北村京子『Protean Labyrinth』(self-released、2018年)。
Kyoko Kitamura's Tidepool Fauna:
Kyoko Kitamura 北村京子 (voice)
Ingrid Laubrock (ts)
Ken Filiano (b)
Dayeon Seok (ds)
サックスは人間のヴォイスに近いとはよく言われることであって、確かにここでもイングリッド・ラウブロックのふくよかなテナーとの共存にそのことを感じなくもない。だがそのような思い込みがあるからこそ、また、ヴォイスとサックスとの違いが際立ってくる。
北村京子の旧作『Armadillo In Sunset Park』(2012年)は、ソロのピアノとヴォイスによって、まるで身の回りの不思議な世界をユーモラスに想像させてくれるものだった。意味を持つ単語を使わないヴォイスのみによる『Protean Labyrinth』は、それとまったく異なるようでいて、同じものが常に胎動している。それは何かを伝えようとしたり、囁きで何かを企てようとしたりする、ヴォイスの気配なのかもしれない。
ダヨン・ソクのドラムスは、ヴォイスとサックスによるマッスを削ろうと策動する。あるいは逆のこともある。
この3月(2019年3月)には来日し、3月9日(土)と10日(日)に、「坪口昌恭さんとのコラボで、坪口さんが選りすぐった東京の若手ミュージシャン及び北海道からは吉田野乃子さん、合わせて6人のアンサンブルでアンソニーブラクストン楽曲の公開勉強会を行います」とのこと、楽しみだ。
>> 定淳志さんのレビュー