思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『死者たちの七日間』 はい!星5つ!

2023-05-10 11:27:33 | 日記
『死者たちの七日間』
余華(ユイ・ホア)
飯塚容:訳

いきなり冒頭から、
主人公の「私」は死んでしまっているらしい。

誰も悼んではくれない身の上だから
自分で自分のための喪章をつけて火葬場に向かう。

でも墓地も骨壷もないんだった〜、ということで彷徨うことに。
過去を思い出したり、別れた妻や隣人と再会したりする。

淡々と、七日間の物語が綴られる。
不思議な感じの小説。

現代中国が舞台なのだけど
強引な立ち退き(建物破壊!)で死者を出したり、
貧しい人々が地下壕に住み着いていたり、
結構ライトに腎臓が売られていたり、
政府や特権階級の腐りっぷりがなかなかの腐臭を放っていたりする。

そんな貧民や弱者の悲哀も淡々と描かれている。

あとがきが面白かったのですが、
出版直後の中国では
「ふつうのことをふつうに書いてるだけじゃないか」
と評された的なことが書かれていまして。
おいおい、社会の理不尽ぷりがだいぶエッジーだよ!
「ふつう」とはなんぞや?
と逆に驚きました。

もちろん中国のトンデモネタを楽しむための本ではないのです。
小説として、淡くて、悲しくて、
でも主人公やその周辺にちゃんと愛や幸せはある。
なんとも言えない味わいの小説。
滋味深いというか、
体の奥の方に沁みるものがあるというか。

うん。
これは星5つです!

出版直後に中国国内では発禁になったという
エッセイ『ほんとうの中国の話をしよう』も
読んでみようかな。
タイトルからして興味しかない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする