Sightsong

自縄自縛日記

ミルト・ヒントン『East Coast Jazz / 5』、『The Judge at His Best』

2018-12-11 23:21:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

ミルト・ヒントンを2枚。わたしはブランフォード・マルサリスの『Trio Jeepy』(1988年)でヒントンを知った、くらいの世代である。キャブ・キャロウェイのオーケストラに入っていたくらいの人だから、当然ながら、ブランフォードなんて新しい新しい。

『East Coast Jazz / 5』(Bethlehem、1955年)はクラリネット入りのカルテット。『The Judge at His Best』(Chiaroscuro、1973-95)は、ルビー・ブラフ、ズート・シムズ、ハンク・ジョーンズ、ライオネル・ハンプトン、デレク・スミス、バッキー・ピザレリなど名手たちとの共演集。

あらためて聴いてみると、丸くも強くも音が立っていて、目立っていて、喜ばせようとする愉しさもある。やっぱり素晴らしいな。

ヒントンが持ってきた8ミリで、あの有名なハーレムでの記念写真の様子を撮ったフッテージが収録されたドキュメンタリーが、『A Great Day in Harlem』である。ヒントンも思い出を語っている。また観たくなってきた。

A. J. Sciacca (cl)
Milt Hinton (b)
Dick Katz (p)
Osie Johnson (ds)

Milt Hinton (b)
Ruby Braff, Dick Hyman, Zoot Sims, Joe Venuti, Hank Jones, Jay McShann, Lionel Hampton, Kenny Davern, Flip Phillips and Bucky Pizzarelli, etc.

●ミルト・ヒントン
ジーン・バック『A Great Day in Harlem』(1994年)
アート・ファーマー+リー・コニッツ『Live in Genoa 1981』(1981年)


ジョルジョ・アガンベン『スタシス』

2018-12-11 07:51:08 | 思想・文学

ジョルジョ・アガンベン『スタシス 政治的パラダイムとしての内戦』(青土社、原著2015年)を読む。

もはや国家間の紛争が解体されているような現在にあって(著者は湾岸戦争をかろうじて最後の国家間紛争であったとする)、内戦(スタシス)とは何を意味するか。著者は都市と家族、一般と個別とがないまぜになったせめぎ合いを見出している。

そう言われてみれば、都市か国家に「家族」を見出すことも、ミシェル・フーコー的な生政治が浸食してきていることも、おぞましい姿とともにイメージすることが容易に可能だろう。スタシスにおいては、大きなものと卑近なものとが区別されない。逆に、家族や心の内部を通じて大きなものを支配するためのコードが出来ているということである。これは怖ろしい。

ここで著者は言ってのけている。「生としての生が政治化されうる唯一の形式は、死への無条件な露出、つまり剥き出しの生なのである。」と。そのことと関係するように、本書の後半では、「人民」と「マルチチュード(群がり)」との違いを論じている。支配は「人民」を通じてなされる。しかし人間をある同質性で表徴させるような「人民」などは存在せず、人間に引き寄せたありようは「マルチチュード」なのであり、そのふたつが分断されているのだ、と。前半の議論では都市と家とのせめぎ合いの中に「スタシス」が、そして後半では「マルチチュード」の統一と解体との間に「スタシス」が位置付けられているわけである。

そう見てみれば、政治の文脈でなにかを括って語ることが(それが抵抗的手段であったとしても)、もとより分断を孕んでおり、「スタシス」の可能性を秘めていることが納得できる。


リッキー・リー・ジョーンズ『Pop Pop』と『Pop Pop at Guthrie Theater 1991』

2018-12-11 00:17:36 | ポップス

リッキー・リー・ジョーンズ『Pop Pop』(Geffen、1991年)は、彼女がカバー曲ばかりを歌ったアルバムである(最近はじめて聴いた)。

Rickie Lee Jones (vo, g)
Robben Ford (g)
Michael O'Neill (g)
Charlie Haden (b)
John Leftwich (b)
Walfredo Reyes, Jr. (bongos, shakers)
Bob Sheppard (cl, ts)
Joe Henderson (ts)
Dino Saluzzi (bandoneon)
Charlie Shoemake (vib)
Steven Kindler (vln)
Michael Greiner (hurdy-gurdy)
April Gay, Arnold McCuller, David Was, Donny Gerrard, Terry Bradford (backing vo)

なんというか、凄いメンバーである。チャーリー・ヘイデン、ディノ・サルーシ、ジョー・ヘンダーソン。ボブ・シェパードはこういうところに出てくるんだな(この間、ピーター・アースキンのバンドで観た)。曲によってメンバーをうまく変えていて、個人技も楽しめる。「My One and Only Love」や「The Ballad of the Sad Young Men」でのヘイデン、サルーシ、ロベン・フォードとのカルテットとか、ジョーヘンが吹いている「Bye Bye Blackbird」とか、なかなか最高である。

もちろんリッキー・リーの鼻にかかったような歌声がまた魅力的。(なのに、ウィキペディアによれば、レナード・フェザーはひどい言い方である。かれにはわからなかったのだろう)

同じ1991年の、このコンセプトで行った2枚組ライヴ盤『Pop Pop at Guthrie Theater 1991』(JM、1991年)がある。こちらは豪華メンバーを集めることができなかったようなのだが、これはこれで普段着みたいで悪くない。

Rickie Lee Jones (vo, g, p)
Michael O'Neill (g, vo)
Sal Bernardi (accordion, g, harmonica, vo)
John Leftwich (b)
Keith Fiddmont (sax)
Ed Mann (perc, vib)