Sightsong

自縄自縛日記

シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(3)

2010-03-20 23:55:40 | 沖縄

(2)より続く

会場で、ようやく『砂上の同盟/米軍再編が明かすウソ』(屋良朝博、沖縄タイムス社、2009年)を入手できた。どの書店にもなく、amazonの在庫もなく、沖縄タイムスに直接注文するしかなかったのだ。

■ 佐藤学 (沖縄国際大学教授) 「米軍再編と沖縄―日米安保の視点から」

抑止力という神話が日米の両得のため作り上げられてきたこと、また、米側の知日派が持つ意識・考えとのギャップは想像以上であることを提示する講演がなされた。

講演の要旨は以下の通り。

○この3/9、ワシントンにて開かれたシンポジウムで、対日政策を担当している170人を相手に講演を行った。抑止力とはウソであり、沖縄を押し込めて潰すことはやがて米国にもはね返ると主張した。しかし、空振りだった。
環境や人権といった普遍的な価値を米国に訴えかけることを、ナイーヴに期待していた。しかし、それは機能しないのではないかと思うようになった。
○2月の名護市長選挙により、基地の県内移設にケリをつけられるものと考えていたが、それは違った。ただ、ホワイトビーチ案が出てきた背景になったのかもしれない。それに、辺野古では米国での「ジュゴン訴訟」により、司法が建設を止める可能性もある。
○今では、現沖縄県知事を当選させた立役者と言われる那覇市長も反対を表明している。また自民党県連も反対に転じた。沖縄県議会では県外移設を全会一致で議決した。ここまでの統一は、過去に例がないことだ。下地議員の案でも、15年後の返却を条件としている。(ところで、やはり今日行われている県内出身の代議士によるシンポジウムは荒れているらしい。)
○代議士も学生も、北朝鮮や中国に対する「抑止力」を当然のように信じている。しかし、これは「脅しの軍隊」であり、例えばミサイルが撃ち込まれても、攻め込まれても、何もできない類のものだ。従って、軍事的には意味がない。
○石破茂議員(元防衛大臣)は、基地を沖縄に置いてほしいともっともらしいことを発言している。それならば、地元の鳥取は北朝鮮に近いこともあり、基地を置かなければならなくなるのではないか。言葉の遊びに過ぎないものだ。
○国民は、軍事的な脅威に関して、「なんとなく怖い」、「護ってもらわなければならない」と思うようになっている。しかし、マイナス面を考えるべきだ。今後、すべて米国を通じてのみ世界と付き合い続けるのか。
○鳩山政権には、この問題に対処する準備が驚くほどできていなかった。本来はただの海兵隊の問題に過ぎないはずだったが、今や首相のクビの問題にまで発展してしまった。
米国の意向が、日本の全国メディアを通じて発信されている状況だ。そして政権もメディアも、米国を喜ばせることを夢想している
住民の真意をまげて、それが住民が望んでいることであるかのような話になっている。これは尊厳の問題でもある。
○ワシントンにおいて、米国の知日派を前にこう感じた。彼らは日本語を自在に操り、思い入れも知識も相当であり日本側に立っているはずだ。しかし、自分たちの方が沖縄の利点をわかっているのだから、言うことを聞けという発想になっている。もとより、これが彼らにとっての既得権であり、生存の証しであるからだ。厄介な問題である。
民主党政権は、米軍対策に公共事業予算を投下すると、自己否定になり、自ら腐敗させることとなるだろう。なぜなら、目的と予算の使い方との整合性を無視することとなり、対等な日米関係を作ることができず、地域主権にも反することとなるからだ。
○海兵隊とは、広範囲な地域を対象として、ローテーションで訓練する軍隊である。わざわざ沖縄に置かなければならない理由はなく、米本土でも十分なはずだ。また、大きな戦争のためではなく、ゲリラ掃討戦の出撃地となる。そうなれば、沖縄が緊張をつくりだす中心となりかねず、反撃の対象ともなる。
勝連半島沖合案(ホワイトビーチ)に関しては、海兵隊に所属する米国人の研究者がずっと主張していた内容だ。つまり、海兵隊の中でも根回しが済んでいる可能性がある。
○いずれにしても今後時間がかかる。そのうち、日米両国の財政はさらに厳しくなり、その間に新基地建設などできなくなることもありうる。そのように、話を「ぐだぐだにする」戦略もなくはない。
○もともと、辺野古の沖合案も、V字案も、沖縄側の要求だった。しかし、そのようなオカネは沖縄では役立っていない。沖縄の自治体が、オカネを賢く使うことが急務だ。

(つづく)
※各氏の発言については、当方の解釈に基づき記載しております。


シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(2)

2010-03-20 22:59:58 | 沖縄

(1)より続く

■ 桜井国俊 (沖縄大学長) 「辺野古移設問題―特に環境の視点から」

私としては、普天間や辺野古が大手メディアの大きな話題となって以来、ジュゴンを含め、環境影響に関する報道がぴたりと無くなってしまったことが不可解であり、この講演に期待した。桜井氏は、沖縄への「アメとムチ」政策が誤りで失敗に終わっていること、そして環境アセスの問題点を指摘した。

講演の要旨は以下の通り。

○今朝の沖縄2紙には、「普天間2案、最終調整」とある。キャンプ・シュワブ陸上案と、勝連半島沖合案(ホワイトビーチ)だ。両方とも過去に出たことのある案だ。3月29日のG8外相会議を控え、岡田外相はゲーツ国防長官・クリントン国務長官と調整に入るのだろう。
○2案はそれぞれ沖縄出身の代議士(下地議員)と沖縄の経済界から出された案であり、このことは鳩山政権にとって都合が良いはずだ。しかし、先が見えない泥沼であり、アセスにも時間がかかり迷走するだろう
○基地負担を負わせるために、沖縄にあらゆるアメが与えられてきた。95年の米兵少女暴行事件およびその後の米軍再編計画以降、15年間アメとして辺野古に600億円以上がつぎ込まれた。その結果、ハコ物はできたが維持のための借金がかさみ、雇用は低迷したままだ。われわれの未来はこのような形ではないし、沖縄に負担を押し付けるのはもはや不可能だ。
それでも安保が必要と判断されるなら、本土でやってくれ、というのが沖縄のメッセージだろう。
○施政権返還後、表面化しただけでも5,500件の米兵による事件が起きている。そのうち550件は凶悪犯罪だ。
○先日のひき逃げ事件も、女性兵士が吐くほど泥酔し、軍の車を勝手に持ち出したものだとされた。私服ゆえ、警察は軍だと気が付かなかった。
本土の平和は、憲法9条、安保、沖縄の3つの条件により成り立っている。そして、沖縄は米軍の侵略戦争に加担させられてきた。
海兵隊の抑止力とは神話にすぎない。有事の際に海兵隊を運ぶとしても、佐世保から揚陸艦が来ないと意味がない。すなわち、沖縄に駐留することの意味はない
キャンプ・シュワブ陸上案の場合、人々の真上を危険なオスプレイが飛ぶことになるだろう(2000年時点で、15機のうち4機が墜落した)。辺野古V字案より生活と生命を侵害するものだ。また、赤土が流出し、大浦湾の生態系に大きな影響を与えるだろう
○大浦湾は、ラッパ状に切れ込んでおり、サンゴ礁、海草、マングローブなど多様な生態系が存在する。それぞれの場所に、それぞれの生き物が自らの場所を見つけている。アオサンゴは石垣島・白保のそれに匹敵する。
○辺野古沖の海草は多く、ジュゴンの目撃も多い。しかし、防衛省の調査では、嘉陽では観察されても、辺野古沖では観察されていない。これは、キャンプ・シュワブの米軍の上陸演習による撹乱、そして調査自体による撹乱が考えられる。
○辺野古のアセスの間、オスプレイ配備のことが隠され続けていた。「方法書」、「準備書」を経て、ようやく2009年8月に明らかになった。
○これが日本のアセス法の大きな欠陥であり、日本政府が基地をつくることの調査は行ったとしても、米軍が基地をつかうことに関しては対象外となってしまう。そのために、情報開示を要求しても、「米軍から聞いていない」という回答がまかり通ってしまう。昨日(3/19)、アセス法の改定案が閣議決定されたが、その欠陥には触れられていない
○世界遺産の候補ともなりうるやんばるの森でも、東村高江にヘリパッドが増設されそうになっており、やはりオスプレイが想定されている。住民の水瓶となるダムがある場所でもあり、極めて異常なことだ。また、国は、反対する住民を司法という手段で排除する前代未聞の行動に出ている。
○辺野古のアセスはアセスではない。オスプレイ想定の飛行機について、「方法書」ではたった1行しか書かれていなかった。このような「後だしジャンケン」があってはアセス法が成り立たない。実際に28条で「後だし」を禁止しているが、それが問われることはなかった。閣議決定された改定案でも、28条問題は放置されている
○このままアセスの問題を放置することは、やがて日本国民全体の問題となることだろう。

(つづく)
※各氏の発言については、当方の解釈に基づき記載しております。


シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(1)

2010-03-20 22:02:26 | 沖縄

法政大学沖縄文化研究所・普天間緊急声明呼びかけ人の主催により、シンポジウム「普天間―いま日本の選択を考える 日米安保と環境の視点から」(2010/3/20@法政大学)が開催された。司会は岩波書店『世界』編集長の岡本厚氏。

■ 加賀乙彦 (作家)

以下の発言。

○二・二六事件から憲法施行までを描く小説(『永遠の都』)を書き終えて疲れてしまったが、70歳になり、さらに戦後を書いてほしいとの要請があり(『雲の都』)、戦後史を勉強した。
○1952年の主権回復、その直後の「血のメーデー」から書き始めた。当時学生だった自分が感じたのは、米軍基地が「安全に日本を護ってやるため」が存在するという見方が間違いであることだった。1972年に「血のメーデー」被告に、全員無罪の判決が出された。沖縄の施政権返還はその後だ。
戦後のもっとも重苦しく、暗く、不自由なことは、外国の軍隊が入ってきていることだ。密約も含め、安保、一方的な平和条約が日本を苦しめている。
○最近、『不幸な国の幸福論』を書いた。日本の公共投資は、米欧を合算するより多く、そのほとんどを借金で賄っている。
○戦後、多くの人は全面講和を主張していたが、結局は片側講和になった。しかしもし実現したなら、北方四島はソ連領になっていただろう。サンフランシスコ平和条約は必ずしも悪いことばかりではなかった。
日本から米軍基地をすべて撤退してほしい。沖縄だけのことではない。いまは新しい時代を迎えつつある。

■ 宇沢弘文 (東京大学名誉教授)

御大、以下の発言。

○ティム・ワイナー(NYタイムス記者)が書いた『CIA秘録』(2007年)には、以下の報告がある。
― マーシャル・プランは戦後最大の対外援助であり、300億ドルに達した。受け取った国は、それを自国の通貨で積み立て、米国政府の指示で使うことになっていた。つまり対外援助などではなく、米国の産業や経済の利益を専ら目的としたものだった。
― 総額の5%(8億ドル)は、CIAに入るようになっていた。その大部分は各国の指導者に配り、その指導者たちが米国の言うなりに働いた。最終的には主な国で失敗し、日本だけで成功した
― 参謀本部第二部長・有末精三(諜報担当)は、日本の敗戦後すぐに、極秘資料をマッカーサーの諜報担当に渡し、スパイになると申し出た。児玉誉士夫は戦略物資をだまし取り、個人資産としていた。
― 1948年、A級戦犯であった児玉や岸信介は釈放された。岸はその足で首相官邸を訪れ、弟の佐藤栄作官房長官(当時)から背広を受け取り、「これで我々は皆、民主主義者だ」と言った。CIAは、岸を首相にするよう金を使った。
○そして60年安保。多くの若者が犠牲となった。その後、若者の社会正義や知的な志が失われた。現在は最低レベルにある。
○最大の被害を受けたのは沖縄だ。
日本の全土から米軍基地はすべて撤退すべきだ。そのための国民運動を提案したい。

■ 増田寿男 (法政大学総長)

以下の発言。「綺麗な海」との表現にはひっかかる(小沢一郎もそうだが)。汚い海なら良いのか、ということ。その意図はないにせよ。

○安保改定から50年、いまだそれは存在し、日本を縛っている。
○普天間の議論が喧しいが、「日本からの撤退」という声は聞こえてこない
○今こそ日本人としての見解を出すべく議論すべきだ。
○辺野古を見てきたが、ジュゴンが流れ着くような綺麗な海だった。
○沖縄を見捨てたままでいいのか。

(つづく)
※各氏の発言については、当方の解釈に基づき記載しております。