うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

牡丹酒~深川黄表紙掛取り帖(二)~

2012年10月08日 | 山本一力
 2006年9月発行

 世の中の厄介事を、よろず引き受けるの裏稼業。ただし、だんびら振り回すような野暮ではない。智恵を使っての大掛かりな仕掛けで、世間をアッと言わせる、異色の時代小説第2弾。

ひねりもち
ながいきの、ます
酒盗
酒甫手(さかぼて)
仏手柑(ぶしゅかん)
黄赤の珊瑚(きあかのさんご)
油照り
六ツ参り
痩せ我慢
土佐掘の返し
土佐の酒、江戸へ
大輪の牡丹
もみじ酒
終章 長編

 父親の雄之助が、土佐から持ち帰った、辛口の酒と鰹の塩辛を、早々味見をした蔵秀は、雄之助の意向を組み、紀伊国屋文左衛門を通して幕府老中の柳沢吉保に取り次ぎを願い出るのだった。
 紀伊国屋文左衛門の後ろ盾で、土佐藩の命を受け、土佐から江戸までの運搬や、宣伝を考える蔵秀たち四人。
 はるばる土佐へと脚を運び、土佐、大坂、江戸を股に掛けた大仕掛けを…。

 物語は章を分け、江戸、土佐、大坂や宿場町での様子などを、同時進行で綴っていくが、それに関する混乱はない。むしろ、土佐での物語は、生き生きとした様が感じられ、土佐の章に入るのが楽しみであった。
 後で知ったのだが、筆者は高知県出身。郷土愛が感じられる。
 氏の作品はストーリを重視しているせいか、人物の気持ちや風貌などの描写が薄いのだが、何故か、土佐での出来事に関しては、ほのぼのとした風情が浮かんでくる。
 ここに登場する土佐佐川村の旅籠大正屋の子である金太と、宗佑の件(くだり)はサイド・ストーリではあるが、むしろ本筋よりも別れのシーンなどは感動ものであった。
 また、同作品では、宗佑を軸に飾り行灯造りや人物に頁をかなり割いており、宗佑がメインとも受け取れる。反面、辰二郎の存在感が薄かったのと、一見にも関わらず、誰もが皆、雅乃を好評価の理由も希薄に感じられた。申し越しエピソードがあれば分かり易いのだが。
 終章では、発展的展望の青空が広がるような結びで筆を置いている。
 続編が描かれる事はないだろうと、判断したが、こちらの無知故で、続編があったら申し訳ありません。
 仮に続編が描かれるとなった時には、4人の関係はどうなっていくのか。また、新たな登場人物は…。
 
主要登場人物(レギュラー)
 蔵秀...深川二十間川沿いの定斎屋(担ぎ売り)
 
 雅乃...絵師、尾張町小間物卸問屋嶋屋の娘
 
 辰二郎...絵草子作家志望、富岡八幡宮前の印形屋天章の二男
 
 宗佑...飾り行灯師
 雄之助...蔵秀の父親、山師(木材の買付師)
 
 おひで...蔵秀の母親、三味線の師匠
 猪之吉...深川平野町の渡世人、雄之助の朋友
 嶋屋順三郎...雅乃の父
 紀伊国屋文左衛門...八丁堀の材木問屋の主
 隆之助...紀伊国屋の番頭
 柳沢出羽守吉保...幕府老中(格)、武蔵国川越藩主
 大田屋精六...芝油問屋の主
 大田屋由之助...精六の総領息子

書評・レビュー ブログランキングへ



にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へにほんブログ村