1994年7月発行第一話 鬼子母火
第二話 紅の玉
第三話 春花秋燈
第四話 器量のぞみ
第五話 庄助の夜着
第六話 まひごのしるべ
第七話 だるま猫
第八話 小袖の手
第九話 首吊り御本尊
第十話 神無月
第十一話 侘助の花
第十二話 紙吹雪 計12編の短編集
江戸の町で起きた、ちょっぴり怖くて、ちょっぴり不思議で、ほろ苦く切ない短編集。
第一話 鬼子母火
酒問屋伊丹屋の神棚から火が出た。幸いに番頭の藤兵衛が直ぐに気が付き、大事には至らなかったが、焼け残った注連縄から髪の毛が見付かる。
主要登場人物
藤兵衛...酒問屋伊丹屋の番頭
おとよ...伊丹屋の女中頭
おかつ...伊丹屋の女中
第二話 紅の玉
石原町の裏長屋で、病身の妻を労り暮らす、錺職人の佐吉の元に、紅珊瑚玉を使って銀の簪を作って欲しいと、老齢の武士が洗われる。
主要登場人物
佐吉...錺職人
お美代...佐吉の妻
老人...元御家人の隠居
第三話 春花秋燈
行灯を所望する客に、古道具屋の主はが語る二灯の行灯にまつわる曰く。
主要登場人物
語り手...古道具屋の主
松三郎...古道具屋の見習い
第四話 器量のぞみ
お信のところに、「器量のぞみ」で嫁に欲しいと、降って沸いたような良縁が転がり込んだ。だが、お信は大女であるばかりか本人も自覚している醜女なのだ。
主要登場人物
繁太郎...北森下町下駄屋木屋の若旦那
お信...十軒長屋の藤吉の娘
おすず...繁太郎の長妹
おりん...繁太郎の次妹
第五話 庄助の夜着
古着屋で夜着を買ったと嬉しそうな庄助だったが、次第に窶れ憔悴していくのだった。
主要登場人物
庄助...深川居酒屋いなり屋の使用人
五郎兵衛...いなり屋の主
おたか...五郎兵衛の妻
おゆう...五郎兵衛の娘
第六話 まひごのしるべ
盆市で3歳くらいの迷子を拾った藤吉とつや。その子に付けられた迷子札を頼りに、差配の市兵衛は親元を訪ねるが、3年前の火事で父親は死に、母親と当時3歳の子は行方知れずになっている事を知る。
主要登場人物
市兵衛...海辺大工町の差配人
藤吉...大工
つや...藤吉の妻
長次...迷子
第七話 だるま猫
火消しになりたいが、火事場で足が竦んでしまう臆病な文次は、ひさご屋の角蔵に預けられるが、それでも火消しの夢を捨て切れずにいた。そんな折り、角蔵は己昔は火消しだったと打ち明ける。
主要登場人物
文次...深川一膳飯屋ひさご屋の使用人
角蔵...ひさご屋の主
猪助...鳶職の頭、土手組
第八話 小袖の手
古着屋で小袖を買い求めた娘に、母親が子どもの頃体験した、三造という袋物の担ぎ売りが古着屋から買い求めた小袖にまつわる恐怖体験を語る。そして…。
主要登場人物
三造...袋物の担ぎ売り
語り手...長屋住まいの女房
おすず...小唄の師匠
猪兵衛...冬木町裏店の差配人
第九話 首吊り御本尊
奉公が辛く一度は逃げ帰った捨松に、お店の隠居が、己が奉公人時代に番頭の八兵衛から聞いた、土蔵に住まう「首くくりの神様」の話を語り聞かせる。
主要登場人物
捨松...日本橋通町呉服問屋上総屋の丁稚
大旦那様...上総屋の隠居
八兵衛...浅草古着屋井原屋の番頭
第十話 神無月
年に一度、神無月だけ押し込みを働く盗人が、人を殺める前に縄目を打ちたい岡っ引き。一方、病弱な娘の治療費の為に年に一度…。
主要登場人物
岡っ引き...深川の地廻り
親父...一膳飯屋の主
市蔵...畳職人
第十一話 侘助の花
質屋の隠居の吾兵衛の元に、看板屋の要助が、娘を名乗る女が押しかけて来たと思案顔で現れる。
主要登場人物
吾兵衛...質屋質善の隠居
加世...吾兵衛の息子市太郎の妻
要助...看板屋
おゆき...要助の偽娘
第十二話 紙吹雪
高利貸し井筒屋に奉公するぎんは、屋根の上に乗って紙吹雪を散らせる。その紙吹雪こそ、井筒屋の身代を支える高利貸しの証文であった。
主要登場人物
ぎん...金貸し井筒屋の女中
これは凄い。凄過ぎる。単なるホラーではなく、奥深さを感じる。どうしてこんな事をするのかと頭を抱えた「紅の玉」。
恐怖という面では「だるま猫。真底怖い「小袖の手」。ユニークさも供えた「器量のぞみ」、「首吊り御本尊」。
後の回向院の茂平ではないかと思わせる「神無月」。すかっとする復讐劇の「紙吹雪」。
どの作品も胸に沁みる逸品である。
書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村
