うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

初ものがたり

2012年05月16日 | 宮部みゆき
 1995年7月発行

お勢殺し
白魚の目
鰹千両
太郎柿次郎柿
凍る月
遺恨の桜 計6編の連作

 本所深川一帯を預かる回向院の旦那こと、岡っ引きの茂七が、難事件に挑む時代ミステリー小説。各編に江戸の四季を彩る「初もの」を絡め、季節情緒たっぷりに読ませてくれる。

お勢殺し
 茂七は、下っ引きの糸吉から、真夜中過ぎまで店を開けている稲荷寿司の屋台の話を耳にする。どうも素人屋台とは思えぬ節が…。そんな折り、醤油の担ぎ売りのお勢が、土左衛門になって発見された。

主要登場人物
 茂七...本所深川の岡っ引き
 糸吉...茂七の手下
 権三...茂七の手下
 親父...富岡橋袂に屋台を出す稲荷寿司屋
 音次郎...御船蔵前町醤油問屋野崎屋の手代

白魚の目
 冬木町の寺裏に住み着いている親なし子5人が、稲荷神社の供え物を口にして骸となって発見された。石見銀山の入った稲荷寿司は、端から子どもたちを殺めようとして仕込まれたのだろうか…。

主要登場人物
 茂七...本所深川の岡っ引き
 糸吉...茂七の手下
 権三...茂七の手下
 勝吉...海辺大工町の差配人
 親父...富岡橋袂に屋台を出す稲荷寿司屋
 おゆう...石原町呉服屋尾張屋の娘

鰹千両
 日本橋通町の呉服屋伊勢屋が、棒手振りの魚屋角次郎の鰹を千両で買いたいと言って来た。それを聞いた茂七は、裏があるのではと、伊勢屋に乗り込む。するとやはり千両の裏には、茂七の睨んだ通りの訳があった。

主要登場人物
 茂七...本所深川の岡っ引き
 糸吉...茂七の手下
 権三...茂七の手下
 角次郎...三好町の棒手振りの魚屋
 おせん...角次郎の妻、お針子
 おはる...角次郎の娘
 伊勢屋...日本橋通町の呉服屋の主
 親父...富岡橋袂に屋台を出す稲荷寿司屋
 猪助...酒の担ぎ売り、お勢の父親

太郎柿次郎柿
 「霊感坊主」日道という、子どもの噂が真しやかに流れていた。その真意を確かめる前に、船宿で兄が弟を殺すという痛まし事件が起きる。

主要登場人物
 茂七...本所深川の岡っ引き
 糸吉...茂七の手下
 権三...茂七の手下
 親父...富岡橋袂に屋台を出す稲荷寿司屋
 日道(長助)...御船蔵裏雑穀屋三好屋の息子
 清次郎...猿江神社近くの小間物問屋よろずやの手代
 朝太郎...川越の百姓、清次郎の兄
 おりん...深川西町糸問屋上総屋の娘

凍る月
 河内屋で新巻鮭が盗まれ、茂七の元に下手人探しの依頼が舞い込むが、盗んだのは女中のおさとは、既に死んでいると日道は予言する。

主要登場人物
 茂七...本所深川の岡っ引き
 糸吉...茂七の手下
 権三...茂七の手下
 親父...富岡橋袂に屋台を出す稲荷寿司屋
 猪助...酒の担ぎ売り、お勢の父親
 日道(長助)... 御船蔵裏雑穀屋三好屋の息子
 半次郎...三好屋の主、日道(長助)の父親
 松太郎...今川町下酒問屋河内屋の主
 おさと...河内屋の女中

遺恨の桜
「霊感坊主」日道が襲われ大怪我を負った。その下手人探しの最中、お夏と名乗る娘が、許嫁の清一が行く方知れずになっているので探して欲しいと現れる。

主要登場人物
 茂七...本所深川の岡っ引き
 糸吉...茂七の手下
 権三...茂七の手下
 親父...富岡橋袂に屋台を出す稲荷寿司屋
 猪助...酒の担ぎ売り、お勢の父親
 日道(長助)...御船蔵裏雑穀屋三好屋の息子
 半次郎...三好屋の主、日道(長助)の父親
 勝蔵...やくざの頭目、黒江町船宿舵屋の主
 お夏...神田皆川町味噌問屋伊勢屋の女中
 清一...伊勢屋の下男
 角田七右衛門...深川の大地主

 宮部さんの捕り物小説の特徴は、ミステリー色が濃く、読み手にも臨場感を味合わせてくれるところだろう。頭を捻りながら思い巡らせると、とんでもないところに下手人がいる。
 「初ものがたり」では、表題の通り、季節感を初もので現している辺りが、ページを開くとそこに江戸が見えるといった一度で二度美味しい仕掛け。
 「お勢殺し」も切ないが、何と言っても「白魚の目」は目を覆うといった表現で良いだろうか。犯人の身勝手さに憤りを隠せない(フィクションではあるが)。

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