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読書と旅行と柴犬のブログ
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ヤプログから引っ越してきました。

書籍「サラバ!(上・下)/西 加奈子著」★★★★★

2022-11-23 11:48:51 | 読書の時間
書籍「サラバ!(上・下)/西 加奈子著」★★★★★満点
西 加奈子 著 ,小学館 (2014/10/29)

第152回直木賞
久しぶりに再読、
初めて読んだ時の驚きをなぞるみたいに
再び楽しい時間だった。
以下は、当時の感想。


憧れのエジプトの地を踏んだ時のことを
懐かしく思いながら
主人公の少年時代を読んだ、
ゲジラ塔のゲジラタワーを近くで見たとき、
周囲を案内してくれたエジプト人は
何気なく手を繋いできて
気温の高いなか
拒む事も憚られ、しっとりと冷たい手
断片的に脈絡もなく、そんな些細なことが
浮かんだ


同じ様に遊んでいても
海外赴任の日本人家庭と
現地の普通の人々では
暮らしの格差は
子供の目にも明らかだったろう、
それでもそんなこと関係なく遊べるのが
子供の良いところであり、
残酷なところでもある。


「サラバ」
彼らの挨拶の言葉、
自分の記憶では「アッサラーム」とか、
「イッシャ・アラー」とか
「サラーム」とか


異国の言葉がその時の
空気の様なものと一緒に
何処かの場所に引き戻してくれる。


家族のあれこれを描いた、上巻、
下巻に入って
一体この物語はどこに行きつくんだろう?
そんなことを考えながら
どんどん減っていく残りのページ。

歩(あゆむ)という名前
彼はいつしか、自ら歩き出す

かつて唯一の友人で
彼のヒーローだったヤコブ、
彼の姿を認め、走り出したい気持ちを
34歳の主人公は一瞬押しとどめるが
お互い駆け寄り抱き合う、
一瞬で二人が子供時代に返る。

ヤコブはエジプトでも少数派の
コプト教を信じている、
信じることは、息をする事と同じと
強く言い放つ、
歩はいまだに、信じるもの
信じられるものを探している

子供の頃は二人は
何も持っていなかったが
全てを手にしていた、可能性の卵を

大人になった二人は
随分と変わってしまったけど
ナイル河のゆったりした流れを目にして
常に「サラバ」がお互いの
身近にあったことを
強く強く実感する

このあたり、号泣していた、
改めて今まで読んできた
長い長い物語のその長さの
意味が分かった、
オレは何かを持っているんだろうか?

サラバ!
サラバ!

書こうと決めて3年経った
37歳でフリーターの主人公が
小説を書きあげ
生まれた街の空港に降り立つ、
それが傑作なのか
人々に認められるか
そんな不安は無用だ
書きあげたことにこそ意味がある。

そんな生き方は眩しい
憧れもするけど
やはり心の中でだけ

とてもつもない小説を読んだ、
2ヶ月経って、再読
やっと感想のような文章を書いた。
最高!

★100点満点で100点★

ミカエルの鼓動★★☆柚月 裕子 (著)読みやすいが,想像の範囲内だった

2022-01-30 08:44:53 | 読書の時間
ミカエルの鼓動★★☆柚月 裕子 (著)
文藝春秋 (2021/10/7)467ページ
第166回直木賞候補作
HPあらすじ
「大学病院で、手術支援ロボット
「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。
そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れる、
あるとき、難病の少年の
治療方針をめぐって、二人は対立。
「ミカエル」を用いた最先端医療か、
従来の術式による開胸手術か。
天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。」
@ここまで「HPあらすじ」

最先端医療の現場、
海外のTVドラマが好きで
この本に描かれた世界を
興味深く読んだ。

説明されても
理解することと
頭で納得するのが追い付かないような
先端の設備と
でもそこには
なんとも古典的な
人の体にメスを入れ
何時間にも及ぶ手術の現場があり、
最後は人の技術なのか
ロボット医療の進化なのか。

面白かったが
何かもっと新しい驚きが
欲しかったな、
小説やドラマで描かれ
自分の頭で想像できる範囲で
着地こそ
「そうなんだ」と軽い驚きは
あったが、心揺さぶられるような
新鮮な驚きはなかった。

TVドラマの二時間ものの
原作って感じ。

それでも読んでいる間は
この先どうなるのか
自分の中で想像しつつ
「神の手」をもつ
人間っていう存在も、
そういう人がひとつ飛びぬけた
技術革新を起こしていくのだろうなと
考えてみたり、
楽しい読書体験だった。

人は100%死んでしまう、
残りの時間も正確には分からない
こんな不安定な現実の中で
何ができるんだろう?
何がしたいんだろう?

書籍「皆のあらばしり」乗代 雄介 (著) ★★★奇妙な味わい

2022-01-19 10:19:16 | 読書の時間
書籍「皆のあらばしり」乗代 雄介 (著) ★★★奇妙な味わい
新潮社 (2021/12/22)
単行本、 144ページ
@あらすじ@(HPより)
ぼくと中年男は、謎の本を探し求める。
幻の書の新発見か、それとも偽書か――。
高校の歴史研究部活動で
城址を訪れたぼくは中年男に出会う。
人を喰った大阪弁とは裏腹な深い学識で、
男は旧家の好事家が蔵書目録に残した
「謎の本」の存在を追い始めた。
うさん臭さに警戒しつつも、
ぼくは男の博識に惹かれていく。
ラストの逆転劇が光る、
良質のミステリのような注目作。(HPより)

なんとも言いようのない
奇妙な味わいのある作品。

主人公ふたりの会話は
深読みすれば
いろんな解釈が出来そう。

主人公の高校生が
地元の歴史を部活で研究していて
とても知識豊富な大人と出会ったとき
男の外見や行動が少し怪しくても
なんか、その出会いを
すんなり受け入れるのは理解できる。

少し背伸びして
男の知識や先回りした行動に
憧れつつも
ラストで一矢報いるのも
爽快な気分になる

芥川賞候補という先入観で
読み始めると
難解な部分が無くて
肩透かしを食ったような気分になるが
少し読んで
ちょっと戻ったりしながら

たった二人の登場人物を
頭の中で映像にしてみる

すると色んな見方ができて
これも面白い読書体験だった。

@表題の著者の後の★マーク@
★★★すごく良かった、オススメ
★★☆良かった。
★★読んで損なし
★☆

書籍「同志少女よ、敵を撃て」逢坂 冬馬 (著) ★☆

2022-01-02 11:49:41 | 読書の時間
書籍「同志少女よ、敵を撃て」逢坂 冬馬 (著) ★☆

早川書房 (2021/11/17)
単行本 ‏ : ‎ 496ページ
@あらすじ@(HPより)
第166回直木賞候補作
独ソ戦が激化する1942年、
モスクワ近郊の農村に暮らす
少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。
おびただしい死の果てに、
彼女が目にした“真の敵"とは?(HPより)

思ってもいない事から
急にとんでもない世界へ放り込まれ
自覚もないまま戦争という
大きな渦に巻き込まれていく。

今、戦争というと
その現実味は薄い、
「忘れるな、風化させるな」と
言われても、「そうだな」と感じても
やはり遠く遠くにイメージは押しやられて。

読み始めて、ずいぶん前の映画
「スターリングラード」を思い出した。

フィクションの読み物として
情景描写や展開が巧みで
どんどん読み進めるが
深みがないというか
ゲームの仮想空間のような
なんか、敵を倒せば正義みたいな
書き方には
今を生きる自分たちには
違和感の方が大きいかな。

もしかしたら、戦争の正義を
どんなに書かれても
もうピンとこないのかもしれない。

読み物としては面白かったが
文学性というか、
考えさせられることは少なかった。

親や村人が殺されたから
銃を手にするっていうのは・・・・。

でも、次の作品や他の作品も
チェックしてみたい作家さんだ。


@表題の著者の後の★マーク@
★★★すごく良かった、オススメ
★★☆良かった。
★★読んで損なし
★☆
ただいたいこの順のオススメ度合い

「新しい星」彩瀬 まる (著)

2021-12-28 11:05:19 | 読書の時間
「新しい星」彩瀬 まる (著)
文藝春秋 (2021/11/24) ‎ 229ページ

@あらすじ@(HPより)
私たちは一人じゃない。
これからもずっと、ずっと
愛するものの喪失と再生を描く、
感動の物語(HPより)

発行元のHPの作品紹介に
― 感動の物語 ―って書くのは
どうなんだろうね。

そんな意地悪なつぶやきは
置いておいて
この本も直木賞候補となったので
取り寄せて読み終えた。
短編連作形式のの主人公たち4人は
大学の合気道の部活でつながり
社会人になって、様々な問題に直面する。

どこにでもありそうだけど
こんな全員がこれだけ
特徴的な何かを経験するかな?
読みながら感じていた、
ホームドラマの凝縮版みたいだ。

でもひとつひとつは
リアルでとても親密な部分もあって
文章も巧みなので
スイスイ読んでしまった。

墓参りのシーンがあった、
私も先日、2年ぶりに故郷の
墓参りをした、
昔の墓なので
祖父たちが暮らしていた
古い大きな家の裏に代々の墓があって
墓の周りに落ちた枯れた杉の枝や
雑草を取り除き
花を供え、茶碗を洗い
水を入れてサカキの葉で
水を手向けた。

親がやっていた一連の事を
誰に教わるでもなく
何度も見ていたことを真似て
やっている自分を、
同じように傍らで
もう一人の自分が見ている。

なんか、その時の静かな場所が
読みながら頭に映像を結んでいた。
そんなふうに本を読むことは
自分の日常のどこかや
いつかを思い出させる。

「塞王の楯」に続いて、
この候補作を読んだが
良い作品だったが、受賞は難しいかな。

でも、新しい才能は感じた。