旧金毘羅大芝居は香川県琴平町の金刀比羅宮・門前町にある
現存する中では日本最古の芝居小屋だ。別名金丸座と呼ばれ
天保6年(1835年)に完成し、国の重要文化財に指定されている。
江戸時代、琴平は朱印地、天領であった為、取締も寛大で
様々な芝居、相撲、操り人形などの興業が行なわれ、芝居の興業の為、
仮小屋がその都度建てられた。天保6年金丸座が完成後、金毘羅大芝居には
江戸、大阪などから千両役者が舞台を踏んだ。
金丸座は延面積1階850㎡(約258坪)2階は311㎡(約94坪)。
収容人員は740人で歌舞伎舞台としては臨場感があって迫力がある。
入口の扉は3ヶ所あり、一般庶民と皇族、大名などのVIP、
そしてもう1ヶ所は琴平の神司が入る口がある。入って右側2階の
上部に額が飾ってある下の席は、皇族などが観覧するVIP席だそうだ。
天井部に格子状に組まれた竹を荒綱で留めてある通称ブドウ棚。
そしてそこに登る丸太で組まれた階段梯子。舞台だけでなく客席まで
演出として桜吹雪、雪などを降らせる為に作られた。
客席の上にあるのは珍しいそうだ。因みにこれをやるのは午後の部のみ。
それはそうだ。清掃が大変だから。
桝席は一桝5名。移動するのは桝の横の桟木みたいな所を歩くのか?
座番は縦が「いろは・・・」横が「壱弐参・・・」の表示を使っている。
舞台下手より直角に客席を貫き、屋に通じている幅約1.3m
長さ約14mの花道。花道の七三の位置に切穴(すっぽん)という
スライド方式の忍術使いや妖怪のたぐいをこの穴から
せり上がらせる所がある。
これが舞台裏の光景。いかにも江戸時代のかおりが伝わってくる古い造りだ。
舞台裏には1階、2階に獅子方、中軸、などの楽屋があり、風呂場まである。
奈落は舞台や花道の下の床下の総称で、地獄の奈落を
連想して名付けられた。廻り舞台やセリ、すっぽんの仕掛けを
動かすための場所で今でも全て人力4人で動かしている。
床下に潜ってみると、土台など木の削りは釿(ちょうな)、のみの跡が
はっきり残っていて、江戸時代の大工さんの息遣いが伝わってくるようだ。
2階の前舟、中舟、後舟の席と西桟敷のVIP席(特別席)から
全体を見渡した写真。2枚目右上の顔見世提灯(興業の際、役者の
番付の代わりをしている。高さ約1.2m、幅約45㎝)は迫力があった。
秋、中村勘九郎、中村七之助兄弟が金丸座で特別講演するポスター。
発売早々売り切れたそうだ。そもそも四国こんぴら歌舞伎大芸居が
公演されたのは昭和60年から。それ以来年1回春の定期公演が
行なわれるようになったらしい。
金丸座から今夜お世話になる琴平グランドホテル桜の抄へ行く途中にある
琴平町会館。こちらは1932年(昭和7年)に建造された
和風公会堂で木造の日本建築。入母屋造り柿葺風の大屋根に
玄関棟、和室棟の屋根が連なる。四季を通じて美しい庭園を前に
どっしりと落ち付いたたたずまいだ。