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国家信用と貨幣システム

2011年11月05日 | 社会

最近、ギリシャの財政危機に関する報道が多くなされています。いろいろな見方があるとは思いますが、とりわけギリシャという国は、財政破綻してもおかしくない様々な問題を抱えていたという見方があるようです。それはそれなりに的を射ている指摘なのでしょう。

ただ私は、今回のギリシャ問題を、単にギリシャの特殊な事情だけで説明するのではなく、地球上のあらゆる国家に対しても通じる問題をも包含した視点から眺める必要があるのではないかと思っています。それは、国家の信用に基づいて成り立っている現在の貨幣システムの限界です。

人類は長らく、金や銀といった貴金属に価値を置いて、これらを交換することで経済を回すというかたちをとってきました。それはつい最近まで、ブレトンウッズ体制という金本位制でも行われていたものであり、具体的には、金1オンスを35米ドルに固定し、その米ドルに対して各国通貨の交換レートを定めたものでした。この時、日本の円は1米ドルあたり360円とされていました。この制度に基づけば、各国通貨の価値は、すべて金によって測れるのであり、各国で流通している貨幣は、すべて金によって裏付けがとれる状態にあったとも言うことができるわけです。

しかし、1971年のニクソンショックにより米ドルと金の兌換は停止されました。これによって、米ドルは金本位制ではなくなったわけです。米ドルの金兌換停止に続いて、米ドルと各国通貨間も変動相場制になりました。現在では、各国通貨同士や通貨と金とを結ぶものが、各外国為替市場であったり、金取引市場であったりするのであり、各国通貨は、謂わばそれぞれの国家の信用によって成り立つ状態になったわけです。このことは、それまでの貨幣が金によって裏付けされていたものであったのに対して、国家の信用によって裏付けされた貨幣へと様変わりしていったことを意味します。

今回のギリシャの問題は、その国家財政が破綻するということから、国家信用が失墜するために引き起こされる通貨危機にも直結するわけです。

ただし、国家の信用不安なるものが、ギリシャだけで起こっているとは言い難いのが現状です。近頃、盛んに言われる「歴史的円高」は、日本の円が高く評価されているというよりは、アメリカをはじめとした諸外国の財政状態が思わしくなく、相対的に円の価値が上がっているだけと言えるでしょう。私たち日本人は、日本の財政状態が良くないことくらいよく知っています。それにも関わらず、これだけの円高になるというのは、その良くない日本以上に財政状態が芳しくない国家が増えているということです(日本国債は、ほとんど海外で売れていないため、全体的な流れとしての「世界不況」の影響を受けにくいという事情もあるのかもしれません)。そのマシだとされている日本の国家財政も、かなり大変なことになっています。これを健全化するというのは、極めて難しいことでしょう。言い換えれば、それだけ世界中の国家、あるいは国家財政に対する信用不安というのが、大きく広がってきていると言えるわけです。

私は、国家や国家財政に対して、過度な期待をしてはならないと考えています。もっと言えば、国家の信用に基づいた貨幣システムというのは、早晩、限界を迎えるのではないかと思っています。例えば、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)議長だったグリーンスパン氏は、金本位制を主張する人物としても有名です。おそらく彼は、国家の信用に基づいた現在の貨幣システムが、早晩破綻するであろうことを見通しているのではないかと考えます。そして、仮にそうだとすると、彼と私の見解は一致していることになります。

ただし、次の貨幣システムのかたちについては、彼と私とではビジョンが異なります。私は、けっして金本位制になるとは思っていません。私が考えているのは、国家ではなく個人の信用によって成り立つ貨幣システムです。これは、まったく新しい考え方であり、その実現には高度に発達したITネットワークが必要になります。その内容については、またいろいろと説明書きを要するので、ここでは詳述を避けます(「個人信用の経済システム」参照)が、いずれにしても、国家の信用によって成り立つ現在の貨幣システムには、過度な期待は禁物だろうというのがポイントです。

国家は大事です。先人たちが作り上げてきたこの枠組みには、その歴史の分だけの重みがあります。そして、それに基づく貨幣システムを無視することはけっしてできません。しかし、それを妄信することなく少し距離を置いて、その限界と次のかたちを考えるということも、同じくらい大切なことではないかと思うのです。

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