Sightsong

自縄自縛日記

シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(6)

2010-03-21 10:22:19 | 沖縄

(5)より続く

■ 遠藤誠治 (成蹊大学教授)

さらなるパネラーの発言を引き出す問題提起。

○国民的団結を壊しながら、「周辺」に負担を押し付けていく方法である。
全体の議論が成り立たないようにする構造だ。
○それでは、安保、移設の2案についてどう考えるか。

■ 古関彰一 (獨協大学教授)

○自衛隊の海外派遣では、軍事的な貢献をしていない。岡田外相は、海外協力というときに自衛隊と言っていない。
○NGOの活動など、新たな芽が出てきている。国家でなく市民が行いだした平和のあり方であり、今までの戦争の時代にはなかった画期的なことだ。

■ 明田川融 (法政大学沖縄文化研究所)

○中国の軍事力に関して、実は米国自身は沖縄を抑止力とは考えておらず、グアムに家族を疎開させるつもりなのではないか。
○抑止力が必要だと主張する「現実主義者」たちがいる。しかし、米兵による犯罪が頻発していることも、もう一方の現実である。
○問題は普天間だけではない。嘉手納の危険性除去も忘れてはならない。それは日本の安全保障政策のはずだ。

■ 佐藤学 (沖縄国際大学教授)

○最近、海兵隊は「自然災害救助」の役割を強調している。これは戦争での役割が低下していることを意味する。組織維持・自己防衛の動きとみるべきだろう。

■ 川瀬光義 (京都府立大学教授)

○ケント・カルダー『米軍再編の政治学』には、以下の指摘がある。
日本ほど気前のいい支援を一貫して行ってきた国はない
―その国に対して米国がオカネを払う例のほうがずっと多い。韓国やクウェートではその国の政府が支払っているパターンだが、両国とも、米国がその国のために戦争をしている。しかし日本にはさし迫った脅威はない。信じられないことだ。
○旧・防衛施設庁(現在は防衛省の一部)の所管予算は、2000年の5,800億円から2010年には4,400億円へと縮小した。しかし別枠(SACO関連、米軍再編関連)を足すと、同じ5,800億円となる。
○このような根拠不明のつかみ金を使うことは、tax payerに説明できないことだ。
○ここまで地位協定の枠外でオカネを払う価値はあるのか。自治体が「要らない」と意思表示することが重要だ。

■ 桜井国俊 (沖縄大学長)

○移設2案(シュワブ陸上、勝連半島沖)のいずれも、新たな環境アセスが必要である。
○シュワブ陸上案(下地議員と北沢防衛相が推している)に関して、国では新たなアセスが不要だと考えているかもしれないが、沖縄県条例では必要となっている。
○勝連半島沖の案では、辺野古V字案と同様に、埋め立てのための海砂が必要となる。これを沖縄で調達する場合、砂浜が壊滅する
○いずれにしても時間がかかるだろう。その間に行われる利益誘導が、さらなる問題を沖縄に引き起こすだろう。そして、アメで潤う部分と潤わない部分が二極化する。現在でも格差は甚だしい。
○沖縄では、学生が授業料を払えず退学する事例が多い。全国平均では3%程度の退学率だが、沖縄ではその3倍くらいはいる。とても悲しい。

■ 明田川融 (法政大学沖縄文化研究所)

○広大な嘉手納基地は2,000 haもある。統合論などとんでもない。
○さらに、勝連半島沖案は1,000 haを埋め立てることになっている。つまり、辺野古を遥かに上回る

■ 古関彰一 (獨協大学教授)

○全国的には安保は必要だとする意見が多い。一方、自分の地域に基地がきてよいかとする世論調査も必要だ。
○90年以降、「怒りを忘れた」状態ではないか。
○オカネがないと言いながら、なぜ防衛予算が減らないのか。

■ 佐藤学 (沖縄国際大学教授)

もともと沖縄の負担軽減が目的だったはずが、なぜ、さらに大きな基地を作る話になるのか
○沖縄は決して「反米」ではない。基地就労者は、普天間は200人だが、沖縄全体では8,000人がいる。すぐにカットするという話にはならない。
○民意はもう重いものだ。これをどう伝えるのか。また何がこれから必要なのか。青臭い議論が必要なのだ。
○ハイチでは、地震から何日も経って1人が救助された。一方、アフガニスタンでは誤爆がある。前者こそが21世紀のあり方ではないのか。

■ 川瀬光義 (京都府立大学教授)

○池澤夏樹はこの状態を「恰好悪い」と評した。朝青龍に品格を求めるなら、日本の大人たちも品格を持つべきだ。
○いまさらわかりきった民意など問うのではない。大人としての覚悟がなければ、政治家などやめてしまえ。
○本土の人たちには、「沖縄の新聞をひとつ取りなさい」と提案したい。いまは夕刊もなくなり、送料込みでも安いものだ。

■ 桜井国俊 (沖縄大学長)

○安保によらない対話と協調という議論が重要だ。東アジア共同体という概念もそれに基づくもののはずだ。
○安保改定から50年だが、日韓併合から100年でもある。これまで対米追従であり、アジアに向き合ってこなかったことが足かせになっている
○日露戦争は、沖縄が海外侵略に加担した最初の戦争だったとの評価が、沖縄にはある。一方、『坂の上の雲』のような侵略正当化の蔓延には違和感がある。

■ 遠藤誠治 (成蹊大学教授)

「抑止」とは、本来、誰かを脅かす思想だ。共同体ではありえない。
○これまで、日本が主体的に周辺国を脅してきたという事実を忘れてはならない。

(以上)
※各氏の発言については、当方の解釈に基づき記載しております。


シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(5)

2010-03-21 09:36:09 | 沖縄

(4)より続く

共同通信が、3/20に複数行われたシンポジウム等に関して伝えている(>> リンク)。法政大のシンポジウムは1行のみ。

NHKでは、同日宜野湾での沖縄選出の国会議員によるシンポジウムについて報道している(>> リンク)。ずいぶん荒れたという話だが、実態のレポートを読みたいところ。

■ 川瀬光義 (京都府立大学教授)

地方財政学が専門。地方は汚れたオカネを受け取るべきでなく、受け取らなくても経済に影響はないとする主張が印象的だった。発言の論旨は以下の通り。

○1972/5/15の『琉球新報』では、「基地依存・不健全な経済」「基地の撤去・大幅減少がなければ、経済改善の成果は期しがたい」といった記事がある。その後40年間、何も変わっていない。毎年5/15の沖縄の新聞において、年だけ変えれば問題意識は共通する。これは、中央による沖縄政策の失敗を物語っている。
○1972年において、第三次産業が肥大し、建設業が不自然に大きい。また建設業が伸びず、全国平均27%に対し沖縄では9.1%であった。その後下がり続け、この数年は5%台である。なお県内総生産でみれば、全国平均で34.5%に対し、沖縄では10%程度であったが、やはり下がって4%台となっている。
○それにも関らず、時代遅れの産業基盤をつくり、補助金により誘致するという中央集権的な形が40年間続いている。
○来年度予算における沖縄への投下は9兆円。これは基地を維持するための財政支出であり、確信犯だということができる。すなわち、意図的に経済自立しない構造・基地に依存せざるを得ない構造をつくりだしている
○この10年間、地方分権が課題となり、補助金が整理されているが、沖縄はその枠組を残している。それでも総額は減少し、沖縄に投下される公共事業予算はピーク時98年の4,400億円から現在では2,000億円程度になった。
○しかし、その減額を埋め合わせるかのように、見返り資金が出てきた。これは広い意味での「思いやり予算」だ。
○現在の2,000億円にしても質が悪い。どう見ても、実態は「基地受け入れの見返り」である。このようなオカネをもらっていては、世論形成に役立つことがない。また、もらわなくても、地域経済に影響はない。
○2月に選出された稲嶺・名護市長は、来年度予算にその種の予算を計上しないと決定した。隣の宜野座市も追随した。画期的なことだ。

■ 桜井国俊 (沖縄大学長)

講演と他パネラーの発言を受けて短い発言。論旨は以下の通り。

○名護市長は、一昨日の市議会において、再編交付金はいらないと発言した。
○実際に、沖縄に投下されるアメでは豊かになっていない。ハコ物の維持で借金まみれになり、生活の改善にはつながっていない。その意味で、名護市長の発言は評価される。
○地位協定には軍事基地協定の側面がある。製造業が少ない沖縄において、環境問題の最大の原因は基地である
○従来、沖縄の公害防止条例は基地に適用されないことになっていた。現在は生活保護条例となり、改正の努力の結果、立ち入りの申し入れができるようになった。
○SACO合意において、返還される米軍基地の土壌汚染浄化は日本が行うことになっている。これはおかしい。せめて汚染や浄化対策の詳細について、情報の提供を行うよう取り決めるべきだ。

■ 佐藤学 (沖縄国際大学教授)

講演と他パネラーの発言を受けて短い発言。論旨は以下の通り。

○基地がないと食っていけなくなると信じ込まされているが、実際には違う。最低の行政サービスが成り立たなくなるというのもウソだ。
○辺野古の公民館には9億円が投下された。およそ真っ当な使い方ではない。オカネがこれまでの選挙に与えた影響も大きい。
中国や朝鮮に対する若い人たちの態度は危機的だ。仮に米軍がいなくなれば、自ら対峙するのか。
段階的な縮小が現実的だろう。いらないものをなくすことを、次々に行っていくべきだ。もちろん戦略的な意味だ。

(つづく)
※各氏の発言については、当方の解釈に基づき記載しております。


シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(4)

2010-03-21 01:05:45 | 沖縄

(3)より続く

休憩を挟んでパネルディスカッション。

■ 古関彰一 (獨協大学教授)

以下の発言。「日米同盟」なる言葉についての整理であり、ちょうど、批判的な立場の人でさえ当然のように使っているのを無神経だと思っていただけに参考になった。

○「日米同盟」という言葉が定着している。しかし、国会でこの言葉を提示して法律をつくったことはない。
○1981年、鈴木首相(当時)がはじめて使った。これが国会での議論に発展し、鈴木は「軍事的な考えを持たない」ものだと説明した。それに対して外相は反対し、辞任につながった。その後、この言葉を使うことはタブーであった
○1996年、橋本/クリントンにより「日米安全保障共同宣言」が公表された。「安保の再定義」と評価されたものであり、安保6条にある「極東の平和」、「日本の平和と安全」が、「アジア・太平洋地域の安定と平和」へと変わってしまった。
○2005年、日米安全保障協議委員会(2プラス2)が、「日米同盟」を言葉として定着させた。このころから、メディアが当然のように使いだした
○これが日本の現在の位置を象徴するものであり、「安保」から軍事同盟と考えられる「日米同盟」に変化したわけである。
○安保6条で、日本に米軍基地を置くことが定められている。本来、安全保障と基地とは不離不可分のものではないにも関わらず、一体のものをずっと継続している。このような取り決めになっているのは日本と韓国だけだ。フィリピンでは、軍事基地協定と安全保障条約とが別々に定められている。
○米国は軍事的関係を50か国程度と結んでいる。そのうち、米兵が駐留している国は少ない(ドイツ7万超、日本4万超、韓国3万超、英・イタリア1万程度)。さらに、冷戦終結後もそのまま温存されているのは日本と韓国のみである。すなわち、北朝鮮と中国は冷戦構造のまま位置づけられていることになる。これでよいのか。

■ 明田川融 (法政大学沖縄文化研究所)

発言は以下の通り。

○1947年、昭和天皇は、共産主義から日本を護るためには物理的な力、すなわち米軍が必要だとのメッセージを、米国に伝えた。また同時に、25年50年のリースだとした。
○25年後といえば1972年、沖縄の施政権返還。50年後は1997年、「安保再定義」や米兵の少女暴行事件の直後。実際に限界が顕れている。
○吉田茂は、沖縄を信託統治にすることは望ましくなく、主権が日本にあるように見えるならば、米国の要求には如何様にでも応えるとした。さらに99年間の基地租借でも構わないとさえ、米国に伝えた。その形にはならなかったが、実態として、無期限の使用を許している。
○ドイツは米国との地位協定における環境条項を数度変更したが、日本はそのようなことを一切行っていない。また、イラクでの地位協定(2008年)には、「イラクの環境は尊重する」と書かれており、現在「密約」で問題視されるようなことを禁じる旨も書かれている。一方、日本の主権など尊重されてはいない
○『砂上の同盟』になぞらえて言えば、「詐称の同盟」だ。

(つづく)
※各氏の発言については、当方の解釈に基づき記載しております。