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自縄自縛日記

屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』

2010-03-29 00:07:07 | 沖縄

屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』(沖縄タイムス社、2009年)。沖縄の書店では結構売れているらしいのだが、東京ではどこでも見当たらず、またamazonでも品切れのままだ。沖縄タイムスに直接注文するのも億劫で放っておいたら、先日の普天間シンポジウムで入手することができた。こんな良書が流通していないとは情けない話だ。政府広報番組・記事を作り続けるメディア、米国の恫喝をそのまま自らの言葉であるかのように流すメディア、変革の努力がうまく進まないことにそら見たことかと政権批判に執心するメディアの虫たちは、せめて本書を共同購入でもするがよい。

著者は沖縄タイムスの論説委員である。これまでの米国に対する取材の成果をもとに、基地を沖縄に置くことの必然性が全くないことを示している。仮に、中国・北朝鮮脅威論や、米軍のいう「不安定の弧」を考慮に入れても、だ。つまり、保守的な「現実主義者」たちが国防の観点からメディアで語る内容など、ひとつのモデルシナリオに過ぎないことがわかる。

たとえば、数字を用いて重要な指摘がなされている。沖縄の米軍の中心は海兵隊である(嘉手納は空軍)。現在18,000人が配属されているが、実際の戦闘部隊は10,000人に満たない。彼らがどこかに戦闘に向かう場合、佐世保に配備されている揚陸艦を使って移動する。しかしその輸送能力は2,000-3,000人に過ぎない。朝鮮半島有事があれば、カリフォルニア、ハワイ、沖縄の太平洋海兵隊(7万人)が総動員される。つまり沖縄に海兵隊を置く必要はないし、主力にもなりえないのだ、と。また、米軍内における空軍、陸軍、海軍、海兵隊の間の予算争い・主導権争いについても、多くの事実により説明される。

そうすると、結論として、沖縄は、米軍にとっては既得権益かつ再編予算のピースであり、日本にとっては本土に基地を置かないための存在であることが、改めてはっきりする。そしてそれは、沖縄が戦略拠点であるという「神話」によって守られている。

米軍再編については、海上基地や艦船を利用して、テロ攻撃を受けないようにしながら相手を急襲する「シーベーシング構想」が解説されている(表紙の絵は米軍によるイメージ図)。この方向性からしても、沖縄に基地を置く必要がないと言うことができるようだ。こんなものに加担させられるのかという恐ろしさもある。

●参照
○シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(1)(2)(3)(4)(5)(6
『現代思想』の「日米軍事同盟」特集
久江雅彦『米軍再編』、森本敏『米軍再編と在日米軍』
『けーし風』2009.3 オバマ政権と沖縄/ガザ、『週刊金曜日』2009/4/10 戦争ごっこに巻きこまれるな
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』