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Sightsong

自縄自縛日記

アーサー・ドイル+水谷孝+豊住芳三郎『Live in Japan 1997』

2018-12-24 21:55:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

アーサー・ドイル+水谷孝+豊住芳三郎『Live in Japan 1997』(Qbico、1997年)。2枚組ヴァイナル。

Arthur Doyle (ts, fl, voice)
Takashi Mizutani 水谷孝 (g)
Sabu Toyozumi 豊住芳三郎 (ds)

1997年11月14日、MANDA-LA2でのライヴ。この時の来日時の演奏は、『Live in Japan Doing the Breakdown』にも収録されている(仙台私立現代美術館=2005年に閉館、バーバー富士、酒游舘)。しかし、それはときどきレコ屋で見かけるものの、いまだに持っていない。本盤もわりと最近入手した。というのも、当時行こうと思ったのに、放蕩が過ぎて本当にオカネが捻出できなかったのだ。悔しさのあまり、しばらく聴く気がしなかった。

そんなことはともかく、怨念のスープのごとき演奏である。豊住芳三郎はときおり強くなるパルスで活を入れるのだが、アーサー・ドイルと水谷孝とは徹頭徹尾ぐちゃぐちゃに連続的な活を入れ続けている。どちらがギターでどちらがサックスかわからなくなることもある。このパワーは怒りによるものか、あるいは何か。仮に当時観ていたら、脳はもっとやられていただろう。残念。

豊住氏は、水谷孝について、「彼の”戦闘スピリッツ”と思われる姿勢は私の中では、阿部薫と”同等””同質”のものだった」と書いている。ところが、山内テツとのトリオでの演奏はリハまで、2011年の欧州ツアーは受け入れ側との条件の違いで頓挫したらしい。(『Art Crossing』第2号/特集・豊住芳三郎、2018年、ちゃぷちゃぷレコード)

ところで、このQbicoレーベルは他の作品と同様に、本盤についてもどうも怪しい出し方をしたようである。

●豊住芳三郎
ジョン・ラッセル+豊住芳三郎@稲毛Candy(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
豊住芳三郎+ジョン・ラッセル『無為自然』(2013年)
豊住芳三郎『Sublimation』(2004年)
ポール・ラザフォード+豊住芳三郎『The Conscience』(1999年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(1976年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』(1976年、74年)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(1971年、75年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)


栗林すみれ『The Story Behind』

2018-12-24 14:19:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

栗林すみれ『The Story Behind』(Somethin' Cool、2018年)を聴く。せっかくなのでヴァイナルで。

Sumire Kuribayashi 栗林すみれ (p)
Yuki Ito 伊東佑季 (b)
Hideaki Kanazawa 金澤英明 (b)
Tomohiro Yahiro ヤヒロトモヒロ (perc)
Hiro Kimura 木村紘 (ds)
Kengo Komae 小前賢吾 (ds)

いきなり富樫雅彦の名曲「Waltz Step」。いろいろなピアニストが弾いているが、やさしく重ね合わさって浮き立つようなサウンドはそれらとはまた全く異なっていて、本人のものだろうか、ハミングとともに陽光が射しこんでくるようだ。

他のオリジナル曲もすべて良くて、聴いていて嬉しくなってくる。B面1曲目の「Halu」なんて、こんなところに悦びがあるんだなと思わせてくれる。


北村京子『Protean Labyrinth』

2018-12-24 12:07:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

北村京子『Protean Labyrinth』(self-released、2018年)。

Kyoko Kitamura's Tidepool Fauna:
Kyoko Kitamura 北村京子 (voice)
Ingrid Laubrock (ts)
Ken Filiano (b)
Dayeon Seok (ds)

サックスは人間のヴォイスに近いとはよく言われることであって、確かにここでもイングリッド・ラウブロックのふくよかなテナーとの共存にそのことを感じなくもない。だがそのような思い込みがあるからこそ、また、ヴォイスとサックスとの違いが際立ってくる。

北村京子の旧作『Armadillo In Sunset Park』(2012年)は、ソロのピアノとヴォイスによって、まるで身の回りの不思議な世界をユーモラスに想像させてくれるものだった。意味を持つ単語を使わないヴォイスのみによる『Protean Labyrinth』は、それとまったく異なるようでいて、同じものが常に胎動している。それは何かを伝えようとしたり、囁きで何かを企てようとしたりする、ヴォイスの気配なのかもしれない。

ダヨン・ソクのドラムスは、ヴォイスとサックスによるマッスを削ろうと策動する。あるいは逆のこともある。

この3月(2019年3月)には来日し、3月9日(土)と10日(日)に、「坪口昌恭さんとのコラボで、坪口さんが選りすぐった東京の若手ミュージシャン及び北海道からは吉田野乃子さん、合わせて6人のアンサンブルでアンソニーブラクストン楽曲の公開勉強会を行います」とのこと、楽しみだ。

>> 定淳志さんのレビュー


伊藤志宏+瀬尾高志@稲毛Candy

2018-12-24 11:14:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandy(2018/12/23)。

Shikou Ito 伊藤志宏 (p)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)

演奏の時間がはじまるとともに、どの方向に滑ってゆくのか想像できない伊藤志宏のピアノ。瀬尾高志のコントラバスは自由な鳥を執念で追跡するようでいて、聴いているうちに、かれの音にはパルスで叩き響かせるべき地面が必要なのかと思えてきた。すなわち重力を意に介さぬ飛翔と重力を前提にした跳躍。

2セットともに、異なるふたりの姿が同じ世界に収束してゆく時間があった。伊藤さんの執拗な繰り返しがあり、旋律への誘惑があり、それにより時空に描かれたアーチに、瀬尾さんがまた別のアーチを架けた。見事。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4