まほうのすうぷ屋 日々やらかし日記

ちっちゃな魔法使いの、のんびり楽しくちょっとぬけてるキッチンカーズライフ

更なる修行Ⅱ

2007年09月18日 00時34分46秒 | はじめてご覧になる方へ

こうして1軒のバーの調理を任されたものの、お酒を飲むことを主とした場合の料理、、

今までとは全くちがうものでした。

そして調理場もカウンターの中、IHコンロと電気オーブンのみ。

屋上で燻製をかけたり、倉庫でアイスクリームを作ったりと試行錯誤しながら1年半が過ぎ常連のお客様もついてきました。

「もうちょっと大きな厨房でやってみない?」

社長からのありがたいお言葉でした。

火力の強いガスコンロとオーブンで仕込みがしたい。

その時はその思いだけで、そこでどれだけ売り上げが出せるのかとか、スタッフはどうするかなんてほとんど考えていませんでした。

会社を辞めた今、社長は「あそこであの店をやるっていうとは、正直思わなかったんだけどさ」と笑って言います。

人を使ったことがないコックが、いきなり席数50、立食ならば100名入ってしまう店の

調理一切を任せてもらえたわけです。

おまけに厨房には初めて見る立派なグリル板。

この日から4年間、わたしはここの広い厨房をパタパタとかけずりまわり、自分の料理の

核を作ることができたのです。

この会社でもう一人の偉大な魔法使いと出会うことができました。

その魔法使い、総料理長はその広い厨房での仕事をいちから私に教えてくれました。

わたしのような甘い考えでやっていける店の規模ではありませんでした。

それでも自分が「おいしい」と思う料理のスタイルはゆずれない。

それでは時間がかかる。お客さんに迷惑がかかる。。

いろんな葛藤もありましたが、彼は一度も私の考えを否定せず、それでも

多くの皿を作ってゆく、作ってゆかなくてはならないプロの仕事というものを私に教えてくれました。

今でもその総料理長は私に「料理するのに一番大切なのは愛やなあ」といって笑います。

料理は愛だという最初の師匠の教えと、愛を込めるために技術が必要なのだという

教え、この二人の魔法使いによって私は育てられました。

サービスの仲間にも支えられ、常連のお客様もできました。

つらいことも楽しいこともたくさんありました。

新人も入ってきます。

他の店舗の料理長と自分を重ねてみたときに、やはり違う。

「あの人は仕事できるよね」ではなくやはり「あの人の作る料理はおいしいよね」

そういわれたい。。それだけでいい。

そう思ったときに、辞めようと思いました。

自分を大きく成長させてくれた会社、いつも助けてくれた仲間から離れてパン屋で

修行を始めて1年。

どうしても料理がしたい。

お客さんに食べてもらいたい。

お客さんの「おいしい」が聞きたい。

気持ちがおさえられなくなったとき、移動販売というスタイルにたどりつきました。

商品を何にするかはあまり迷いませんでした。

初めて飲んだ魔法使いのかぼちゃのスープ。

寒い市場から帰ったあと、飲ませてもらったあのあったかいスープ。

それでいこう!

前の会社の社長に話してみました。

「作れるよ、自分で。手伝うからやってみようよ。」そういってくださいました。

このとき背中を押してもらったんだと思います。

車の入手から改造、社長とともに助けてくれたのは1年前に辞めたその会社で、車の整備や修理、なんでもこなしていたメカニックの人。

在職中から、私の車をずっと見てもらっていた人なのですが、

なるべく外装がそのまま使える車を。。というと、あっという間にこの相棒となる1台にたどりつきました。

そこからは、社長と、そのメカニックの人、その仲間の方が

車のことをなんにも知らない私を手伝ってくれて、時には「私、何もしてないなあ」というくらい

着々と車を仕上げてくださいました。

お店の看板ともなるロゴはフランス料理店で一緒に働いていた仲間が書いてくれました。

たくさんの人に助けられ、やっと今出発進行となったわけです。

この大事な相棒。

たくさんの人のあったかい応援でできあがった、世界で一台の私の宝物です。

いつか自分の店を開くんだったら、、と決めていた店名

「le  petit  magicianne」   フランス語で「ちっちゃな魔法使い」

どこへいってもちっちゃい、ちっちゃい、、といわれる私の店だから「ちっちゃい」は

はずせないわけで、、まだまだ未熟である意味あいもこめられているわけです。

移動販売ではわかりやすさも大事なので、悩んでいると

信頼する兄貴とボス(総料理長)が「そのまま日本語にすりゃいいじゃん。魔法使いのスープ屋で。」

というわけで  「まほうのすうぷ屋」ができあがりました。

まだやっとスタートラインです。

一人でやっていくのは不安がいっぱいです。

でも応援してくれる、助けてくれる仲間がたくさんいるから

その人達にも、そしてこれから出会うたくさんの人達にも

いっぱいの「愛」が届けられるように、小さな相棒と一緒に走って行きたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

更なる修行

2007年09月16日 23時00分01秒 | はじめてご覧になる方へ

こうして修行を重ねていた私は支店へ移動することもしばしばありました。

年齢の近いコックさんたちと働くとその差は歴然。。

自分の不甲斐なさや自信のなさに落ち込むこともたくさんありました。

シェフは「いつもニコニコしているあなたはサービスマンとしては最高だけど

料理人はそんなにニコニコしてばかりじゃやっていけないよ。

自分の意思や意見、これだけはゆずれないってところをしっかり持たないと

おいしい料理は作れないんだ。」

長いこと「女の子はいつも笑顔でいなさい。周りの人が嫌がるような顔はしちゃいけないよ」と母から言われて育ってきた私にはとても難しいことでした。

自分の料理ってなんだろう?どんなだろう??

そんなことを悩んでいた頃、支店のすぐ上の階で美容師をしていたお姉さんが

「いいんじゃないの。{こんなのできたんだけど、どうですか?}的なものがあなたの料理なんじゃない?あたしはそんなほんわかした感じ、好きだけど」といってくれました。

なんだか胸につかえていたものがすーっと取れた気がしました。

もともと、誰かと比べられたり、争ったりするのがニガテだった私のスタイルは

「こんなのできたんだけど、食べます?」に決まりました。

「あたしの料理、おいしいから食べてみなさいよ。」ではないんです。

それは今でもやっぱり変わっていなくて、得意料理は?と聞かれるとものすごく困ります。

それからは、他の人があまりやらない部分を強化していきました。

あたらしいデザートにチャレンジしたり、後に「むらいパン」と呼ばれ、お客さんに

喜ばれるアイテムになるパンを焼いたのもこの頃でした。

おかげで、ウェディングケーキの注文が来たり、お祭りでケーキやパンを売るようになりました。

その頃です。

兄貴がまた新しい道を用意してくれました。

今度は一軒のバーです。

「自分で店やっていくんだったら、ちょうどいい大きさの店だからやってみたら。」

それが、そのあと7年もの間お世話になる会社との出会いでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法使いになるために

2007年09月16日 01時59分07秒 | はじめてご覧になる方へ

こうして、見習いコックとなった私にシェフは「僕のお古だけど、サイズは合うんじゃないかな」といって、コックコートをくれました。

どこへいっても「ちっちゃい」「ちっちゃい」といわれてきた私にぴったりの

なによりうれしい贈り物でした。

朝早くからの魚市場への買出し、営業が始まれば接客をしながら前菜やデザートの準備。

肉や魚の下処理も一から教わりました。

もともとマイペースな私。

慣れない仕事で遅い分、全てはシェフのフォローで毎日が過ぎていきましたが

シェフは一度も「早くして」とか「急いで」とか私にはいいませんでした。

ただ必ずいわれたのは「仕事が速くなろうとか、仕事ができるようになろうと思うな。

ただ、おいしいものを作れるようになりたい。。と思って仕事しなさい。

急いで雑な仕事になるよりは、丁寧な仕事をしなさい。」ということ。

「料理の技術書を読むんだったら、シェフの自伝的な本を読みなさい。

みんなから支持されるシェフがどんな気持ちで料理を作っているのかを知りなさい。」

優しいシェフに見守られながら、いつか立派な魔法使いになる日を夢見ていた毎日でした。

柔らかく煮込まれたお肉、絶妙な焼き加減の魚、その見極めをシェフはこういいました。

「お肉や魚が僕に語りかけてくれるんだよ。

オーブンの中から{今が一番美味しいから、もう出して!}ってね。

ちゃんと修行すれば、素材の声が聞こえてくるんだよ」と。

ある日シェフがスポンジケーキを焼いていた私に「スポンジケーキも竹串を刺さなくたって、{おいしく焼けたよ}って聞こえるんだよ。」といいました。

焼きたてのケーキに耳を寄せてみましたが、私には聞こえません。

あんまり耳を寄せたもんで、ほっぺたにケーキ型のあとの焼けどができたのは

いまだに笑い話のひとつです。

今?

今はちゃんと聞こえますよ。スポンジケーキの声(笑)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法使いとの出会い

2007年09月14日 00時31分01秒 | はじめてご覧になる方へ

ブログを始めました。

移動販売という形で独立を漠然と考え出したのが1年ほど前。

車を購入し、たくさんの人に手伝ってもらい、応援してもらってやっと初めての自分の店となる車が完成しました。

まずはここまでの「私」の話でもしようかな。

私が料理することを仕事にし始めたのは、一人のシェフとの出会いから始まりました。

当時、自分でお店をやりたい。と考えていた私は喫茶店で修行をしていましたが

何かと心配をしてくれる兄貴の紹介で一軒のフランス料理屋さんの門をたたくことに。

住宅街にポツンとある、その小さなお店で偉大な魔法使いと出会ったのです。

最初に「キライな食べ物はあるの?」と聞かれました。

「かぼちゃがニガテです。」そういう私の前にでてきたのはお野菜がたっぷり入った

かぼちゃのスープでした。

「ぼくのスープはきっと飲めるよ。飲んでごらん」

う、、鼻をつまむ思いで一口飲んでみたら、、、

「あれ、おいしい?かぼちゃのスープなんて大嫌いなはずなのに。。」

お店でサービスの仕事をしながら、目の当たりにするのはシェフのすごい仕事ぶり。

次から次へとおいしいお皿が出てきて、お客さんはみんな一口食べて笑顔になる。

毎日のまかないも「レストランで働く人はお客さんよりもおいしいもの食べないといけない」

というシェフの口癖どおり、とびきりおいしかった。

毎日、毎日仕事にいくのがほんとに楽しくてしょうがなかった。

サービスをしながらデザートを教わった。

初めて自分が作ったケーキがお店のショーケースに並んだときの感激を、私は忘れることはないと思う。

デザートだけを教わるはずだった私が一年後、厨房に立っていました。

それはシェフの魔法にかかったからだったのかもしれません。

「人はね、おいしいものを食べると幸せを感じるんだよ。

人を幸せにしてあげられるコックさんって仕事、こんなにすばらしい仕事はないと思わない?」

おひげが印象的なやさしい笑顔のシェフはにっこり笑って私にそういいました。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする