(2)より続く
会場で、ようやく『砂上の同盟/米軍再編が明かすウソ』(屋良朝博、沖縄タイムス社、2009年)を入手できた。どの書店にもなく、amazonの在庫もなく、沖縄タイムスに直接注文するしかなかったのだ。
■ 佐藤学 (沖縄国際大学教授) 「米軍再編と沖縄―日米安保の視点から」
抑止力という神話が日米の両得のため作り上げられてきたこと、また、米側の知日派が持つ意識・考えとのギャップは想像以上であることを提示する講演がなされた。
講演の要旨は以下の通り。
○この3/9、ワシントンにて開かれたシンポジウムで、対日政策を担当している170人を相手に講演を行った。抑止力とはウソであり、沖縄を押し込めて潰すことはやがて米国にもはね返ると主張した。しかし、空振りだった。
○環境や人権といった普遍的な価値を米国に訴えかけることを、ナイーヴに期待していた。しかし、それは機能しないのではないかと思うようになった。
○2月の名護市長選挙により、基地の県内移設にケリをつけられるものと考えていたが、それは違った。ただ、ホワイトビーチ案が出てきた背景になったのかもしれない。それに、辺野古では米国での「ジュゴン訴訟」により、司法が建設を止める可能性もある。
○今では、現沖縄県知事を当選させた立役者と言われる那覇市長も反対を表明している。また自民党県連も反対に転じた。沖縄県議会では県外移設を全会一致で議決した。ここまでの統一は、過去に例がないことだ。下地議員の案でも、15年後の返却を条件としている。(ところで、やはり今日行われている県内出身の代議士によるシンポジウムは荒れているらしい。)
○代議士も学生も、北朝鮮や中国に対する「抑止力」を当然のように信じている。しかし、これは「脅しの軍隊」であり、例えばミサイルが撃ち込まれても、攻め込まれても、何もできない類のものだ。従って、軍事的には意味がない。
○石破茂議員(元防衛大臣)は、基地を沖縄に置いてほしいともっともらしいことを発言している。それならば、地元の鳥取は北朝鮮に近いこともあり、基地を置かなければならなくなるのではないか。言葉の遊びに過ぎないものだ。
○国民は、軍事的な脅威に関して、「なんとなく怖い」、「護ってもらわなければならない」と思うようになっている。しかし、マイナス面を考えるべきだ。今後、すべて米国を通じてのみ世界と付き合い続けるのか。
○鳩山政権には、この問題に対処する準備が驚くほどできていなかった。本来はただの海兵隊の問題に過ぎないはずだったが、今や首相のクビの問題にまで発展してしまった。
○米国の意向が、日本の全国メディアを通じて発信されている状況だ。そして政権もメディアも、米国を喜ばせることを夢想している。
○住民の真意をまげて、それが住民が望んでいることであるかのような話になっている。これは尊厳の問題でもある。
○ワシントンにおいて、米国の知日派を前にこう感じた。彼らは日本語を自在に操り、思い入れも知識も相当であり日本側に立っているはずだ。しかし、自分たちの方が沖縄の利点をわかっているのだから、言うことを聞けという発想になっている。もとより、これが彼らにとっての既得権であり、生存の証しであるからだ。厄介な問題である。
○民主党政権は、米軍対策に公共事業予算を投下すると、自己否定になり、自ら腐敗させることとなるだろう。なぜなら、目的と予算の使い方との整合性を無視することとなり、対等な日米関係を作ることができず、地域主権にも反することとなるからだ。
○海兵隊とは、広範囲な地域を対象として、ローテーションで訓練する軍隊である。わざわざ沖縄に置かなければならない理由はなく、米本土でも十分なはずだ。また、大きな戦争のためではなく、ゲリラ掃討戦の出撃地となる。そうなれば、沖縄が緊張をつくりだす中心となりかねず、反撃の対象ともなる。
○勝連半島沖合案(ホワイトビーチ)に関しては、海兵隊に所属する米国人の研究者がずっと主張していた内容だ。つまり、海兵隊の中でも根回しが済んでいる可能性がある。
○いずれにしても今後時間がかかる。そのうち、日米両国の財政はさらに厳しくなり、その間に新基地建設などできなくなることもありうる。そのように、話を「ぐだぐだにする」戦略もなくはない。
○もともと、辺野古の沖合案も、V字案も、沖縄側の要求だった。しかし、そのようなオカネは沖縄では役立っていない。沖縄の自治体が、オカネを賢く使うことが急務だ。
(つづく)
※各氏の発言については、当方の解釈に基づき記載しております。