どうせ予告した本ではないものを読むのだろう、と
自分でも半ば確信してましたが、案の定です。
まったく違うジャンルに跳びました。
小田雅久仁「本にだって雄と雌があります」
これね、面白いですよ!
今のところ2017ベストです!まだあと半分残っているけど。
基本の体裁は、話者である「私」(土井博)が
まだ幼い息子に向けて綴る手記です。
話しの主旨は、「私」の祖父(深井與次郎)を中心にした
一族の物語。
もしくは本と本の間に生まれる「幻書」にまつわる物語。
前半は、結構、断片的というか
テーマがあちこちに飛ぶというか。
これ、どういう話し?と少々不安になりますが
NO.19.5からの怒涛の生と死と家族と人間と本の物語。
と言ってもなんのことかさっぱりな感じですが、
しっかりと筋の通った壮大な物語です。
泣けます。
あと、笑えます。
時系列が飛んだり作中作が引用されたりと忙しいですが、
ひとつひとつの文章やエピソードが
軽やかというかすっとぼけてるというか。
心地いいんです。
と、説明してもやっぱりうまく表現できないところが
プロの文章といいますか。
もうね、引用するしかないですよね。
(ブログでの引用ってどうやったらいいのか不安になり
ちょっと検索してしまいました)
冒頭の一文からして良い。
『あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌がある』
語り手の「私」は文筆業の人間ではないから、と言いつつ、
やっぱり良い。
ちょっと長いですが、引用します。
『しかし恵太郎よ、安心してほしい。お父さんがこうやって部屋に籠もり、この手記を書いていても、愛するお母さんが突然ドアを開けて入ってくることはない。「鶴になって自分の羽を毟り毟り機を織るから絶対に開けないでね」とよくよく頼みこんであるのだ。というのはもちろん嘘で、学生運動華やかなりし時代に覚えた手習い、鉄壁のバリケードをドア内に築いているのだ。というのもやっぱり嘘で、本当のところはアルカトラズのコンクリートに穴を掘るみたいにいつもびくびくしながらこれを書いているのだ。全然安心できない。安心したい』
文章も良いですが、登場人物も良い。
「私」の妻は、新進気鋭の書評家で、引用すると
『筆先より毒汁滴る書きっぷりであまねく知れわたる気鋭の書評家』であり
それでも書評には本来の毒を希釈しているそうで、
彼女が本気を出したら「地球上から文学が絶滅する」そうである。
お母さん、かっこいい。
與次郎のライバル鶴山釈苦利(しゃっくり)も良い。
百年しゃっくりでうなじが大好きで綽名は伯爵って、
その設定必要かってところが
いい感じに不可欠な効果を醸し出してて、とても良い。
そういえば、アリストテレスと緒方洪庵はともかく
黒川宏右衛門とアントニオ・パニッツィにいたっては
さすがにフィクションだろと思ったら、
実在していたんですね。パニッツィ。
(宏右衛門はさすがのさすがに創作っぽい)
前半戦のふろしき広げまくりマニアックフェーズで
躓く人もいるかもしれませんが、
大丈夫、きちんと畳まれます。
少しずつ噛みしめるように味わいたい良作もありますが、
本書は、えいやっと一気に読んでほしい良作。
自分でも半ば確信してましたが、案の定です。
まったく違うジャンルに跳びました。
小田雅久仁「本にだって雄と雌があります」
これね、面白いですよ!
今のところ2017ベストです!まだあと半分残っているけど。
基本の体裁は、話者である「私」(土井博)が
まだ幼い息子に向けて綴る手記です。
話しの主旨は、「私」の祖父(深井與次郎)を中心にした
一族の物語。
もしくは本と本の間に生まれる「幻書」にまつわる物語。
前半は、結構、断片的というか
テーマがあちこちに飛ぶというか。
これ、どういう話し?と少々不安になりますが
NO.19.5からの怒涛の生と死と家族と人間と本の物語。
と言ってもなんのことかさっぱりな感じですが、
しっかりと筋の通った壮大な物語です。
泣けます。
あと、笑えます。
時系列が飛んだり作中作が引用されたりと忙しいですが、
ひとつひとつの文章やエピソードが
軽やかというかすっとぼけてるというか。
心地いいんです。
と、説明してもやっぱりうまく表現できないところが
プロの文章といいますか。
もうね、引用するしかないですよね。
(ブログでの引用ってどうやったらいいのか不安になり
ちょっと検索してしまいました)
冒頭の一文からして良い。
『あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌がある』
語り手の「私」は文筆業の人間ではないから、と言いつつ、
やっぱり良い。
ちょっと長いですが、引用します。
『しかし恵太郎よ、安心してほしい。お父さんがこうやって部屋に籠もり、この手記を書いていても、愛するお母さんが突然ドアを開けて入ってくることはない。「鶴になって自分の羽を毟り毟り機を織るから絶対に開けないでね」とよくよく頼みこんであるのだ。というのはもちろん嘘で、学生運動華やかなりし時代に覚えた手習い、鉄壁のバリケードをドア内に築いているのだ。というのもやっぱり嘘で、本当のところはアルカトラズのコンクリートに穴を掘るみたいにいつもびくびくしながらこれを書いているのだ。全然安心できない。安心したい』
文章も良いですが、登場人物も良い。
「私」の妻は、新進気鋭の書評家で、引用すると
『筆先より毒汁滴る書きっぷりであまねく知れわたる気鋭の書評家』であり
それでも書評には本来の毒を希釈しているそうで、
彼女が本気を出したら「地球上から文学が絶滅する」そうである。
お母さん、かっこいい。
與次郎のライバル鶴山釈苦利(しゃっくり)も良い。
百年しゃっくりでうなじが大好きで綽名は伯爵って、
その設定必要かってところが
いい感じに不可欠な効果を醸し出してて、とても良い。
そういえば、アリストテレスと緒方洪庵はともかく
黒川宏右衛門とアントニオ・パニッツィにいたっては
さすがにフィクションだろと思ったら、
実在していたんですね。パニッツィ。
(宏右衛門はさすがのさすがに創作っぽい)
前半戦のふろしき広げまくりマニアックフェーズで
躓く人もいるかもしれませんが、
大丈夫、きちんと畳まれます。
少しずつ噛みしめるように味わいたい良作もありますが、
本書は、えいやっと一気に読んでほしい良作。