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読書と旅行と柴犬のブログ
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ヤプログから引っ越してきました。

「窓の灯」青山七恵の芥川賞前夜

2007-01-27 11:28:05 | 読書の時間
「窓の灯」青山七恵著


芥川賞受賞を知り、
早速デビュー作を購入し読んでみた。

大学を中退し、喫茶店で働き
その店の上のアパートで暮らす日々。

彼女は特に目的も無いまま
それでも無気力というわけでもなく
描かれている。

彼女の向かいのアパートに
新しく越してきた男の窓を
それとなく覗いてしまう。

喫茶店のママは
人好きのする女性で
主人公はそのママのことも
気にかかっている。

@@
以下は内容に触れるので
読んでいない人は了解して進んでください。

主人公は隣のアパートの
レースのカーテンからぼんやりと見える隣人の姿が
気になって仕方ない。

でもそういうことは誰だってある、
完全に見えないならともかく、
チラッと見せられたら、
それは気になるだろう。

深夜の散歩の途中でも彼女は
明かりのついた窓を見ては
そこに誰かの存在を感じて、
だからといってそれ以上のコンタクトをとろうとか
そんなつもりは無いのだ。

彼女は何故散歩の時にも、
人の家の窓が気になるのだろうか、
そこにいるのは全く自分と関係の無い
顔さえ知らない人々だというのに。

人と面と向き合うのは苦手だ、
でもこっそり顔色を窺うようなことは
したくない、
しかし少しだけ見えたはずの
目の前にいる人の、その分かったと思った何かは
実に曖昧で、
なにより自分自身が
本当に知りたいと思っているのが、
実は自分の心だったりするのだ。

この小説に明確に指し示す
何かは特には提示されない、
強く提示されないからこそ、
なんだかそこに読んでいる時の
自分の心なんか見えてくる、面白いね。

この作品の次の作品がまさか芥川賞をとるとは
本人も知らない頃の作品。

もし、窓という窓が全部透けて見えてしまったなら、
人間の苦悩の多くが解消されそうだ、
もちろんその窓は、相手の心だったり、
自分の揺れる心だったりと形を変えるわけだけど。

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最近では久々の「文学的な何か」を感じさせてくれる本と
出会った。

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