常識について思うこと

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信頼に値する国家

2010年03月29日 | 社会

国家なるものに、秘密がないとは言いません。国家とは、各々がそれぞれの歴史のなかで、数多くの複雑な事情を抱えつつ生まれたものです。その形成過程においては、とても深刻な問題もあったはずですし、それを隠したり、偽ってみたりということがないことの方が、むしろあり得ないだろうと思います。

しかし、それが即ち、「国家は嘘をついてよい」ということには繋がりません。多くの人々が深い関わりを持つ国家が、誠実であるべきことは自明の理でしょうし、それがこれからの地球規模の問題解決にも不可欠であろうと考えます。然るに、国家運営に関わる方々は、常に誠実な言動が求められるのであり、それが国外においては信頼を得られるようなものでなければならないと考えます。

そうした意味で、日本という国家の運営に関わる方々が誠実に行動しているか、国外から信頼に足る発言をしているかは、極めて重大な問題です。そして、それはあまり胸を張って誇れるような状況にはないため、日本人として、そのような自国の問題を差し置いて、一方的に他国について論じるのは、あまり好ましくないだろうと思います。しかしそれでも、ここ数日、毒入りギョーザ問題を巡り中国に関してなされる報道は、とても看過できるものではないとも感じるのです。

中国の毒入りギョーザ問題に関しては、既にこのブログでも触れた通りです(「「信頼」は自分の問題」参照)。本問題については、基本的に「起きてしまったことは仕方ない」と考えます。ただ一方で、一旦、事が起こってしまった以上、これに対してどのように対応するかが、非常に大きな分かれ道であろうとも思います。私なりには、事件発覚時点で、中国側の説明になかなか納得できない点が散見されながらも、今後の当局の対応に期待したいという思いがありました。

それが今回、完全に裏目に出たように思います。以下、読売新聞からの抜粋です。

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その発表では、呂月庭容疑者が事件に使った注射器やメタミドホスを入手したのは、「2007年7、8月」で、同年10月1日、初めて冷凍庫でメタミドホスを注入した後、10月下旬と12月下旬にも同じように注入したとしている。

ところが、08年2月に、福島県内の店舗で同じ有機リン系殺虫剤ジクロルボスが検出された天洋食品製のギョーザは、前年の07年6月に製造されており、一連の薬物混入を、呂容疑者の「単独犯」とする中国公安省の見解では説明がつかない。これについて警察庁幹部は「一方的に発表内容が伝わって来るだけなので、検証しようがない」と困惑した様子で話した。

中国側は、さらに2本の注射器について「工場内の通路脇の下水道内に捨てられていた。今月21日に発見した」と発表したが、「事件から2年もたって、いきなり下水道で見つかったと言われても……」と、別の同庁幹部は首をかしげた。
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私としては、中国の誠実な対応を期待していましたが、今回の中国側の発表は、またしても腑に落ちないことだらけです。

中国というのは、広く知られている通り、共産党の一党独裁体制で成り立っている国家です。国内においては、情報統制が強く効いていますし、多少、不自然な説明がなされたとしても、それを国民に押し付けるだけの力があるのでしょう。ただ、そうした行為を国家を跨いでしているとするならば、それは大変心外です。今回の中国側の説明は、日本側から見た時に不自然な点が多く、それらの点については、きちんと真相が解明されなくてはなりません。

少々、論点が変わりますが、今回の中国側の説明が、不自然であるにもかかわらず、彼らにこうした発表を許してしまっているのには、これまでの日本の態度にも責任があるかもしれないと考えます。

日本は、これまで中国政府やその関係者が主張することを、(論拠が乏しいものを含めて)あまり明確に否定するようなことがなかったように思います。これは、日本の良いところでもあるでしょう(「「No」と言えないことへの誇り」参照)。しかし一方で、そのことによって、「日本はいい加減な話をしても受け入れる国」という認識を生んでしまっているようにも思うのです。特に歴史の問題については、中国をはじめとした一部の国々に、そうした日本のイメージを定着させてしまっている可能性がある点、もしかしたら、私たち自身、真摯に反省すべきなのかもしれません。今回の件に限って言えば、少なくとも、中国という国に対して、日本は歴史の問題も含めて、きちんと言うべきことを言うようになる必要があるかもしれないということです。

そういう意味で、日本は日本なりに、今回の中国の対応から学ぶことがあると思いますし、また中国政府やその関係者の方々に対しては、今後、中国という国が信頼に値する国家となるべく、大いに努力していただきたいと思うのでした。

コメント (4)
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