前回の「その2」のつづきで、今回は、川勝が抱いていたリニア部分開業の狙いと一連の具体的構想を紹介しておく。
それは、
まずは(当初はオリンピックの2020年、その後はJR自身が開業を明言する2027年)リニアの品川と甲府間を開業。それと併せて、新幹線の静岡空港新駅を整備。
首都圏の品川からリニアで甲府、甲府から身延線で富士駅、新富士駅から新幹線で静岡空港新駅、静岡空港から国内・国外各地へ。
リニアに乗ってみたい国内外の人々をターゲットに、山梨県内(特に甲府市内)静岡県内(特に富士市内)を回遊できる観光ルートを確立することである。
また、その後のリニア全線開業時には甲府も通過点となり、リニア の独占的ルートの優位性はなくなるので、回遊のネックとなる富士駅、新富士駅間の接続を解消するとともに山梨から静岡空港へのアクセス向上のため身延線を延伸しJR在来線と新幹線が交差する田子の浦近くに新たに新幹線新駅(富士市内新駅)を作らせる。
というものである。
静岡県内に2つも新駅を要求なんて無茶振りだろうと普通の人なら思うところだが、そこは川勝。
JRにもメリットがあり静岡県や山梨県にもメリットがあるという信念、その構想を皆分かってくれるだろうという自信、何よりも、環境問題を解決させなければリニアは通さないと言えばJRもディールに応じるだろうという願望、その導線上で行動したあげくの、世間で言う「リニア妨害」、という今般の状況だったのである。
川勝も多選や年齢を考えればせいぜいあと一期。その意味では、ただでさえ神奈川県の用地取得の遅れなど気になっていたところに、リニア 山梨県駅(甲府駅)が早くても2031年という事実を事前に知らされたなら、彼の気力が失せたのも当然なのである。
次回「その4」では松本ルートと空港新駅への執着について触れ、「その5」では次の知事候補の選択への参考としてリニア 問題から見た川勝平太について総括する。
以下に川勝部分開業論の証拠を示しておく。
平成25年11月28日(木) 14:50~15:45 知事協議記録
川勝知事
下山文化・観光部長、宇佐美部長代理、加藤理事、塚本交流企画局長、ほか
吉林戦略監、金指
<御殿場線・身延線に関する市町のJRへの要望と対応>
(下山部長):別添のとおり、沿線市町からJRに要望しているが、利用者数が伸びてないため、当然のことながら冷たい回答である。
(知事):これらの路線は儲からないから、JRは運営を止めたらどうかという流れに持っていけないか。葛西さん(JR東海会長)の専制的な経営に、矢野さん(中日本高速道路の前会長)も怒っていたので、相談にのってもらったらいい。
(塚本局長):赤字であることを強調し、ストーリーを考える。
(知事):身延線~新富士駅の延伸と、甲府駅~リニア山梨県駅(約8キロ)の両方進めてください。山梨県とも相談して。ただ、新富士駅の改築にそんなにお金をかけるつもりはない。
<富士市内の新幹線・在来線の接続検討>
(下山部長):接続のために設ける新駅は、のぞみ・ひかりのダイヤに影響がないよう、2面4線のホームにする必要がある。ホームのスペースを確保するためには、すぐ隣を走る国道1号バイパスか新幹線線路のどちらかを付け替えなければならず、工事費が多額になる。
(知事):2027年にリニアが開通した時に新駅できていればいいので、新幹線ホームは2線でいい。のぞみが無くなって、ひかり・こだまだけになれば、静岡県内の新幹線8駅(熱海、三島、富士市内新駅、新富士駅、静岡、空港新駅、掛川、浜松)のうち、3駅(熱海、富士市内新駅、空港新駅)で追い越しができなくても、十分ダイヤは組めるはず。
平成26年3月28日(金)9:32~9:42 知事協議記録
川勝知事
下山文化・観光部長、塚本企画交流局長、植田観光政策課長、京極文化政策課長、宮崎交通政策課長
吉林戦略監、金指
<ふじのくに総合交通計画の策定>
(下山部長):道路等の劇的な変化(東西だけではなく、中部横断自動車道など南北のネットワークも強化されたこと等)を受け、内容を見直した。
(知事):
・リニアは品川~甲府間が2020年までに開通すればいい。更に進めたければ、大阪側からの工事を先に始めればよい。静岡県内は(環境の問題が解決するまでは)通らせないというつもりで。その間によく勉強してください。
・リニアのルートは早急に決めすぎたし、意思決定の過程にも疑問がある。
・まずは、リニア(甲府)~身延線(甲府→富士)~新幹線(新富士→空港)~富士山静岡空港のルートを確立します。
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