「第5回日韓NGO湿地フォーラム」(主催:NPO法人ラムサール・ネットワーク日本、韓国湿地NGOネットワーク、2010/3/26-28)が開催されている。三番瀬の近況について聴きたくて、初日の夜の部に出席した。
■ 東京湾に残された貴重な干潟・浅海域・三番瀬について (船橋浦三番瀬のラムサール登録を実現する会 立花一晃)
焦点は「第二湾岸道路」と人工干潟である。
「第二湾岸」については、まだ計画が消えてしまったわけではないという(堂本前知事が中止したのは大規模埋立)。いまだに浦安市側と千葉市側とに8車線の道路用地が温存されており、予想ルートはそれらを結ぶ。すなわち、猫実川河口域から市川塩浜の直立護岸の少し先、江戸川放水路の河口域、ふなばし三番瀬海浜公園あたりを経て幕張までをつなぐというものだ。
もちろんこれは、猫実川河口域を中心とした人工干潟とセットである。その人工干潟にしても、仮に「市川塩浜の5.4mの直立護岸から1cm下げる毎に1m沖に伸ばす」ということであれば、540mという計算となり、さらに拡がる可能性があるのだという。
想定される影響までは示されなかった。私にもどちらが良いのかわからない。別の三番瀬関連のNGOなどは、現在の猫実川河口あたりの牡蠣礁も干潟の状態も、良好な自然からは程遠いものだと主張している。片や、いやそんなことはない、生物多様性に富んだ良い干潟だとしている。ただ、開発という多くの者にとってのアメが存在することのあやうさに蓋をしてはならないことだけは確かだ。
ラムサール登録に向けて、船橋漁協が全面的に賛成しているそうで、このプレゼンでは、船橋側だけ先に登録するとの案が示された。なんでも市川市議会(2010/3/25)では、谷藤市議(共産党)が行った一般質問(>> 原稿)に対して、人工干潟とラムサール登録とは矛盾しないとの回答があったようだ。ちょっと不可解であり、何が事実なのか整理したいところだ。
■ 新たな関東地方でのラムサール条約湿地登録の可能性を追求 (里山シンポジウム実行委員会/ラムサール・ネットワーク日本 荒尾稔)
国交省河川課によるプロジェクトとして、ラムサール登録湿地を増やしていこうという動きがある。公共工事が減らされていくなか、新たな予算確保の動きだとの批判がある一方、これに沿った形で良いものにしていけば良いとの考えもあるのだという。もちろんこのプレゼンは後者。私も千葉県民でありながらいすみ市、印旛郡、東庄町、香取市などには足を運んだことがないが、ここで示された里山写真はとても魅力的だ。
■ 四国三郎・吉野川からの報告 (吉野川・東京の会 藤田順三)
吉野川第十堰の可動堰化については、10年前、住民投票によって止められている(90%以上が反対)。この3/23、前原国交相は、「可動堰化が選択肢となることはあり得ない。保全する方向だ」と発言したようだ。
今回、ラムサール登録を目指すにあたって、河口部に「四国横断自動車道」の橋が建設される計画があることが問題視されている。
■ 生物多様性と文化の多様性 ― 水田と伝統文化 (ラムサールネットワーク日本・韓国事務局 田中博)
稲作に関連する日本と韓国の芸能が、写真やヴィデオで示された。サムルノリに発展した農学という伝統芸能もあるという。後で田中氏にいろいろ訊ねてみると、故・金石出(キム・ソクチュル)の演奏も実際に観たことがあるとのことだった。
■ 韓国4大河川整備事業視察報告 (ラムサールネットワーク日本 浅野正富・小沢秀造)
韓国でも自然を潰し、不必要な河川工事が進められているとのヴィデオによるルポ。日本だけじゃないわけだ。
◎参照
○三番瀬を巡る混沌と不安 『地域環境の再生と円卓会議』
○三番瀬の海苔
○三番瀬は新知事のもとどうなるか、塩浜の護岸はどうなるか
○三番瀬(5) 『海辺再生』
○猫実川河口
○三番瀬(4) 子どもと塩づくり
○三番瀬(3) 何だか不公平なブックレット
○三番瀬(2) 観察会
○三番瀬(1) 観察会
○『青べか物語』は面白い