本についても同じことが言えるでしょう。既存の組織が、組織として成り立ち続けるためには、数多くの公言できない事情があるとみてよいと思います。私自身、日本の国家にも、大いにそうした事情があるものと考えています。それは事の善悪ではなく、その組織が抱える限界を知るという意味で、とても大切なことだろうと考えます(「与件として考えない天皇制」等参照)。

無条件、情報公開をせよということではありません。それをしなくても許されるケースや時代というのがあるでしょう。ただし、これからの情報化社会というのは、とても多くのことについて情報公開が求められる時代の到来を意味しているわけです。組織には、それが成り立つ背景があり、存続し続けるための公言できない事情が多々あるものです。これからの時代、それをそのままにしておくことが難しくなるということだと思います。

私たち個人は、いろいろな組織に所属をしますが、それに縛られ続けるものではありません。それぞれの立場から、そうした組織の限界や問題について、それらが膿なのかがん細胞なのかを冷静に見極めながら、これからの新しい組織を創っていく、あるいは新しい時代を切り開いていくということが、何よりも重要なのだろうと思うのでした。

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