語る、シェフ

小さなレストランのオーナーが、日々の出来事を語ります。

  冒険11 最終回 

2008-07-07 01:46:14 | 冒険
僕は、薄目を開けると左、右そして下を見た。
その時だった。頭上ですごい音がした。
「ダダッタタン、ダダッタタン。」
僕は思わず目を見開き上を向いた。
「あっ、武蔵野線だ!!」
彼はとっくに目を開けて、鉄橋の下から電車を指差していた。
あれほど、いいって言うまで目を開けちゃいけないと言ったのに・・・。



      



僕はというと、しばらく呆然と立ち尽くしていた。
彼はというと、早速ドアから出て江戸川の土手を登っていった。
そして上から、「パパ早く早く、信号が青だよ。」



鉄橋の下では、車で来ているたふた組の家族が、バーベキューを楽しんでいる。
武蔵野線と並行して走る県道にも、ひっきりなしに車が走っている。
「やれやれ。」僕は、村上春樹の小説に良く出てきたセリフをつぶやいてみた。
そうすればすべての事が、しっくりくる様な気がしたのだ。
僕もドアを出た。そして振り返ると、武蔵野線の鉄橋の橋げたにあったドアは、
もちろん、跡形もなく消えていた。



僕も、土手を登っていった。
そして彼を見ると、こっちを向いて、「早くこっちへ来て!!」と言うように、手を、ヒラヒラさせている。
そしてその横には、ポンプ室の近くに置いてきた、そう、あのホームレス仕様の自転車が・・。
でももう僕は驚かなかった。考えてみれば、ここに自転車があっても何の不思議もない。
むしろ、当然なくらいだ。
彼にしてみても、今までの事は、何てことないのかもしれない。



「今行くよー、あっ、来た来た。」
僕は彼の所に走って行くと、肩車をした。
そして、「府中本町」行きの電車に手を振ると、運転士さんが「プア~ン」と警笛を鳴らしてくれた。
もちろん、白い手袋で手も振ってくれた。
僕らも、ちぎれんばかりに手を振った。



    



何本か電車を見て、僕らは帰ることにした。
江戸川の土手を、今度は流山北高のさきまで、そしてビバの横を通って江戸川台へ・・・・。
途中で、例のポンプ室に寄って見たけど、僕たちの入っていったドアは・・・もちろん無かった。



とにかくお腹が空いた。彼は相変わらず、自転車の後ろではしゃいでいる。
「ねえ、パパ森には入らなかったけど、おもしろかったね、冒険。」
「そうだな、また来ような。」
「おもしろかった。」か・・・確かにこの歳であんな冒険が出来るなんて.
でも、あのポンプ室に入る時のワクワク感は、もう無かった。
それよりも「あんな事が現実なはずが無い。」と言う気持の方が強かった。

でも彼は違った。全てを受け入れ信じていた。
何が本当で、何がウソ、何てことは関係なく体験をすべて受け入れていた。
僕ら大人が、いつの間にか忘れてしまった事かもしれない。

さすがに今日は、すぐ寝るだろう。
今度は夏休みだな。何処に行こうか?

でも、もうドアは・・・開けないつもりだ。



            

         







  おめでとう、冒険10

2008-07-06 00:52:13 | Weblog
くまちゃ~ん お・た・ん・じょ・う・び  おめでとう!!
                      プレゼント

24歳か、若いですね。もう2周りか、年ですね僕も・・・。
24才のときは、人生で、ある意味1番楽しかった時期です。
くまちゃんはどうでしょうか?でも、口を開いて上を見ているだけじゃ、幸せは来ないよ。
がんばってくれ!!

さ~て冒険の続き

しばらくすると、だんだん速度が落ちてきた。傾斜が緩くなってきたようだ。
はっきり言ってお尻が痛い。Gパンは擦り切れてないだろうか?
やがて僕らは、完全に止まった。蛇の穴に落ちなくって本当に良かった。
ぼくは、蛇が大嫌いなんだ。
  
    

彼は僕のお腹の上から、
「パパ、ここどこ??」と訊いた。
「う~ん、地下だと思っていたのに、こんなに滑り落ちちゃって、もっとすごい地下かな?」
僕もとりあえず起き上がると、あぐらを掻き、あたりを見回した。
とは、言っても、暗くてそう遠くまでは見えない。後ろを向いてみると、まだ先がありそうだ。
「よし、行くぞ!!」
僕は、リュックを背負うと、彼の手を握り歩き始めた。
トンネルは、大人がちょっと腰をかがめて歩けるぐらいの高さだ。
僕は左手で、壁を探りながらどんどん進んでいった。
足元を見ながら歩いていると、
「ねぇパパあそこ明るいよ。」暗くて良くわからないが、だいたい50mぐらい先だろうか?
ドアのように四隅から光が漏れている。
まさか本当にドア?じゃあ、ドアだとしたら何処に出る?光が漏れているということは、外?

  

「パパ、電車の音が聞こえる。」
「えっ、電車の音?」僕は立ち止まり、耳を澄ました。そして、目をつぶり耳に神経を集中した。
聞こえる、確かに電車の音だ。
「パパ、早く行こう。」
まったく無邪気なものだ。また、「しゅっぱつしんこう」に乗る羽目になるのだろうか?
僕らは、ドアらしきものの所へいそいだ。そして、ドアノブがあるであろうところに手を伸ばした。
それは、あった。丸いドアノブだった。

「いいかい、しんくん。ドアを開けて外にでる時、目をつぶってるんだよ。そして、パパがいいって言うまで、
絶対、目を開けちゃだめだぞ。わかったな。」
「はい」
「ようし、いい返事だ。行くぞ!!」
もちろん、目をつぶってドアを開けるのは、リスクが伴う。もし、危険が待っていたら・・・。
でも僕は、大丈夫なような気がした。上手く説明できないけど、何となくそんな雰囲気がした。
僕は左手で彼の手を握り、右手でドアノブをつかみ目をつぶった。
そして・・・ドアを開けた。
 
      

  蒸し暑い夜に、思う事は・・・

2008-07-05 01:40:26 | Weblog
朝、妻に起こされた。なんか夢を見ている途中だった様な気がする。

「熱がでちゃったんで、息子を幼稚園まで送っていって!!」との事。

おととい位からのどが痛いといっていたので、やっぱり・・・。



急いで支度して、幼稚園までひとっとび。

息子はやけにはしゃいでる。「いつもと違う道で行って!!」

リクエストに答え、違う道で、ひとっとび!!

  

  



その間に、妻は中村耳鼻科へ。僕も幼稚園の頃ぐらいまで、今のおじいさん先生に(当時は若かった)お世話になりました。

まだ、病院が今のところから2本裏の道にあった頃です。40年前の話。



今日は、妻がお店を手伝ってくれる日なので、最悪の場合、「ひとり」も覚悟しました。

でもそこは妻。頑張ってくれました。

結婚した時より、はるかに強くなってきました。

それも甲斐性無しの夫のせいでしょうか?いいような悪いような・・・?

自営業は、自由な代わりに厳しいです。今日良くても、明日いいとは限りません。



    



本当に、妻に感謝です。あ、もちろんパートさん達や母にも感謝です。

きりがないけど、お客さんにも感謝です。ありがとうございます。

そして最後に、このブログを読んでくれている方にも・・・・感謝です。



  買物

2008-07-04 01:34:30 | Weblog
クローバーさん、コメントありがとうございました。これからも頑張って、美味しい料理を作ります。
下の写真は、去年クリーンセンター横の広場で見つけた「五つ葉のクローバー」です。

  

今日は、ランチが終わった後、息子と買物。
魚屋、八百屋に行って、帰りにクリーンセンター横の広場で遊んだ。
平日の午後は、だいたい貸し切り。
2人で思いっきり、野球やったり競争したり、ブランコも滑り台もあるし、鉄棒もある。

最近のお気に入りが、フェンス。
自分で乗り越えられるようになったのが、嬉しくてたまらない。
何度も何度も、行ったり来たり・・・。
でも気持はわかるな。僕もそんな時があった。

母に話したら「あら、フェンスなんて乗り越えちゃダメよ。あんたそんな事教えているの?」と言われた。
ごもっともです。あなたは、正しい。
でもね、本当は乗り越えちゃいけないフェンスなんてないんじゃないかな!?
「フェンスは乗り越えるためにある」目の前にフェンスがあれば、乗り越えようとするのは本能だ。
その気持をなくさせちゃあいけない。
目の前の障害を、何度か失敗して、それでも頑張って「もうだめだ」と思って、それでも頑張って・・・できた!!
最高じゃあないか。
  
    

僕たち2人は、広場に大の字になった。
「イヤー気持いいね。な、空は広いだろ。」
「そうだね、ドイツにもつながってるんだよ。」
ふふ~ん、まだ子供だ。僕は宇宙の果てまで見える。あの空は、宇宙の果てまで、フェンスなんてない。

それから2人は、クリンセンター裏の秘密の場所にめだかを捕りに行った。
がーん!!、今日は水がすごく多くて、流れがないので、めだかがほとんどいない。
小さいのばっかりだ。それでもせっかく来たので、網でエイエイとやると小さいめだかに混じって、
1匹だけ大きなめだかが取れた。僕らは、バケツにいれた。
彼は今度は、田んぼのあぜ道で、小さい用水路を飛び越え反対側のあぜ道に着地と言う遊びに夢中になっている。
やはり、障害があると越えてみたくなるんだね。不思議なもんだ。最初は恐がっていたくせに・・・。

    

さあ、もう帰らないとオープンに間に合わない。
僕らは、めだかの入ったバケツを持って車に向かった。
あ~腹が減った。まだ朝から何も食べてない・・・。

  冒険9

2008-07-03 02:52:51 | 冒険
      あるべき時に、ないものは・・・?



「パパ疲れたね。」

「もう少し頑張ろう。」

「しんくんちょっとお休みしたいんだよね。」

考えてみれば、5歳の彼には少しハードな冒険だ。かえってよく頑張っている方だ。

考えてみれば、僕だって疲れた。いったい家に帰れるんだろうか?

こんな気持になるのは、小学校6年生の時、館山の岩場の海岸で、

兄弟3人で迷子になった時以来だ。

それに、いったい今何時なんだ?あんまり遅くなると、妻に怒られる。

こんなに汚してしまったので、「風呂場直行」は、まぬがれまい。

あー、それはそうと、本当に帰れるのだろうか?

「そうだな、少し休むか?なんかリュックに食べる物はなかったかな?」

僕は腰を下ろし、リュックをひざの上にのせると中を調べた。

あーだめだ。やっぱりお茶しか入ってない。仕方がないので2人でお茶を飲み、2人で並んで壁にもたれた。

「静かだねー。」思わず「あーっ!!」と叫びたくなる。

「しんくんお腹空いちゃったなー」

「パパだって空いてるさ。」

「ママご飯作ってるかな?」

「そりゃ作ってくれてるさ。早く帰って一緒にご飯食べよう。」

「でもさあ、どうやって帰るの?パパ道知ってる?」

「そ、そりゃあ知ってるさ。パパが道をいっぱい知っているのを、しんくんだって知ってるだろう?」

さ~って、どうしたものか。



    



僕はリュックを背負い、彼をひざの上に乗せた。

そして、「ほ~ら、くすぐられると元気が出るぞ!!」と、彼をくすぐった。

かれは、妻と同じでくすぐられるのが非常に嫌いだ。

まあ、「好きな人」っていうのもあまりいないと思けど・・・。

子供をくすぐるっていうのも、まあ定番といえば定番の遊び。

くすぐり続けると、「まいった、あはは、まいった!!」でだいたい終わり。

僕も小さい時良くやられたな、いろんな大人に・・・。



  



ところが、彼が嫌がって思いっきりのけぞった時だった。

頭が僕のあごに当たりそうになったので、とっさに、よけようとして僕ものけぞり、後ろの壁に背中ごとぶつかった。

その時だった。何の変哲もない壁だったのに、

ぶつかった途端後ろに倒れた。というより「開いた」と言ったほうが正確かもしれない。

僕らは、何の選択権もないまま、足を上に向けてすべりだいをすべる様に、お腹に彼を乗せたまま

どんどん滑り落ちていった。

僕らは無言のままだった。あまりの驚きで声がでないっていうのは、本当にあると、その時知った。

ただ心の中で、「インディジョーンズの冒険なら、絶対1回は、出てくるシーンだ。」と、

ぼんやり思いながらも、どんどん滑り落ちていった。



  天然の黒鯛

2008-07-01 02:02:51 | Weblog
今日はお休みだったんですが、友達が、
「黒鯛を釣ったのでおろしてくれ」と連絡してきたので、11時に厨房に来てもらうことにしました。

  

僕は釣りの事は詳しくないのですが、彼が持ってきた2枚の黒鯛は大きかったです。
52cm47.5cmです。なかなか魚屋でもない大きさですね。
しかも彼は、「小さい方の半身だけもらえれば、あとはあげる。」なんて言ってくれるんです。
黒鯛は、ムール貝で釣るんだそうですよ。
それで、おろした後胃袋を開けてみたら・・・小さいムール貝(5~6mm)がいっぱい入ってましたよ。
でも釣る時は、3~4cmのムール貝で釣るらしいです。いや~すごい歯ですね。

友人提供写真

彼は、さすがに釣り人で、釣った後の血抜きも完璧で身もすごくきれいでした。
白身の魚も、おろしてから冷蔵庫で1日ぐらい寝かせてから食べると美味しいらしいです。
でも、養殖物の場合はすぐの方がいいらしいです。多分脂が多いいからだと思いますよ。
肉の場合は、もちろん種類にもよりますが、
豚肉なども半身の骨付きのまま1ヶ月ぐらいは熟成させるって聞きましたけど・・・。

なんか[らしい]とか[聞きました]とか[思います]とか不確かな事ばかりでごめんなさい。

   さて、明日からは7月です。(これを書いたいる時点では、もう7月)
   気分も新たに頑張りますよ~!!